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「半導体」に関するニュースが増えています。半導体って聞いたことはありますよね。指先でつまむくらいの小さくて薄い四角いチップに細かい回線が張り巡らされているイメージでしょうか。パソコンやスマホなど電子機器にたくさん使われているのもなんとなくは知っていると思います。でも、半導体ってそもそもなんなのか、説明できますか? 日本が「半導体王国」だったのは昔の話ですが、半導体の素材や、半導体を作るための機械などでは、今でも世界で高いシェアを持つ企業がたくさんあります。半導体に関わる業界は多いので、就活でもキーワードのひとつです。半導体は、通信機器のほか自動車、医療機器、ロボットにも必須で、自動運転や人工知能(AI)などデジタル化が加速するこれからの経済のカギを握るともいわれます。半導体の「基本のき」を知っておきましょう。(編集長・木之本敬介)
(写真は、中国の華為技術の子会社、海思半導体〈ハイシリコン〉製の半導体)
(写真は、中国の華為技術の子会社、海思半導体〈ハイシリコン〉製の半導体)
半導体のニュース続々
最近の半導体関連のニュースをいくつか紹介します。◆コロナ禍の「巣ごもり生活」でパソコンやゲーム機向けの半導体需要が急増。世界的に半導体が不足し、国内外の自動車工場がストップするなど生産に遅れが生じている。
◆宮崎県延岡市にある旭化成の半導体工場で2020年10月20日、火災があり、自動車や音響機器メーカーに大きな影響。
◆日本の半導体大手ルネサスエレクトロニクスは2月8日、英国の半導体メーカー、ダイアログ・セミコンダクターを買収すると発表した。ダイアログの電源制御や通信向けの技術を取り込んで事業の幅を広げる狙い。
◆半導体製造の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が2月9日、素材分野で日本勢と共同開発を進める子会社を日本に設けると発表。TSMCは世界の自動車や電子機器メーカーなどから半導体の生産を請け負う会社。受託生産の世界シェアは6割近く、日本のスーパーコンピューター「富岳」の心臓部の部品を供給したことでも知られる。
◆米国のバイデン大統領は2月24日、中国との経済・軍事両面の競争で重要度を増す半導体などの供給網の安定化に向け、対策の検討を命じる大統領令に署名。
◆ルネサスエレクトロニクスの主力工場である茨城県の那珂工場で3月19日に火災があり、生産ラインがストップ。半導体不足に拍車。
◆半導体大手の米インテルは3月23日、2兆円以上かけて米国内に半導体工場を二つ新設すると発表。半導体生産の「アジア偏重」への懸念からの動き。
◆世界的な半導体不足への対応策や、米国や台湾に遅れをとる日本の半導体産業を立て直しのため、経済産業省は3月24日、有識者会議「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を開催。
(写真は、ルネサスエレクトロニクス那珂工場の内部=2011年、茨城県ひたちなか市)
半導体って何?
半導体とは、電流を通す鉄、銅など「導体」と、電流を通さないゴム、ガラスなど「絶縁体」の中間の性質がある物質のことです。温度が低いときは絶縁体のように電流を通しませんが、温度が高くなると導体のように電流を通します。代表的な半導体物質であるシリコンを用いて、コンピューターなど電子機器の心臓部を担う集積回路(IC)がつくられていて、一般的にはICなど半導体を使った部品を広い意味で「半導体」と呼んでいます。①電気信号を大きくする②電流の交流と直流を変える③電流のオン・オフを切り替える④光を電気信号に変える――などの機能があります。大きく分けると、データを処理する「ロジック」と呼ばれるものと、データを記憶する「メモリー」の2種類があります。「半導体の処理能力は1年半で倍になる」といわれ小型化と高機能化がどんどん進み、今では一つの半導体に微細なトランジスタが何億個も組み込まれています。小さいうえに幅広い機器に欠かせないため「産業のコメ」とも呼ばれます。今は高速通信規格「5G」の普及やデジタル化の進展でさらに需要が加速しています。電子化が進む今の自動車には、普通の車で約30個、高級車だと約80個の半導体が使われています。
今も強い日本企業は
1980年代に日本の電機大手は、半導体の世界シェアの半分を握りましたが、今の日本企業にその勢いはありません。2019年の売り上げランキングの上位は、米国のインテルを筆頭に、韓国のサムスン電子、SKハイニックスが続き、日本勢は9位にキオクシア(旧東芝メモリ)がやっと顔を出します(図参照)。それでも、日本企業が強い分野もあります。一部を紹介します。
◆ルネサスエレクトロニクス=自動車の走行を制御する半導体「マイコン」の世界シェア2割でトップ
*ルネサスエレクトロニクスはNEC、日立製作所、三菱電機の半導体事業を集約して2010年に誕生
◆ソニー=画像処理の「イメージセンサー」で世界シェアの半分超を占める
◆信越化学工業、SUMCO=シリコンウェハー(半導体の土台となる基幹材料)で世界シェアトップ級
◆SCREENホールディングス=半導体材料の洗浄装置などで世界シェアトップ級
◆東京エレクトロン=半導体製造装置で世界大手
日本政府は、半導体製造装置や素材分野の産業振興につなげようと、海外の製造大手に日本への進出を打診してきました。台湾のTSMCの研究開発子会社の進出はその成果です。ちなみに、自動車工場が多い九州は、半導体関連の企業が多いため「シリコンアイランド」とも呼ばれます。
半導体で覇権争い
世界の半導体製造の構図も一変しました。かつては設計から製造までを同じ会社が担うのが主流でしたが、半導体の開発競争は厳しく、最先端の工場には数千億円もの巨額投資が必要です。1社で工程すべてをまかなえる企業は一部で、開発や設計など各企業が得意分野に特化する「水平分業」が世界的に進みました。今では工場を持たずに設計のみを担う「ファブレス」と、そこから注文を受けて製造する「ファウンドリー」に分かれています。中でも製造能力は8割がアジアに集中しています。そこで動き出したのが米国です。半導体はAIなど、次世代の競争力を決める技術の中核であり、経済と軍事の両面で重要度が増しているためです。トランプ前政権は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などへの輸出規制を進め、米議会も超党派で半導体分野の育成を図る方針で一致しています。台湾のTSMCが2020年5月に米政府の支援を受けてアリゾナ州に工場を新設すると発表したのもこの一環です。バイデン大統領は「米国と利益や価値観を共有しない国に頼るべきではない。供給網が圧力として使われないよう、信頼できる国々と協力する」と強調しています。背景にあるのは米中対立です。一方の中国も自国での半導体生産に力を入れていますが、高度な技術では米国にかなり遅れをとっているとみられています。半導体をめぐる各国の戦略には、世界の安全保障や覇権争いも絡んでいます。
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