人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2021シーズンがスタートしました。第1弾は、カルピス、三ツ矢サイダーなどの看板商品をもつアサヒ飲料です。もちろん、「好き」で受ける人は多いのですが、インターンシップを経験すると学生の意識が変わるそうです。じっくりうかがいました。(編集長・木之本敬介)
■採用実績
──2020年卒採用を振り返ってください。
企業の動きが早まって学生の動く時期もかなり早くなり、途中で辞退する学生が例年になく多かったですね。今年はエントリーシート(ES)の締め切りを、初めて3月末と5月のゴールデンウィーク明けの2回に分けました。1回目で書類選考を通過した学生を対象に、当社の理解を深めるイベントを5月に開いたのですが、イベントの予約はしても当日来ない人、イベントに参加したのに面接に来ない人が続出しました。「5月時点で内定を得た学生が半数以上」との報道もありました。早い時期に決まった会社に行く人が多かったのだと思います。
──理解を深めるイベントとは?
事務系は管理職クラスとの座談会をしました。若手社員だと現業の仕事内容がメインの話になりがちなので、管理職クラスと話して、どんな部署がありどんな役割を担っているのか理解を深め、入社後にしたい仕事や将来何がしたいのかキャリアを考えてもらう狙いです。技術系は工場・研究所の見学会です。
──採用実績を教えてください。
2019年4月入社は事務系が29人(男性18人、女性11人)、技術系が14人(男性10人、女性4人)の計43人。
2020年卒の内定者は、事務系が32人(男性19人、女性13人)、技術系12人(男性7人、女性5人)の計44人です。来年はまだわかりませんが、例年通り40人前後だと思います。
──職種は?
事務系は全員総合職です。技術系は「生産研究部門」「エンジニアリング部門」の2コースに分かれており、エンジニアリング部門は電気系か工学系の出身者が対象で、採用は1~2人です。ジョブローテーションで他の職種に行く可能性もあります。
──エンジニアリングはどんな仕事ですか。
プラント全体の設計をするような仕事や、生産活動に必要な電気や水などのエネルギー供給設備の運用管理、製造設備保全です。製造ラインの新設や工場排水など環境周りの仕事で、機械メーカーと協力して進める仕事もあります。
生産研究部門の「製造部」も同じ工場勤務ですが、ある商品の量産に向けて適切なラインを検討し、テストをして量産化を実現する仕事です。
エンジニアリングは工場全体の設計で、商品に近い仕事をするのが製造部というすみ分けです。
──技術系に学校推薦制度はありますか。
現在は行っていません。自由応募です。
■就活ルール
──長年、就活スケジュールを決めてきた経団連がルールを廃止。今後は政府が引き継ぎ、「3年生の3月企業広報解禁、4年生の6月面接解禁」を維持する方向です。
当社は経団連ルールを遵守してきました。2021年卒採用は計画段階ですが、政府の方針を逸脱しない形で進めていきたいと考えています。ただ、学生が情報を求める時期に出ていかないと接点を持てなくなるのは懸念点です。インターンシップをしているので、これまでも3月1日前から企業情報は出してはいますが……。
──個人的なお考えは?
本当はルールはないほうがいいと思います。「一斉」のほうが学生にとって負荷が大きいからです。3月1日から一斉にESを書くので、とくに理系の学生は大学のレポートや学会などと重なって大変です。6月第1週は就活が一気に動くため、「まったく学校に行けない」と学生から聞きます。「通年採用」の企業もあれば少しスタートが遅い企業もある、という状況のほうが負荷は小さくなると思います。北海道や九州の学生からは「移動が大変だから、友だちみんなでウィークリーマンションを借りている」という話も聞きます。
──「通年採用」実施の予定は?
現時点ではありません。採用にかけられる人員を考えると難しいですね。採用チームは、私の上に1人、下に2~3人。インターンもすべてこの人数で担当していますから。ただ、今後は会社として考えなければならないと思っています。
アサヒ飲料
インターン経験者は「カルピス好き」を超え「どう成長したいか」意識
■インターンシップ
──インターンシップについて教えてください。
事務系は11~12月の計3日間で、当社の飲料ビジネスの面白さを知ってもらいます。2日目までは経営戦略や商品開発をワークで学び、3日目は社員と会ってキャリアを知り、懇親会を開きます。3日間×3回で計100~120人が参加します。
インターンのES提出後に「説明選考会」を開きます。簡単な会社説明をしてから、グループディスカッション(GD)で選考します。各グループに社員がついてフィードバックもします。前年の応募は4000人弱でした。
──技術系のインターンは?
技術系には研究所で行う「研究コース」と、工場で行う「生産・エンジニアリングコース」があります。
研究所も工場も、学生2人に社員が1人ついてアドバイスしながら3日間行います。課題の内容は実務に近く、工場だと「この商品を新しくつくる場合、どんなリスクがあり、どんな対策をとるか」といったことを考えます。
参加者数は研究所が16人。工場は、生産が4人、エンジニアリングが3人。明石工場、富士山工場の2カ所で実施するので計14人です。
前年の応募数は、研究コース500人、生産300人、エンジニアリング100人ほどでした。ESでの書類選考の後、2回の選考で絞り込みます。
──インターン参加者を、本番の採用選考で優遇しますか。
やや早く選考するので、6月最初に決まります。
──内定者のうちインターン経験者は?
