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「富士フイルムは何の会社?」と問われたら、どう答えますか。社名のとおり、もとは写真フィルムの世界最大手でしたが、デジタル化が進むなかフィルムの技術を生かし、医療や化粧品などの新分野に進出して大変身。「本業消滅」の危機を乗り越え成長を続けています。いまや「ヘルスケア」が大きな柱です。キリンはどうでしょう? もちろんビールが主力の会社ですが、人口減少による国内のビール市場縮小や若者のアルコール離れを背景に、こちらも「ヘルスサイエンス」に力を入れています。DX(デジタルトランスフォーメーション)によって、あらゆる業界で進化や変化が求められる時代です。変われない企業は生き残れません。志望する会社のこれまでの事業の変遷を知り、どこを目指しているのか、企業研究で見極めてください。(編集長・木之本敬介)
(写真は、富士フイルム本社=2018年5月、東京都港区)
(写真は、富士フイルム本社=2018年5月、東京都港区)
医薬品、半導体の材料…
6月に就任した富士フイルムホールディングス(HD)の後藤禎一社長(写真)は朝日新聞のインタビューで、医療機器や製薬など医療関連事業の売上高を2026年度をめどに8割増の1兆円に伸ばすと語りました。2020年度はおよそ半分の約5600億円でしたが、後藤氏は「コロナ禍によって、世界市場でワクチンや医薬品開発への投資が前倒しされている」と分析。目標達成のかぎに医薬品などの製造受託事業をあげました。半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が茨城県つくば市に研究開発拠点を新設して進める最先端半導体の開発にも参画する構えです。半導体チップを積み上げて性能を高める「3次元集積化」という先端技術で使われる材料も手がけていて、「半導体の材料は、日本企業が世界的にも優位だ。新たな商機にもなる」と話しました。フィルムやカメラの事業については「文化の継承でもあり、続けていく。ESGで言えば、S(社会への貢献)だ」と述べ、かつての主力事業は社会貢献と位置づける考えで、これからは「総合ヘルスケアカンパニー」を目指しています。富士とコダックの明暗
デジタル化でフィルムが世の中から必要とされなくなるという大ピンチの中、富士フイルムが「第2の創業」を掲げたのは2004年。フィルムづくりで培った技術を生かせる医薬品や化粧品を主力事業に据えてよみがえりました。2006年には社名を変更し「富士写真フイルム」から「写真」の2文字を消しました。国内外の医療関連メーカーを次々に買収し、今はさらに成長しています。明暗を分けたのが米国のイーストマン・コダックです。かつて世界のフィルム市場のシェアを富士フイルムと争った2大メーカーでしたが、伝統のフィルム事業にこだわり続けてデジタル化の波に乗り遅れて破綻しました(その後、規模を大幅に縮小して再建)。当時の古森重隆・富士フイルムHD社長は「時代が流れる中で、コアビジネスを失ったとき、乗り越えることに成功した会社と乗り越えられなかった会社がある。当社は事業を多角化することで乗り越えてきた」とコメントしました。時代の変化に対応できない会社は生き残れない典型例です。
(写真は、かつてフィルムのシェア争いを繰り広げた黄色のコダックと緑色の富士フイルム=1997年、東京都渋谷区)
キリンは「発酵バイオテクノロジーの会社です」
キリンHDの磯崎功典社長(写真)は先日の日経新聞のコラムで「私はキリンは何の会社ですかと問われると『発酵 バイオテクノロジーの会社です』と答えている。110年前にビールを造り、40年前に医薬に参入。そして今、ヘルスサイエンスにまい進している」と書きました。キリンの主力事業は当面は酒類でしょうが、これだけに頼っていてはじり貧になりかねません。得意とする発酵技術を生かして、医薬や健康のヘルスサイエンス事業に進出しています。2019年には、医薬品の協和発酵バイオを子会社化したほか、化粧品・健康食品大手ファンケルと資本業務提携を結び、疲労回復につながるサプリメントなどを共同開発しています。もはや単なる「ビールの会社」ではないのですね。
●「多角化のキリン」VS「海外のアサヒ」 ライバルの違いを知ろう【イチ押しニュース】も読んでください
ソニーも任天堂も凸版印刷も…
業態を転換してきた会社は他にもたくさんあります。今のソニーグループを「家電の会社」と言ったら正解とは言えないでしょう。ゲームや音楽、映画などのエンターテインメント、銀行や生命保険などの金融が柱となり、電気自動車(EV)づくりにも乗り出しました。今となっては、もともとの祖業のほうが意外な会社もありますが、それぞれ理由があって、もとの技術や理念をいかしての転換です。
・トヨタ自動車 自動織機→自動車→移動サービス
・マツダ コルク→自動車
・ブラザー工業 家庭用ミシン→プリンター→産業用印刷や工作機械
・任天堂 花札→ゲーム
・サンスター 自転車部品→オーラルケア製品
・IBM(米) 情報通信機器→クラウド
・ゼネラル・エレクトリック(米) 家電→航空機エンジンやエネルギー関連の販売と保守管理
・ノキア(フィンランド) 製紙、ゴム製品→携帯電話→通信インフラ
最近流れている凸版印刷のテレビCMが話題です。「凸版のこと、印刷の会社だと思ってません? ああ、思っちゃってる」「でも、名前が凸版印刷……」「名前で判断するんですか」「するでしょ、会社なんだから」「突破する会社ですよ。凸版だけに」「結局、名前じゃないですか」――。大泉洋さんと成田凌さんがコミカルなやりとりを繰り広げます。でも、じゃあ何の会社かは答えてくれません。凸版印刷に限らず、気になる会社の事業内容を採用ホームページやコーポレートサイトで調べてみましょう。意外なことをやっているかもしれませんよ。
(写真は、プレイステーション5と周辺機器=ソニー・インタラクティブエンタテインメントのユーチューブ動画から)
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