ニュースのポイント
東日本大震災からちょうど4年が経ちました。大手総合商社が「つなぐ力」をいかして被災企業を支援し、注目されています。商社の「つなぐ力」ってなんでしょう? 昨日に続き、震災と企業の話です。
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「商社『つなぐ力』、被災企業支援」です。
記事の内容は――被災地で大手商社の活動が注目されている。被災企業にお金を渡すだけでなく、商社の「強み」をいかし、ビジネスチャンスを生み出しているからだ。森下水産(岩手県大船渡市)は、三菱商事の復興支援財団などから資金を得て魚の加工品工場を増設し、さらに三菱商事系の食品卸会社の支援で首都圏の販路を開拓。今年の売上高は約12億円と震災前並みの見込みに。東北経済産業局が被災した約6000社に経営課題をきいたところ、「販路の確保・開拓」が「人材の確保・育成」に次いで多く、「資金繰り」を上回った。そこで多様なネットワークを持つ商社の「つなぐ力」がいきる。伊藤忠商事は岩手県陸前高田市のコメづくりを支援し、東京の百貨店で販売できるよう仲介。宮城県気仙沼市のフカヒレの濃縮スープは、三井物産系会社が運営する社員食堂で使ったり、住友商事系スーパーで売ったりしている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
商社は代表的な「BtoB(Business to Business、企業間取引)企業」です。消費者向けにモノやサービスを売る「BtoC(Business to Consumer)企業」と違い、ふだんは私たち消費者の目に触れないので、業務内容はわかりにくい面があります。大きなくくりでは貿易と投資でもうける会社ですが、もう少し具体的にはどんなことをしているのでしょうか。
商社の中でも、多種多様な商品を扱う「総合商社」の一つ、丸紅の採用ホームページには、「総合商社はトレードと投資で世界を『つなぐ』」というタイトルのコーナーがあります。
概略こんなことが書かれています――総合商社は世界中の多くの企業と信頼で結ばれた「つながり」を持ち、世界中からありとあらゆるモノやサービスを供給することができる。たとえば、米国企業が「肉料理に合う日本酒を探している」という情報と、日本企業が「肉料理に合う日本酒を開発した」という情報を得たら、両社と「つながり」がある商社が介在して需要と供給を結びつけることができる。
「人事のホンネ」で丸紅の毛利幸雄さんは、商社の仕事についてこう説明しています。
「商社の営業は、ほとんどはBtoB、企業に対するものです。(中略)丸紅が持つ全世界のネットワークから入ってくる情報を有機的につないで、取引先・パートナーの立場に立ってニーズを見極め、必要な情報やビジネスアイデアの提案などをしながら、信用を築いていくのです」
日本を代表する総合商社・三井物産の中野真寿さんはこう語りました。
「世界148拠点のネットワークと情報力をいかして、国と国、会社と会社、人と人をつなげ、資源を開発し、プラントを作り、会社を立ち上げ、多種多様な商品を販売し、プロジェクトを多角的に展開しています。簡単に言うと『世界中の人々が必要としているモノ、コトをお届けする仕事』です」
「つなぐ」がキーワードだとわかりますね。つまり、何かをつくった人とそれを欲しがっている人をつなぐ仕事です。「つなぐ」のは、たくさんの取引先のネットワークと情報力を持つ商社の得意技なんですね。被災地でも、何かを生み出した企業と求める企業をつなぎ、最終的には消費者に届けることができる。それが被災地の復興や支援にも貢献しているわけです。商社の本質とも言える「つなぐ力」には、世界中、日本中のさまざまな局面でビジネスを生み出す可能性がありそうですね。
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