一色清の世の中ウオッチ 略歴

2014年02月20日

時代の最先端にいる物流業界に注目 (第35回)

大雪でもいかに「速く安く」届けるか

 2月17日に知り合いの女性から郵便でバレンタインデーのチョコレートが届きました。お礼のメールを出すと、「14日に届くように出したのですが、大雪で遅れたようです。ごめんなさい」という返事が来ました。また、わが家では、16日に配達指定した「魚の西京漬け詰め合わせ」が18日夜になって届きました。15日には新聞の朝刊も届かず、16日の朝刊と一緒に配達されました。横浜に住んでいる私のところでも、大雪による物流の乱れの影響をこれだけ受けました。
 山梨県在住の方々は、こんなものではすまなかったでしょう。物が家に届かないというのは当たり前で、雪に閉ざされて買い物にも出られない。出られたとしても、コンビニにもスーパーにも商品がない。さぞかし、つらく心細い思いをしたことでしょう。

 さらに悲惨だったのは、身動きできなくなった車の運転手さんで、3日間、車中で過ごしたという方もいました。テレビの映像や新聞の写真を見ると、立ち往生している車の大半はトラックで、大雪の予報が出ていても走る選択をせざるを得ない「仕事の過酷さと公共性」がうかがえます。
 こういう自然災害があると、いつもは当たり前に思っている物流の大切さを思い知ります。そしてその大切さは年々増しているように思います。私は、ここ2,30年は「物流の時代」と呼んでもいい時代になるのではないかと思っています。

 ネットは世の中を大きく変えました。人々の情報のやりとりを飛躍的に増やしました。友達とのコミュニケーションや調べ物、買い物などが本当に手軽に簡単になりました。ネットのバーチャルな世界だけで生きていけるのではないかと錯覚する人も出てくるような社会になりました。
 ただ、当たり前のことですが、ネットの限界はあります。どこまでネット社会が進んでも、衣食住とか愛情表現といった基本的な人間の営みは、リアルな世界で成り立つものです。買い物でいえば、ネット上の情報を見てネット上で注文する行為はますます増えていくでしょうが、昔のSF小説にあったようなテレポート(瞬間移動)の技術が完成しない限り、その品物を届ける物流はなくなりません。というより、物流の重要性はますますまします。どれだけ早く安く届けられるかという配送システムが、ネットショッピングの主戦場になってくるはずです。

 すでにそこに徹底して力を入れているのがアマゾンです。日本にも、巨大な物流センターを作り、ロボットが仕分け作業のために縦横に動いています。具体的なノウハウは分かりませんが、すでに「当日配送」や「無料配送」を実現しています。配送にはそれなりのコストがかかるはずなのに無料というサービスは、恩恵を受ける消費者にも驚きです。

 アマゾンは、さらに物流の進化に突き進んでいます。自動車の無人運転技術はもちろんのこと、無人飛行機「ドローン」で自宅の前まで商品を届ける実験も始めています。こういう技術が完成すると、大雪でも物は届けられますし、閉じ込められる運転手さんの心配をすることもなくなります。
 先日は、さらに驚きの発表がありました。アマゾンが「事前出荷」システムの特許を取ったというのです。これは、お客さんの注文をあらかじめ予測して、先回りして発送し、発送中に注文が確定すると、短時間でお客さんに届けられる仕組みだそうです。予想したようにお客さんの注文がなくて返送するコストのほうが高いと判断すると、品物はお客さんにプレゼントするのだそうです。

 日本の運送業者もサービス向上に力を入れています。ヤマト運輸は、先日、2016年から大都市間は当日配送にすると発表しました。まだまだ「速く安く」を追求する余地はあるようです。運送業といえば、体質が古いとか仕事がきついとかいったイメージがあるかもしれませんが、実は時代の最先端にいる業界と言ってもいいのかもしれません。