2018年04月06日

入社式の社長あいさつに注目!企業の今と未来が見える【今週のイチ押しニュース】

テーマ:経済

 新年度がスタートし多くの会社が4月2日、入社式や辞令交付式を開きました。社長や会長らトップがあいさつや訓示でそれぞれの未来への思いや、新入社員へのメッセージを語りました。トップの言葉からは企業の目指す方向性や課題が見え、社風もにじみます。今日は記事に取り上げられたトップの言葉をまとめます。志望企業のトップのあいさつは、必ず自分でチェックしておきましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、パナソニックの津賀一宏社長と記念撮影をする新入社員たち=大阪府枚方市)

メーカーは「変化」「チャレンジ」強調

 あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT人工知能(AI)、自動運転などの新技術で大きな転換点にある電気、機械、自動車などのメーカーのトップからは「挑戦」を促すメッセージが目立ちました。
◆2018年3月期に過去最高の営業利益を見込む日立製作所・東原敏昭社長「いい製品だからお客さんは買ってくれるはず、という時代ではない。変化を先取りし、柔軟な発想力を持って」
◆創業100周年を迎えたパナソニック・津賀一宏社長「これまでは『創業者(松下幸之助)の100年』だった。次の100年は、われわれ自身の手で築かなければならない」
ソニー・吉田憲一郎社長「事業が多様だからこそ、様々なチャレンジの機会を提供できる。機会を与えることは経営の責任だ」
日本電産・永守重信会長兼社長「欧米では新入社員は即戦力。日本も給与泥棒でいいと言っていられる時代ではなくなっている」(1日)
トヨタ自動車・豊田章男社長「(創業した)80年前と同じ変革の時代だ。トヨタ生産方式と原価低減を基本に、自分らしさを味付けしてほしい」
ホンダ・八郷隆弘社長「石橋をたたいて渡るのでは、大転換期を生き延びられない。安全な橋を渡るのではなく、石橋をたたき壊し、新しい橋をかけろ」
ダイキン工業・十河政則社長「変化を先取りし、イノベーター(創造者)たれ」
TOTO・喜多村円社長「若い人の感性を生かして新たな変化に挑戦していって欲しい」
◆AIを使った開発など顧客から高まる期待への対応について安川電機・小笠原浩社長「未知への挑戦になる。常に世界を意識して勝ち残る。狙うは世界一です」
◆業績悪化で2年ぶりの入社式となった東芝・車谷暢昭会長「東芝の危機と言われた環境下で入社した皆さんは真の仲間だ。困難な時期こそ人も企業も成長する」

(写真は、トヨタ自動車の豊田章男社長から事例を受け取る新入社員=愛知県豊田市)

イノベーションと創造性

 時代に合わせて変化し続けてきた商社も、さらなる変革を求めています。
伊藤忠商事・鈴木善久社長「真のプロフェッショナルは常に挑戦し、イノベーションや進化を起こす。勝つか負けるかはわずかな差。勇気を持って人より一歩前へ」
住友商事・兵頭誠之社長「『第4次産業革命』のまっただ中。競争を勝ち抜くには異論を尊重して真剣な議論で一つの結論を導き、全社一丸で即実行が大切だ」

 IT企業は「創造性」がキーワードでした。
ビッグデータの活用に注力するヤフー・川辺健太郎最高経営責任者「未来は予測するものではなく、創るものだ」
楽天・三木谷浩史会長兼社長「仕事を義務や、強制されて行うのではなく、『面白いものだ』と楽しんでほしい。革新性、創造性、起業家精神をもって一緒に走ってほしい」

(写真は、入社式の後、自社機の前で記念撮影するスカイマークの新入社員たち=神戸空港)

新鮮な発想に期待

 多くの企業が国内外の政治・経済情勢の影響をまともに受けています。マイナス金利などで経営に厳しさが増す地方銀行は、新入社員への期待を語りました。
◆地銀3行の経営統合で1日に発足した関西みらいフィナンシャルグループ・菅哲哉社長「経営統合はゴールではなく、飛躍するためのスタート。新たな地域金融グループとしての可能性の大きさを実感してほしい」
福岡銀行・柴戸隆成頭取「多様なものを受け入れ、貪欲(どんよく)に吸収して欲しい」
西日本シティ銀行・谷川浩道頭取「新鮮な発想を生かし、新しい地域金融グループの発展に寄与してほしい」

 トランプ米大統領の「米国第一」の直撃を受けているのが鉄鋼業界です。
新日鉄住金・進藤孝生社長「世界各国で保護主義化や自国産化を目指す動きが鮮明だ。環境変化に対応する事業戦略を構築し、正々堂々と遂行する」

 人口減で国内市場の縮小が続く中、海外市場の開拓にかける企業も増えています。
アサヒグループホールディングス・小路明善社長「活躍するフィールドは世界中にある。挑戦魂を持ち続けてほしい」
◆海外出店を加速し国内ではスマホで決済する「無人店舗」も始めるコンビニ大手ローソン・竹増貞信社長「激動の世の中を生きてゆく。20年、30年後はどうなるかわからない。真剣勝負で仕事に向き合って」

(写真は、JR九州の入社式。新入社員代表が決意を述べた=福岡市博多区)

「安心・安全」取り戻す

 品質問題などを起こした企業のトップは再生を誓いました。
◆品質データ改ざん問題で辞任した前社長の後を受け就任した神戸製鋼所・山口貢社長「会社をよりよく変えていくには皆さんの声が必要。率直に声を上げ、新しい息吹をもたらして」
◆出荷前の新車の無資格検査問題で6月に会長に退くスバル・吉永泰之社長「皆さんの人生にもたくさんの出来事がある。困難なことが起きたとき、逃げずにまっすぐ取り組むことが一番大事だ」
◆新幹線のぞみの台車に破断寸前の亀裂が見つかったJR西日本・来島(きじま)達夫社長「お客様のかけがえのない命を預かり、目的地へ安全に届けるという重要な職責がある。二度と悲惨な事故を発生させてはならない。皆さんとともに安全性の向上に力強く歩みを進めていく」
◆その台車の不正品を出荷した川崎重工業・金花芳則社長「ものづくりで失った信頼は、ものづくりを通じて長い時間をかけて少しずつ取り戻すしかない」
◆リニア中央新幹線の建設工事をめぐる談合事件で起訴された清水建設・井上和幸社長「道徳や倫理を二の次にすることがあってはならない。萎縮することなく、正々堂々と前向きな気持ちで社会人としての第一歩を踏み出してほしい」

 紹介したのは、ひと握りの会社のコメントの一部だけです。コーポレートサイトであいさつの全文や動画を公開している企業も多くあります。志望企業については必ずチェックしておきましょう。朝デジ有料会員の方は、検索窓に「入社式」と「都道府県名」を入れると、各県を代表する企業の入社式のニュースが読めます。

(写真は、入社式で安全憲章を読み上げるJR西日本の新入社員=大阪府吹田市)

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別