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安倍晋三首相が25日から3日間の日程で中国を訪問しています。日中平和友好条約締結40周年の節目の訪問ですが、首相の公式訪問は実に7年ぶりのことです。日中関係はこの数年間、1972年の国交正常化以降「最悪」の状況でした。それがここに来て、「新次元の協力」「新たな蜜月期」という言葉も飛び出すまでに急に好転したのはなぜでしょう? 米国のトランプ大統領が陰の主役のようです。みなさんが志望する会社のほとんども、どこかで中国とつながっているはず。就活生も、これからの日中関係をしっかりウォッチする必要があります。(編集長・木之本敬介)
(写真は、中国の李首相=右=と握手を交わす安倍首相=10月26日、北京の人民大会堂)
(写真は、中国の李首相=右=と握手を交わす安倍首相=10月26日、北京の人民大会堂)
「熱烈歓迎」
首相の訪中は、国際会議への出席をのぞくと、2011年12月の野田佳彦首相以来です。両国の首脳は国際会議などの際にたびたび会談してはいますが、公式訪問がなかったということは両国の関係が良くなかったという証しでもあります。2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化したのを機に、中国各地で反日デモが起きました。日系のデパートが襲われたり、日本車が壊されたりするニュースを覚えている人もいるでしょう。この年、日本企業は中国での売り上げを激減させました。その後、中国人訪日客が急増し、「爆買い」が流行語になるなど、民間の交流は盛んになったものの、中国が領有権を主張する南シナ海問題などで対立し、政府間の関係は厳しいままでした。ところが、今年になって流れが変わりました。まず今年5月、李克強(リーコーチアン、りこくきょう)首相が訪日し、金融分野での協力を強めることで合意して経済外交が正常化。会談、晩餐会、北海道視察同行など安倍首相と計7時間以上をともに過ごし、両国の親密ぶりをアピールしました。今回は10月25日夜に李首相との非公式晩餐会、26日昼は李氏夫妻主催の歓迎昼食会、夜は習近平(シーチンピン、しゅうきんぺい)国家主席夫妻との夕食会と、中国の「熱烈歓迎」ぶりが目立ちます。
◆「日中関係改善へ ビジネスチャンス、面接で語ろう! 」5月11日の【今週のイチ押しニュース】参照
(写真は、歓迎式典に臨む安倍首相=右=と中国の李首相=10月26日、北京の人民大会堂)
「トランプさまさま」
実は、日中を接近させたのはトランプ大統領です。トランプ政権は今年になって、知的財産権侵害を理由に中国からの輸入品に次々に高関税をかけ、中国も対抗措置をとりました。「米中貿易戦争」とまで呼ばれ、米国の保護主義が世界経済に悪影響を与えると心配されています。ほかにも米国と台湾の高官の往来を認める台湾旅行法を成立させ、南シナ海では米イージス艦が「航行の自由作戦」を行って中国軍艦と異常接近する事態も起きました。さらに、10月4日にはペンス副大統領が「中国は米国の民主主義に干渉している」と演説。通商、安全保障、人権などでも中国を痛烈に批判して、対決姿勢をあらわにしたのです。日本もトランプ氏に振り回されています。安倍首相はトランプ氏ともっとも親密な首脳と言われてきました。しかし、今年になってトランプ氏は対日貿易赤字など経済関係では容赦なく日本を批判。9月の日米首脳会談で、日本は避けたかった2国間での関税交渉入りに合意させられました。
◆「日米関税交渉入りで自動車業界はホッ? 代わりに影響を受けるのは? 」9月28日の【今週のイチ押しニュース】参照
米国、中国、日本は、国内総生産(GDP)で世界1~3位の経済大国です。中国は1位の米国から敵対的な関係に追い込まれ、日本も強い圧力をかけられ始めました。中国は日米連合で経済的に圧力をかけられたらたまりません。日本もトランプ政権の保護主義に反対するという立場では中国と共闘できます。そこで、2位と3位が接近したという構図です。今回の日中接近について北京の外交筋は「トランプさまさまだ」と話しているそうです。
志望企業の中国ビジネス調べよう
26日の日中首脳会談では、「競争から協調へ」を宣言。日中以外の第三国市場でのビジネス協力やAI(人工知能)などの先端技術連携について協議する「イノベーション対話」発足など経済分野を中心に多くの合意を交わしました。今回の首脳会談には約500人の日本企業のトップが参加しました。【日中で合意した企業の主な協力案件】
◆三菱UFJ銀行 日中企業への第三国市場での金融支援
◆野村ホールディングスなど 1000億円規模の投資ファンド組成
◆三井住友海上火災保険 再保険の相互引き受け
◆JXTGエネルギー 中国で水素ステーション整備
◆富士通 ITを活用した高齢者向けサービス
◆パナソニック 自動運転の技術開発への機器提供
◆日本通運 中国―欧州間の鉄道での物流サービス
中国が日本のGDPを追い抜いたのは2010年ですが、いまや中国のGDPは日本の2.5倍です。2017年の日本の輸出相手国の1位は米国で輸出額は約15.1兆円。2位は中国で14.9兆円とトップに迫っています。一方、輸入相手国では18.5兆円の中国が、2位米国の8.1兆円を大きく引き離してトップです。中国に進出している日本企業の数は、2016年時点で3万2313社。2位米国の8422社の4倍近くにのぼります。拠点がないとしても、中国に部品を輸出する、あるいは中国からの輸入品を扱う企業は数えきれません。中国と無関係な企業を探すほうが難しいでしょう。
みなさんも、自分が志望する企業の対中ビジネスや中国との関わりをぜひ調べてみてください。企業のコーポレートサイトや、株主向けのIR情報に詳しく載せている会社が多いと思います。
ただ、中国は共産党独裁国家であり、表現や報道の自由はなく、深刻な人権問題を抱える国です。尖閣問題も含め、「日中蜜月関係」が暗転する可能性も常にあることは頭に入れておいてください。
◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから。
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2024/11/22 更新
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