■昨年の採用実績、職種について
――2013年度入社、14年度入社予定の採用実績を教えてください。
2013年度入社は、担当職(総合職)が137人(うち女性が26名)、業務職(一般職)は28名。2014年度は、担当職133人(女性26名)、業務職は27人の160人。例年、担当職は130から140人位でしょうか。当社はグローバル通年採用を行っていて、春に加えて夏も選考をしています。海外では欧州、米国、中国、韓国、台湾と世界中で採用活動をしています。春だけで100人強、夏は7月に20人前後、グローバルで15から20人を採用しています。世界で採用する人材としては、外国人も日本人の海外留学生もいます。
――総エントリー数は何人くらいですか。
プレエントリーは2万人、本エントリーは1万人くらいですね。今年は例年に比べてもう少し学生が考えていることを聞きたい、という思いからエントリーシート(ES)の項目を増やしたところ、結果として商社業界や当社の志望度が高い学生に絞り込まれ、本エントリー数は減りました。本当に入りたいという人はどんなに長くても書いてくれると思いますが、それほど志望が高くない人はやめてしまう。そういう要因もあっての減少だと思います。
――ESのハードルを上げたわけですね。具体的にはどう変えたのですか。
質問する項目と、それぞれの書く分量を増やしました。全体で800字を1800字にしたイメージ。項目は「志望動機」などで、オーソドックスな質問です。一つの項目につき400字程度。そして最後に「なぜ三井物産に入りたいのか」を200字で聞いて計1800字です。字数を増やしたので、エントリーの受付期間は延ばしました。
――職種について教えてください。
総合職と一般職を、当社ではそれぞれ担当職と業務職と呼んでいます。担当職の女性は全体の2割で近年あまり変わっていません。正直、調整はしていません。いい人がいれば採る。男性だからとか女性だからとかはありません。応募も2割ぐらいが女性です。
業務職は最近30名前後で全員女性です。女性である必要はなく、エントリーされる男性もいますが、説明会に来て、周りが女性ばかりで帰る方もいます。
――学生を見て、準備などの面で男女に違いは感じますか。
女性の方が受け答えなどがしっかりしていますね。総じて準備をしっかりしているイメージです。
■選考の流れと求める人材
――2015年新卒採用のスケジュールは?
経団連の倫理憲章に準じて行いますから、12月1日採用広報開始、ESは2月半ばから3月初めに締め切り、4月1日から面接を開始します。現在の面接は1対1が3回、その後最終面接が2対1です。面接員は現場で活躍する社員がメーンですが、人事総務部の社員も入ります。ESや能力試験、英語ができる、できないということだけでなく、人物本位でその人をしっかり見るためです。それで1対1面接を3回しています。時間は何次面接かによって違いますが1回20~30分くらい。内々定は4月の中旬前ごろに出します。現在はグループディスカッションや集団面接はしていません。
――面接前には書類選考がありますよね。
書類選考と筆記試験ですね。適性と言語、非言語、英語です。時事問題的なものはありません。用意した会場に集まって受けてもらいます。ESと筆記試験で足切りをしますが、偏差値だけでばっさりと落としたりはしません。偏差値とESの内容をしっかり加味して決めます。英語試験はありますが、できないからだめということはありません。英語力は後から勉強すれば補えるものですので。素地というか素質、ポテンシャルを持っている人を英語力だけで落としたくない。できなければ後から頑張ってください、と言います。面接には、1次で4000人弱呼んでいます。できるだけ多くの人に会いたいと思っています。
――どんな人材を求めていますか。
好奇心旺盛な人、失敗を恐れないで挑戦する意欲がある人。新しいものをつくり出して、世の中を良くしたい人。ゼロからつくり出すには力がいりますから、意志、信念が固い人です。夢や目標をしっかり持ち、仕事を通じて実現していこうと思っている人ですね。
――それに対して、実際にエントリーする学生の志望動機で多いパターンは?
志望動機は「海外で仕事がしたい」と書く人が圧倒的に多いですね。次に、うちの採用ホームページでうたっている「良い仕事」に共感して、「自分も仕事を通じて社会貢献したい」という人ですね。企業はボランティア活動をしているわけではありませんので、新しいものをつくり出して世の中を良くしていくという気持ちが大切です。あとはうちのOBに会って「その人と一緒に働きたい」。そういうパターンが多い。「海外」と「良い仕事」いう切り口が多い。基本的に商社に行きたいという人は海外で仕事がしたい、という人ですね。
――求める人材とはマッチしているんですね? その中で選考のポイントは?
ESの内容がいくらきれいに書かれていても、会ったらESの内容と全然ちがう人はたくさんいます。自分の意思で書いているのか、なんとなく周りの人の言葉を借りてコピペしているのかは、ESを見ればある程度わかります。会えばもっとわかる。ESは実体験に基づいているのかどうかが重要です。面接での受け答えも同じ。お化粧してもはがれますからね。その人の生き様みたいなものが本当にある人は、何をどんな角度から聞いても、しっかり自分の軸で答えられる。そこで説明に窮したりすると、「本当にそうなのかな」と思います。ESで見えない部分を確かめるのが面接ですが、ESを見ただけでもある程度そういうところは見えてきます。
――うわべだけ飾ってくる学生が多いのですね?
