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キリンとアサヒといえばビール業界の宿命のライバルですが、ここにきて両社の戦略の違いがはっきりしてきました。キリンホールディングス(HD)が医薬品や健康食品などのヘルスサイエンス事業に力を入れるなど多角化にかじを切ったのに対し、アサヒグループHDは海外のビール会社を相次いで買収。売り上げの3分の1を海外が占めるまでになり、本業の海外展開で勝負する方針です。背景には、人口減少による国内のビール市場縮小や若者のアルコール離れがあります。両方受ける学生も多いでしょうが、「ビール会社だから似たようなものだろう」といった思い込みは捨ててください。それぞれの特徴を把握したうえで受けないと門前払いにあってしまいますよ。ライバル企業分析は、どんな業界でも極めて有効です。しっかり企業研究してください。(編集長・木之本敬介)
(写真は、記者会見するキリンHDの磯崎功典社長=3月3日、東京都内)
(写真は、記者会見するキリンHDの磯崎功典社長=3月3日、東京都内)
ライバルの軌跡
キリンHDの磯崎功典社長は3日の記者会見で「持続的成長のために、新たに将来の成長領域を築く」と語り、主力の酒類と医薬事業とをつなぐヘルスサイエンス事業の重要性を強調しました。キリンは、株主である英国の投資会社から医薬子会社などを売却してビール事業に集中するよう求められていますが、これを拒否する姿勢を示した発言です。キリンは2019年4月に医薬品の協和発酵バイオを子会社化しました。8月には化粧品・健康食品大手ファンケルと資本業務提携を結び、疲労回復につながるサプリメントなどを共同開発して発売する計画です。
一方、アサヒは2016~17年に欧州のビール会社を相次ぎ買収。2019年にはオーストラリアのビール最大手を約1兆2100億円で買収すると発表しました。高価格帯のビールのブランドを手に入れて、世界で稼ごうという姿勢です。勝木敦志常務は2月の記者会見で「(看板商品の)スーパードライが欧州で好調だ。プレミアムビールをグローバルに展開していく」と語りました。
サントリー、サッポロは?
アサヒ、キリンの戦略の違いは、2月に発表された2019年12月期決算にも表れました(表)。アサヒの国内の酒類事業の売上高は前年比2.9%減の8869億円。グループ全体でも減収減益でしたが、国際事業は高級ビールを欧州など世界で展開する戦略が奏功し増益でした。キリンはオーストラリアの飲料子会社の減損損失571億円を計上し、純利益は前年比63.7%減となった一方、海外での医薬品の売り上げが好調で医薬事業は約10%の増益となりました。
事業部門別の売上高を比べると、両グループの違いがよくわかります。
【アサヒ】①酒類42.5% ②海外33.5% ③飲料18.0% ④食品5.6% ⑤その他
【キリン】①酒類35.1% ②医薬15.7% ③海外15.4% ④飲料14.8% ⑤その他
他のビール大手2社をみると、サッポロHDは北米の飲料会社の株売却による損失などで純利益が前年から半減。不動産事業が全体の利益をカバーする収益構造となっています。サントリーHDは北米を中心にバーボンウイスキーが好調で、酒類事業のもうけは前年比8.5%も増えました。国内でも高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」が販売量を伸ばし、4社で唯一の増収増益となりました。
よく「ビール大手4社」とくくられますが、強みはそれぞれ。収益構造がまったく異なることがわかると思います。
キリンはグループ一括採用
採用の手法にも、グループ企業一括とそれぞれ別にするかの違いがあります。アサヒは、アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品がそれぞれ別に採用します。一方、キリンは、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの総合職についてはグループで一括採用していますから、ビール事業にいく可能性も飲料事業担当になる可能性もあります。ただ、医薬品の協和キリン、協和発酵バイオなどは別採用です。自分のやりたいことと採用方法、配属手法などを照らし合わせてみましょう。
ビール業界については、こちらの記事もオススメです。読んでみてください。
●「クラフトビールで攻めるキリン 他社はどうする?」(2019年11月22日の業界研究ニュース)
●アサヒ飲料の人事のホンネはこちら→「商品開発だけじゃない、全ての仕事に意義 手書きESで想い伝えて」
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