2016年03月09日

「大名古屋ビルヂング」開業! 街づくりの魅力って?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 今日9日、名古屋駅前のランドマーク「大名古屋ビルヂング」(写真)が全面開業しました。目玉は三越伊勢丹ホールディングス(HD)の中型店「イセタンハウス」。初日から多くの人が詰めかけました。この古めかしい名前の最新高層ビルを手がけたのは、大手ディベロッパーの三菱地所です。大型の商業施設や街づくりの魅力を考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(11面)の「札幌などに中型店計画 三越伊勢丹HD」です。
 記事の内容は――三越伊勢丹HDは売り場面積2000~3000平方メートルの中型店を今後3年で全国5カ所に出す方針を明らかにした。9日オープンの名古屋に続く候補地として札幌や神戸、福岡を挙げる。大型店を新たに出す余地が少なくなるなか大都市の中型店に活路を見いだす考えだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 数年前まで名古屋駅の真ん前には、「昭和」を感じさせる古びたビルがドンと構えていました。駅前のシンボル的な存在でしたが、高層ビルに生まれ変わりました。オフィス部分は昨年秋に開業し、続いて地下1階から地上5階の商業施設が9日に開業したわけです。

 中核施設のイセタンハウスは、流行に敏感な30~40代の男女を主なターゲットにしています。三越伊勢丹が名古屋地区のカード会員の購入履歴を分析したところ、名古屋三越栄店で扱わない商品を、新宿の伊勢丹まで買いに行くケースがあることがわかり、店づくりにいかしたそうです。従来型の百貨店は全国的に伸び悩み、今日の経済面にも、セブン&アイHDが、そごう柏店(千葉県柏市)と西武旭川店(北海道旭川市)の百貨店2店を閉店するという記事が出ています。三越伊勢丹も2014年、大阪の大型店が撤退に追い込まれました。三越伊勢丹にとって、新業態のイセタンハウスは今後の成長を左右する挑戦。今後に注目しましょう。

 百貨店など小売業界については、「伸びるネット通販かリアルな小売業界か ビジネス目線で考えよう」(3月4日の「今日の朝刊ウィークエンド」)、「東武百貨店から200人が早期退職、百貨店生き残りの道とは?」(業界トピックス)でも取り上げています。

 今日はテナントの商業施設よりも、ビルを建てたディベロッパーと呼ばれる不動産会社に焦点を当てます。再開発を手がけたのは三菱地所。同社執行役員で名古屋支店長の仲條彰規(なかじょう・あきのり)さんが1月10日の朝日新聞名古屋本社版でインタビューに答えています。

 「旧ビルは、1959年の伊勢湾台風で大きな打撃を受けた名古屋の復興をめざして建てた。三菱地所にとっては東京以外で初めて手がけた大型の物件だった。地元の人にとっても、半世紀の思い出が詰まっている。東京の大学から帰郷して名駅前の大名古屋を見ると、ほっとした。大名古屋のテナントで働いていた縁で結婚し、孫も生まれた。そんな話を聞く」
 「ビルヂング」という古い名称を継承するのも、半世紀にわたって親しまれてきた名前を残して欲しいという地元の要望に応えたためだそうです。新ビルについては「次の100年間愛されるものをめざした。低層部に旧ビルの形を残しつつ、超高層の最新鋭ビルにした。丘の上に立つ大樹のイメージだ」
 街のシンボルや街づくりそのものに関わる誇りが伝わってきますね。

 私は2003年から2年ほど名古屋本社で勤務しましたが、当時、名古屋の高層ビルは駅直結の「JRセントラルタワーズ」だけでした。今は「大名古屋」(所有・三菱地所、施工・清水建設)のほかに、「JPタワー名古屋」(所有・日本郵便・名工建設、施工・竹中工務店)が2015年11月に完成し、「新・第二豊田ビル(仮称)」(所有・東和不動産、施工・竹中工務店)が2016年6月に完成予定で、「JRゲートタワー」(所有・JR東海・ジェイアールセントラルビル、施工・大成建設・鹿島建設)も2016年11月に部分開業するなど、高層ビルの建設ラッシュで駅前の姿は様変わりしています。

 こんなに高層ビルがにょきにょき建って、テナントが埋まるのか心配ですよね。仲條さんはインタビューでこう語っています。
 「大名古屋のオフィス契約はほぼ埋まり、ほかの二つのビルも順調だと聞いている」「(2011年に名古屋に赴任したときは供給過剰になると言われていたが)アベノミクスによる円安の進行で名古屋経済が復活。リニア中央新幹線の建設も14年末に始まり、将来的な成長への期待が膨らんだ」
大名古屋、JPタワー、JRゲートタワーが完成すると、働く人が約1万8000人増え、約10万8000人になるとの試算もあります。名古屋中心部のビルの賃料は堅調で、下落が続く大阪中心部とほとんど同じになりました。

 名古屋駅前の再開発ラッシュが名古屋全体にどんな影響を与えるかについてはこう言います。
 「街の構造がすでに変化し始めており、都市居住が進んでいく。名駅周辺の高層ビルが3本完成すれば、名古屋全体の貸しオフィスの延べ床面積は6%増える。名駅地区の空室率は、需給ひっぱくの目安とされる5%台から、一時的に数ポイント上がるだろう。しかし、空いたところに栄地区や伏見地区から企業が移転し、さらに、その空室に周辺の地区から移転する。そんな流れができつつある」
 「最終的には、古くて競争力のないオフィスビルは用途変換を迫られ、マンションなどの住居になり、街中に住む人が増えていく。東京で起きたそんな現象が、今後、名古屋でもみられるだろう」

 都市部への集中はいいことばかりとは限りませんが、駅前の再開発が名古屋市全体の構造を変えていく様子がわかります。ディベロッパーという仕事のダイナミックさが伝わってきますね。三菱地所については「人事のホンネ」でもインタビューしています。読んでみてください。

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