皆さんに伺えば、自分の夢を語ってくれるし、自分のやりたいことは当然志望動機に入っている。どうしてそう考えるのか、何の経験に基づいて話しているのかを聞くと、しっかりと答えられない。なぜそう考えるのか、この人はどういう人間なのかを知るための質問です。でも、有名な会社に入りたい、一生安定して給料もいい、そこに入るにはこんな準備しなくてはいけない、だから就活塾に行って、ネクタイの締め方からはじまり、「こんなことを聞かれたらこう答えれば印象がいい」――とか教えられるのでしょうか。
そういう人は、会って話をしたらすぐわかります。学生に聞きたいのは「本当に自分のやりたいこと」は何ですか、ということ。それは普通に学生生活を何となく過ごしているだけじゃ語れないのではないかと思います。自分の考えや意見と違う人に出会って刺激されたり、自分の常識が通用しない所に行って多様な経験をしてみたりしないと、自分の価値観はできないのでないかと。「俺は、私はこういうことがしたい!」。そう自信を持って思えるように、いろんな経験を積んでほしい。
失敗も大事です。誰でも成功したいが、失敗して初めて自分を改めたり、気づくことがある。社会人になってからもそうです。失敗して会社に迷惑を掛けることもある。ただ、それを糧に新しい挑戦をしなくてはならないし、それがあったからこそ次の成功につながる。面接でも「最近怒られたり、失敗したりしたことある?」と聞いたことがありますが、みなさんあまりないんですね。怒られたからいい、という話でもないですが……。
――マニュアル頼みの就活生が増えているんでしょうか。
それはあまり感じません。ただ、昔に比べて1カ月の短期海外留学やボランティア活動をしたことがある学生が増えました。就活に有利だと教えられるのでしょうか。そういう経験は、した方がいいと思いますが、履き違えてほしくないのは、「行ったこと」が大事なのではないということ。「行って何を感じて、それが自分の生き様にどう影響したのか」を考えてほしい。
三井物産株式会社
経験の大きさではない、どれだけ興味をもって取り組み、何を得たか
■ESと面接
――インターンシップは実施していますか。
現状はしていません。
ただ、「キャリア大学」というNPO法人の活動に参画しており、今年は大学1年生60人を招待してキャリア教育を実施しました。これは学生に早いうちから就業観を持ってもらいたいという試みで、夏休みを利用して30社くらいが参画しています。今年からこの活動が始まりました。「商社とは何か」とか「当社の歴史」を教えても学生はつまらないと思うので、出来るだけ生の商社マン・ウーマンに接して楽しんでもらおうと工夫をしてみました。夜中のメキシコとインドの駐在員にスカイプでつないで学生と直接会話してもらい、当社の社員が学生時代に感じていたこと、仕事への想い等、いろいろと質疑応答してもらいました。世界の裏側で切磋琢磨している社員と会話が出来るライブ感もあって、楽しんでもらえたのではないかと思います。何年後かにあの時こんな楽しい話があったなぁと思い出し、「商社っておもしろい」と思ってもらえるきっかけにつながればいいなと思います。
――若手社員が事実上の選考や学生への働きかけをするリクルーター制は?
やっていません。OB・OG訪問を勧めています。12月1日から大学のキャリアセンターに社員の名簿を配り、自分の大学のOB・OGがいない場合は名簿を見て連絡をもらう形です。OB・OG訪問の情報は採用には活用していません。OB・OGは6年目までの若手社員。名簿を配っている大学は、十数校です。
――会社説明会やセミナーはどんな形式ですか。
12月1日以降、大学別に講演に行ったり、留学生を集めたセミナーをやったり、六本木のアークヒルズで5000人規模の自社説明会をしたりしています。合同説明会にブースを出すこともあります。
――欲しい人材は採れていますか。
永遠の課題ですよね。採用試験が終わったときは良い学生を採れたという満足感はあります。入社後に育成で成長する人もたくさんいます。ただ、採用時点で納得感があるかどうかが重要だと思ってます。説明会に現場の社員に協力してもらい、会社の特徴とか仕事のやりがい、実態を話してもらう。それで興味を持ってきてくれる人が受けに来てくれているんだと思います。
――選考に大学名は関係ありますか。
関係ありません。内定者は有名大学が多いのは確かですが、自然体で選考して結果的にそうなっているだけですね。本当にフェアにやっています。早慶はエントリー数も多いので、それに比例していることはあるのかもしれません。できるだけ多くの、いろんな大学から、多様な人材、個性的な人を採りたいので、関西、北海道、東北、九州など説明に行ける大学には行っています。
――ESは誰が読むのですか。ES評価のポイントは?
