一色清の世の中ウオッチ 略歴

2013年07月18日

残業減らそうと電気が消える会社 (第5回)

ダラダラかテキパキか「働き方」見極めよう

 「ブラック企業」という言い方は、少し前まで就活生の間の隠語だったのでしょうが、今ではすっかり普通に通用する言葉になりました。「黒い企業」なわけですから、よくない会社ですよね。何がよくないかというと、働かせ方がよくないという意味ですね。いろんなよくない働かせ方が「ブラック」と言われているようですが、中でも「残業がすごすぎる」とか「サービス残業ばっかり」とか「休日がとれない」といった、働く時間に関するものがよく聞かれます。

 そんな時代に、残業や休日出勤をなくそうと、「働き方の大改革」を進めている会社があります。海外の工場建設などをするエンジニアリング会社の千代田化工建設です。
 社長が、「ライバルの欧米企業は、残業もせず夏には長期休暇を取っているのに強い。とにかく効率よく仕事することを追求しよう。そして、できた自由な時間で健全な生活と健康維持に努めてほしい」と大号令をかけたのです。

 昨年の7月から、始業と終業の時間をそれまでより1時間早めました。午前8時に始業して、午後4時36分終業です。当初はとりあえず夏だけとしていたのですが、社員の評判もよく、ずっと続いています。
 午後4時台に退社できると、寝るまでたっぷり時間があります。体を動かしたり、やりたい勉強をしたり、私なら明るいうちからビールをキューと飲む幸せすぎるイメージが浮かびます。
 残業については、午後8時以降は「社長の事前承認が必要」としました。ということは、午後8時以降はよほどのことがない限り仕事をするな、という趣旨です。その証拠に午後8時15分には全館の照明が自動的に消えてしまいます。残業をしていた社員は午後8時前にはあわてて帰り支度を始めないといけません。

 同社の本社は、昨年の同じ時期、横浜のみなとみらい地区に移りました。新しいインテリジェントビルですので、社員一人一人の入退館時間はゲートで厳密に管理されています。ごまかしはききません。

 土日祝日の出勤も厳しくなりました。日曜出勤は一切禁止で、土曜祝日出勤は社長の事前承認が必要です。どこの会社にも休みの日でもやってくる「会社が好きでたまらない人」がいるものですが、ここまで徹底されると、休まざるを得ません。
 仕事量が減るわけではありませんので、とにかく平日の昼間に集中して、効率よく仕事をこなすしかありません。それもなかなか大変ではあるでしょう。残業代が減ったと嘆く人もいるかもしれません。ただ、社内のアンケートでは、この制度に賛成する人が半分を超えています。やはりダラダラ仕事より自由時間が増えるテキパキ仕事の方がいいのでしょう。やればできるのです。

 世のブラックと言われる企業に比べると、千代田化工は働く時間に関しては、さしずめ「ホワイト企業」と言えそうです。多くの企業はその間のグレーにいると思います。ただ、「働き方」はとても大事なことですので、グレーの濃淡をよく見極めることも会社選びのポイントです。