AIニュース、1日2本ペース!
人工知能(AI)のニュースを見ない日はありません。朝日新聞の記事データベースで「人工知能」で検索したところ、2017年の1月から6月までの半年間で380件の記事がヒットしました。つまり、1日2件ペースで人工知能に関連したニュースが載っていることになります。AIが急速に進歩するとともに、世の中のさまざまな分野に広がり始めているからです。IT企業だけでなく、電機や自動車メーカーなどでAI技術者の争奪戦も始まっています。一方で近い将来、今ある仕事の半分はAIが担うとも言われます。AIは、すべての就活生にとって切実で身近なテーマになりつつあります。
(写真は、AI搭載ロボットによる「ロボカップサッカー」=7月27日、名古屋市)
「アルファ碁」が世界に衝撃
AI(Artificial Intelligence)は、コンピューターが人のように物事を考え、判断する技術です。注目度を一気に高めたのが、米グーグルのAI開発会社がつくった「アルファ碁」でした。2016~2017年にかけて囲碁のトップ棋士を破り世界を驚かせました。チェスや将棋ではすでにAIが人間を上回っていましたが、格段に複雑な囲碁で人間が負けるのはまだ先とみられていたからです。
AIが急速に進化した要因は、「ディープラーニング(深層学習)」にあります。「アルファ碁」はトップレベルの棋士の対局の膨大な記録を読み込んで自ら学び、AI同士の対戦も繰り返して、人間では思いつかないような手を繰り出すようになりました。今あらゆる分野で蓄積されている「ビッグデータ」がAIのカギを握ります。
(写真は、世界最強の柯潔九段=左=に3戦全勝したアルファ碁。右は「アルファ碁」の打ち手役=5月25日、中国・烏鎮)
多様な分野で実用化
世界でAI開発のトップを走るのは、アマゾン、グーグル、フェイスブック、IBM、マイクロソフトといった米国のIT企業ですが、AIはデータが多いほどより適切な結果を出すことから、14億人の人口を抱える中国企業も有利と言われます。もちろん日本企業も力を入れています。パナソニックは2017年4月、IT技術者を5年以内に今の10倍の1000人規模に増やすと発表。ネットにつなげる「スマート家電」や住宅、自動運転車などの商品開発に欠かせないからです。ソニーはAIに特化した社長直轄の組織をつくり、トヨタ自動車はAIを研究する子会社を米国につくりました。
AIはすでに、自動運転、カルテやレントゲン写真からの医療診断、自動翻訳などでどんどん実用化されています。今後、モノづくり、流通、金融、医療・介護、農業、教育、交通インフラなど、あらゆる分野で急速に普及します。採用においても、AIによるES採点、AI面接官が登場しています。自分が目指す業界でのAIの可能性を考えてみてください。
・100年に一度のクルマ革命② 「自動運転」で世の中が変わる!
・AI面接始まる?! 学生はどう対応すればいいの?
(写真は、パナソニックが発表したAIを備えたスピーカー=ベルリン)
AIは「まるで意味はわからない」
AIが人間の能力を超える「シンギュラリティ」(技術的特異点)が2045年に起きるとの予測があります。「コントロール不能になったAIが人類を滅ぼす」と心配する声がある一方、「人間はもっと複雑だからシンギュラリティは起きない」という人もいます。
AIの普及で間違いなく起きることもあります。いま人間がしている仕事の多くをAIが担うようになることです。野村総合研究所は2015年、10~20年後には日本の仕事の49%をAIやロボットがするようになるとの調査結果を発表しました。
◆AIなどに代替される可能性が高い仕事(抜粋) 一般事務員、受付係、警備員、建設作業員、自動車組立工、スーパー店員、測量士、タクシー運転手、宅配便配達員、ホテル客室係
◇代替される可能性が低い仕事(抜粋) 医師(外科医・内科医など)、映画監督、観光バスガイド、小中学校教員、保育士、幼稚園教員、スポーツインストラクター、ソムリエ、美容師、ミュージシャン、理学療法士
ルールに従って作業することが求められる仕事はAIなどが担う可能性が高く、教師など他人との深いコミュニケーションが求められる仕事や芸術に関わる仕事は可能性が低いようです。
国立情報学研究所などが「東大合格」を目指して開発した「東ロボくん」(写真)は2016年、挑戦を諦めました。MARCHクラスの大学に合格する力はつけたのですが、英語や国語の成績が伸びず、苦手を克服できませんでした。AIは言葉のパターンを見て統計的に正しそうな解答をしますが、「まるで意味がわかっていない」のが弱点だとか。
リアルな体験に基づく想像力や創造力が求められる仕事は、これからも人間にしかできないでしょう。膨大な事務や分析作業はAIに任せて、人間はより創造的なことに注力する。仕事選びには、こんな視点も必要です。