なおこの就活道場 略歴

2015年12月18日

「完璧な受け答え」はNG? M-1王者・トレンディエンジェルに学ぶ「素の見せ方」(番頭フッキーの「就活イヤァオ!」その18)

 まいど! 「なおこの就活道場」番頭のフッキーです。毎回、就活生の陥りがちな悩みを「イヤァオ!」と一刀両断する言葉をお届けいたします。

 みなさま見ましたでしょうか、今年復活した漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」。芸歴15年以内のお笑い芸人が、マイク1本を武器に戦う話芸の真剣勝負。世の中にいろいろなお笑いコンテストはありますが、優勝者のその後のブレーク率やネタのクオリティーを見ても当世一のネタ番組なのではないかと個人的には思っております。

 そのM-1グランプリで今年優勝したのが芸歴11年目の「トレンディエンジェル」。ボケ役・斎藤さん(36)の持ち味である若ハゲをたくみにいかしたハイテンポなネタで準決勝敗退の20組で争う「敗者復活戦」から勝ち上がり、そのまま優勝までかけあがりました。

 さてこのM-1グランプリですが、決勝戦は準決勝を通過した8組+敗者復活1組の9組が漫才を行い、審査員の得点上位3組が最終決戦でネタを披露、優勝者を決めるという仕組みでした。今回、1回目のネタで最も得点が高かったのはトレンディエンジェルではなく、「めちゃ×2イケてる!」(フジテレビ系)などにレギュラー出演している「ジャルジャル」。普段はあまり使わない違和感のある言葉を漫才中にお互いが混ぜ込んでいくという作り込まれたネタで、司会の今田耕司さんもネタ終了後に「1回間違えただけで台無しになるネタをよくやりきった!」と褒めるほどの出来でした。

 そして、彼らは2回目も同じ形式のネタをかけノーミスでやりきった……のですが、優勝したのはハゲネタのトレンディエンジェル。まさにこれ、就活の面接でよくあるパターンだなあと妙に感心してしまいました。

 事前に完璧に自己分析や志望動機を固め、どんな質問でも答えられるように周到に準備。受け答えのテンポも間も完璧に仕上げ、本番でもノーミスで受け答えができた。でも、実際に評価が高いのは「自分、難しいことはよくわからないけどがんばります!」と肩の力を抜いて受け答えしていた隣のやつ……。こんなことが起きてしまうのは、面接の目的をはき違えているから。面接はいうまでもなく会社側が「この人と働きたいかどうか」を見極めるためのイベントでして、決して「うまい受け答えをする人を見極める」イベントではありません。あまり完璧に受け答えを仕上げてしまうと、面接官はきっとこんな不安に陥ります。

 「こいつ、本当の自分の姿を隠しているんじゃないだろうな……

 これまで取材した企業の採用担当者はほぼ一様に「面接では相手の『素』をどうやって引き出すかを目標にしている」と語っています。ESで書いてきてもらったことを思いっきり深く聞いていったり、逆に一切ESとは関係ない話を聞いてみたり、場合によってはいわゆる「圧迫面接」をしてみたり……すべては予想外の質問を投げかけて、相手の「素」を見るための手段です。

 実は漫才も同じ。コントと違い「素」の人間として出てきて、普通の会話をする中で相手を楽しませる演芸である漫才は、必要以上に作り込んだ雰囲気を出してしまうとかえって笑えなくなる現象が起きがち。ジャルジャルが最終決戦で失速したのは、おそらく彼らが「完璧」にネタを作りすぎたためではないか、と思うのです。一方のトレンディエンジェルは、ハゲた人が自分のハゲをいじったりいじられたりと「素」のキャラクターが見える漫才でした。

 勘違いしてはいけないのは、おそらくジャルジャルもトレンディエンジェルも同じくらい事前にしっかり練習をしていたであろう、という点です。「自分の素を出せばいいんだから、事前準備は何もしないでいいや~」というのは大きな間違い、質問に対して何も答えられなければ「素」を出す以前の問題です。2015年9月16日の「イヤァオ!」では面接に際して「演じる」ことの重要性を説明しましたね。

 ただ、いかにも「こいつは演じているな」と思わせるのは逆効果になってしまいます。じゃあどうすればいいねん!と思われるでしょうが、ここは自分の「素」を出すバランスを見極める必要があるということです。

 たとえばですが、面接官の質問に対する最初の返答は「素」で返してみて、それ以降は演じてみるというバランスはどうでしょうか。

面「うちの仕事はぶっちゃけ徹夜もありうるんだけど、そういうの大丈夫?」
学「いやー、正直それはきついです。趣味の時間も欲しいですし(素)。と思うんですが、やっぱりまずは徹夜でも何でもして仕事をしっかり覚えたいという気持ちのほうが今は強いです! この会社でやりたいこともたくさんありますので(演技)」

面「ほかの会社も受けてるの?」
学「受けてますよ(素)。でもそれは自分の中ではあくまでも視野を広げるためのエントリーと考えていまして、御社から内定をいただければぜひ入社させていただきたいです(演技)」

 これはあくまで基本パターンですが、だんだん慣れてくると「素」の見せ方もうまくなってくるのではないでしょうか。入社後に必要な営業トークを磨く上でもこの技術を学ぶことに損はないはず。録画している人はぜひ今年のM-1を見返して、がんばってください。