2019年06月07日

ソニーのAI人材は年収730万円!広がる初任給格差【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 ソニー AI(人工知能)人材の初任給を最高730万円にアップするなど、新入社員の初任給を一気に引き上げる企業が目立ちます。ターゲットは「IT人材」と「グローバル人材」。こうした企業では、伝統的な年功序列型賃金ではなく、実力次第で入社直後から高給を得ることもでき、「初任給格差」が広がりそうです。それでも、売り手市場人口減少、少子化による人手不足で、初任給の底上げも進んでいます。今回は、大事な大事な給料のお話です。(編集長・木之本敬介)

(写真は、ソニー本社が入るビル=東京・品川)

サイバーエージェントは「実力主義型終身雇用」

 ソニーは、プログラミングが得意な新入社員を中心に、人事評価で9段階中の4段階目にあたる「主任クラス」の等級に抜擢します。これまで新入社員は入社2年目の6月まで「等級なし」でしたが、仕組みを変えます。デジタル分野での世界的な人材獲得競争に対応するためで、約400人の新入社員のうち適用されるのは5%ほどと見込まれています。

 IT業界ではこの数年、一律の初任給をやめて能力によって差をつける動きが広がりました。メルカリは内定者が入社までに新たな能力を身に付ければ初任給が高くなるようにしました。サイバーエージェントは、最低年俸を450万円とし、高度な技術を持つ学生には最低720万円の年俸を提示する制度を始めました。同社の採用担当者は「実力給なので20代から給料に差がつきます。『実力主義型終身雇用』で、優秀な人が長く働ける環境が整っています」と語っています(人事のホンネ)。

 ソフトバンク・テクノロジーは2017年、通常の採用とは別に「グレードスキップ制度」を導入。同社の事業分野のコンテスト入賞経験や、学生時代に起業経験などがあると、一般採用より上の等級で入社できます。最高で管理職の一つ手前の等級での入社になり、初任給は通常の学部卒に比べて35%高い月額30万5000円になります。

(写真は、「人事のホンネ」に登場したサイバーエージェントの武内美香さん)

幹部候補生の初年度年収1000万円

 IT業界だけではありません。「ユニクロ」のファーストリテイリングは2020年春入社の新入社員から、初任給を今より2割引き上げ、商社や外資メーカーと同等の給与として優秀な人材の獲得を狙います。引き上げるのは、国内外への転勤がある「グローバルリーダー社員」(主に大卒)の初任給で、月21万円から21%上積みして25万5000円に。同社の賃金制度は「完全実力主義」。広報担当者は「グローバルで活躍できる経営者の資質を持っている人に来てもらいたい」と話しています。

 回転ずしチェーン「無添くら寿司」を展開するくらコーポレーションも2020年春入社の新卒採用で、初年度から年収が約1000万円となる幹部候補生を10人募集します。平均年収の2倍以上の好待遇で、海外での店舗拡大に対応できる人材を集めるのが狙いです。応募はビジネスレベルの英語力を持っていることが前提。採用されれば、最初の2年間は国内店舗や本部の各部署、その後1年は海外店舗などで研修を受けます。その後、部長職に相当する業務を担い、経営戦略の企画立案などにも携わり、将来的には海外子会社の経営に携わることも見据えているとか。ただし、2年目からは実績に応じて額が増減します。厳しい世界でもあります。

(写真は、2017年9月にスペインに初出店したユニクロの店舗=ファーストリテイリング提供)

半数が初任給アップ

 「就職白書2019」(リクルートキャリア)によれば、2020年卒で初任給に格差をつけた採用を実施する企業は前年比4.2ポイント増の17.9%。従業員5000人以上の大企業に絞ると、19.8%にのぼりました。

 ただ、傑出したIT人材、グローバル人材以外の初任給もじわりと上がっています。リクルートワークス研究所の2018年秋の調査では、新卒採用での初任給引き上げに「取り組んでいる」「取り組む予定」と答えた企業が49.9%と半数を占めました。従業員1000人以上の企業では55.6%で、規模が大きいほうが割合が高くなりました。

業界で倍以上の開きが

 給料の額は業界によって大きな差があります。さまざまな資料がありますが、大学のキャリアセンターに置いてある「会社四季報 業界地図」(東洋経済新報社)=写真=を見てみましょう。11ページに「40歳モデル年収の業界平均」のグラフが載っています。コンサルティング(1316万円)と総合商社(1232万円)がトップ2。3位が放送(879万円)、さらにメガバンク(798万円)などが続き、業界平均は600万円。最下位が介護の401万円でした。飛び抜けているトップ2を除いても、放送と介護には倍以上の開きがあります。

 それぞれの企業の平均年収は「就職四季報」(同)に載っていますが、上場企業については各社が公表している有価証券報告書で自分でも調べられるので、そのやり方を紹介します。金融庁の電子開示システム「EDINET」から誰でも無料で閲覧できます。

「EDINET」を開く
→「書類検索」のタブをクリック
→検索窓に企業名を打ち込み、「有価証券報告書」にチェックを入れて検索
→「有価証券報告書」を選んで開く
→「第一部 企業情報、第1 企業の概況、5 従業員の状況」をクリック
→従業員数、平均年齢、平均勤続年数とともに「平均年間給与」が見られる

奨学金返済を支援する会社

 最後に、学生時代の奨学金の返済支援という形で新入社員を支える企業を紹介します。レナウンは今年10月から、入社1年目と3年目の社員に月1万円を最長3年間給付します。近年は新入社員の4割弱が奨学金を借りていて、毎月1万5000円程度を返済しているそうです。同社の広報担当者は「安心して働いてもらえるように」と語ります。他にも、アパレルアパレルのサザビーリーグが最大100万円を支給する制度を導入、ブライダル事業のノバレーゼも最大200万円を支給しています。

 給料のいろいろについては、
給料のこと、どこまで知ってますか?【カイシャの数字ここに注目!第3回】
でも書いています。読んでみてください。

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