2020年卒だと、技術系は半分、事務系は3分の1くらいです。
経験者は働くことへの意識がきちんとできています。学生が想像できる仕事は限られていて、事務系だと「営業を経験してからマーケティング部門で商品開発をしたいです!」という学生が大半。一方、インターン経験者は飲料ビジネスの戦略について説明を受けているので、6月の面接の時点ではESG(環境、社会、企業統治)推進や広報を担当するコーポレートコミュニケーション部に目が向いたり、将来の自分のキャリアを思い描いたりしています。「カルピスが好き」「三ツ矢サイダーが好き」といった表面的な志望ではなく、「アサヒ飲料で自分が何を経験して、どう成長したいか」ができあがっています。
技術系も同じで、インターン前は「商品開発をしたい」学生がほとんど。そういう学生は初期配属が工場になると落ち込みます。しかし、インターン経験者は見たうえで応募してきているので、理解が深く、入社後のギャップも減らせます。
――「憧れ」ではダメですか。
全社3000人のうち、マーケティング部門で商品開発に関わる社員は100人もいません。メーカーですから「何かを生み出す部署」に憧れることは否定しません。でも、会社にはどの部門も必要不可欠です。
たとえば、営業には得意先のスーパーで重い商品を棚に陳列する仕事もあります。憧れだけで入って「何で体力仕事?」という思考に陥る若手もいますが、商品を陳列して見せることにどういう意味があるのか考えられるようになってほしい。憧れだけではない、全ての仕事に意味があることをインターンで理解してほしいですね。
──インターンに参加すると、キャリアが見える?
キャリアを思い描くところまでは難しくても、「そこで何を身に付けるべきか」「身につけられるのか」を考えるベースができます。将来商品開発をしたいなら、営業部門に配属されたとき何を学ぶかを考えられないと、「いつまでたってもマーケティング部門に行けない」という不満ばかりになってしまいます。
技術系も、開発の次に量産化が必要です。事故なく安全にお客様のもとに届けるのが生産部門の根幹。その意味がインターンで分かれば、生産部門に配属されたとき「生産部門でこういう経験をしたら、将来的に商品開発に異動したときに役立つ」と思えます。
──インターンシップについて教えてください。
事務系は11~12月の計3日間で、当社の飲料ビジネスの面白さを知ってもらいます。2日目までは経営戦略や商品開発をワークで学び、3日目は社員と会ってキャリアを知り、懇親会を開きます。3日間×3回で計100~120人が参加します。
インターンのES提出後に「説明選考会」を開きます。簡単な会社説明をしてから、グループディスカッション(GD)で選考します。各グループに社員がついてフィードバックもします。前年の応募は4000人弱でした。
──技術系のインターンは?
技術系には研究所で行う「研究コース」と、工場で行う「生産・エンジニアリングコース」があります。
研究所も工場も、学生2人に社員が1人ついてアドバイスしながら3日間行います。課題の内容は実務に近く、工場だと「この商品を新しくつくる場合、どんなリスクがあり、どんな対策をとるか」といったことを考えます。
参加者数は研究所が16人。工場は、生産が4人、エンジニアリングが3人。明石工場、富士山工場の2カ所で実施するので計14人です。
前年の応募数は、研究コース500人、生産300人、エンジニアリング100人ほどでした。ESでの書類選考の後、2回の選考で絞り込みます。
──インターン参加者を、本番の採用選考で優遇しますか。
やや早く選考するので、6月最初に決まります。
──内定者のうちインターン経験者は?
2020年卒だと、技術系は半分、事務系は3分の1くらいです。
経験者は働くことへの意識がきちんとできています。学生が想像できる仕事は限られていて、事務系だと「営業を経験してからマーケティング部門で商品開発をしたいです!」という学生が大半。一方、インターン経験者は飲料ビジネスの戦略について説明を受けているので、6月の面接の時点ではESG(環境、社会、企業統治)推進や広報を担当するコーポレートコミュニケーション部に目が向いたり、将来の自分のキャリアを思い描いたりしています。「カルピスが好き」「三ツ矢サイダーが好き」といった表面的な志望ではなく、「アサヒ飲料で自分が何を経験して、どう成長したいか」ができあがっています。
技術系も同じで、インターン前は「商品開発をしたい」学生がほとんど。そういう学生は初期配属が工場になると落ち込みます。しかし、インターン経験者は見たうえで応募してきているので、理解が深く、入社後のギャップも減らせます。
――「憧れ」ではダメですか。
全社3000人のうち、マーケティング部門で商品開発に関わる社員は100人もいません。メーカーですから「何かを生み出す部署」に憧れることは否定しません。でも、会社にはどの部門も必要不可欠です。
たとえば、営業には得意先のスーパーで重い商品を棚に陳列する仕事もあります。憧れだけで入って「何で体力仕事?」という思考に陥る若手もいますが、商品を陳列して見せることにどういう意味があるのか考えられるようになってほしい。憧れだけではない、全ての仕事に意味があることをインターンで理解してほしいですね。
──インターンに参加すると、キャリアが見える?
キャリアを思い描くところまでは難しくても、「そこで何を身に付けるべきか」「身につけられるのか」を考えるベースができます。将来商品開発をしたいなら、営業部門に配属されたとき何を学ぶかを考えられないと、「いつまでたってもマーケティング部門に行けない」という不満ばかりになってしまいます。
技術系も、開発の次に量産化が必要です。事故なく安全にお客様のもとに届けるのが生産部門の根幹。その意味がインターンで分かれば、生産部門に配属されたとき「生産部門でこういう経験をしたら、将来的に商品開発に異動したときに役立つ」と思えます。
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2024/11/21 更新
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