ESは採用担当者が全てに目を通して読んでいます。見るポイントは、文章能力と設問にしっかりと応えているかどうか。言いっ放しでなく、起承転結が見たいですね。
空白が多いESは感心しません。もっと書きたいことはないのかなぁ、もっとアピールしたいことがあるのではないだろうか、と思います。あと誤字脱字は印象がよくないですね。
――面接ではどこを見ますか。
礼儀とか面接に臨む態度は基本だと思います。面接で見るポイントは、その人が本質を見抜ける人か、考える力を持っているか、しっかり説明できるか等です。日ごろから考えていないと、そういう説明はできないので。何かアンダーラインを引いて覚えてきても、その先を深く聞いてみると、残念ながら説明に窮してしまう人がいる。新聞などから知識はいくらでも取れますが、その知識を自分の考えに落とし込んで自分の言葉にしているか、その説明能力ですね。
もう一つ、人物を見るときの視点は、お客さんに可愛がられるか、自分の部下として一緒に働きたいかという点ですね。これは、どの会社も変わらないと思いますけど。
面接員研修はやっています。こういうポイントでみてください、こういう質問はしないでください、深掘りの仕方、例えばこういう例があります。そういう程度ですね。
――英語力についてはさきほどもうかがいましたが、英語ができなくて内定した学生もいるんですか。
英語は必要ですが、流暢に話せなくたって通じるものは通じるし、片言しか話せなくても「こいつと仕事がしたい。肩組みたい」と思わせる人間力ってあるじゃないですか。だからうちは英語だけでは落とさない。
実際、TOEICの得点が初級レベルとか、英語が苦手な人でも入社しています。入ってから大変ですが、入社後はみんな当社のボーダーラインをクリアするレベルに達しています。そういうことだと思うんですよ。いくらTOEICの得点が満点だろうが、どんなに履歴書がすばらしくても、それだけでは判断しない、ということです。
――印象に残った学生はいますか。
社内の売店でカルガモどら焼きを売っているんですが、「買って帰った方がいいですか?」っていう学生がいました(笑)。「どっちでも構いませんよ。美味しいと思いますので買っていかれたらいかがですか」と言いました。売店の売り上げには貢献してくれますが、選考には関係ありませんよね(笑)。OB・OG訪問について「何人会えば受かりますか」って、ちょっと本質とはずれた質問をした学生もいましたね。
それから、学生時代に力を注いだ経験を語ってくれる人もいます。別にコンビニのアルバイトで経験したことでも何でも良いと思いますが、経験の大きさや小ささという問題でもなく、その事にどれだけ興味をもって取り組み、そこから何を得たのか、が大切なんです。どうしても学生はやってきた経験の大きさばかりに意識がいくことが多いのかなと。
――インターンシップは実施していますか。
現状はしていません。
ただ、「キャリア大学」というNPO法人の活動に参画しており、今年は大学1年生60人を招待してキャリア教育を実施しました。これは学生に早いうちから就業観を持ってもらいたいという試みで、夏休みを利用して30社くらいが参画しています。今年からこの活動が始まりました。「商社とは何か」とか「当社の歴史」を教えても学生はつまらないと思うので、出来るだけ生の商社マン・ウーマンに接して楽しんでもらおうと工夫をしてみました。夜中のメキシコとインドの駐在員にスカイプでつないで学生と直接会話してもらい、当社の社員が学生時代に感じていたこと、仕事への想い等、いろいろと質疑応答してもらいました。世界の裏側で切磋琢磨している社員と会話が出来るライブ感もあって、楽しんでもらえたのではないかと思います。何年後かにあの時こんな楽しい話があったなぁと思い出し、「商社っておもしろい」と思ってもらえるきっかけにつながればいいなと思います。
――若手社員が事実上の選考や学生への働きかけをするリクルーター制は?
やっていません。OB・OG訪問を勧めています。12月1日から大学のキャリアセンターに社員の名簿を配り、自分の大学のOB・OGがいない場合は名簿を見て連絡をもらう形です。OB・OG訪問の情報は採用には活用していません。OB・OGは6年目までの若手社員。名簿を配っている大学は、十数校です。
――会社説明会やセミナーはどんな形式ですか。
12月1日以降、大学別に講演に行ったり、留学生を集めたセミナーをやったり、六本木のアークヒルズで5000人規模の自社説明会をしたりしています。合同説明会にブースを出すこともあります。
――欲しい人材は採れていますか。
永遠の課題ですよね。採用試験が終わったときは良い学生を採れたという満足感はあります。入社後に育成で成長する人もたくさんいます。ただ、採用時点で納得感があるかどうかが重要だと思ってます。説明会に現場の社員に協力してもらい、会社の特徴とか仕事のやりがい、実態を話してもらう。それで興味を持ってきてくれる人が受けに来てくれているんだと思います。
――選考に大学名は関係ありますか。
関係ありません。内定者は有名大学が多いのは確かですが、自然体で選考して結果的にそうなっているだけですね。本当にフェアにやっています。早慶はエントリー数も多いので、それに比例していることはあるのかもしれません。できるだけ多くの、いろんな大学から、多様な人材、個性的な人を採りたいので、関西、北海道、東北、九州など説明に行ける大学には行っています。
――ESは誰が読むのですか。ES評価のポイントは?
ESは採用担当者が全てに目を通して読んでいます。見るポイントは、文章能力と設問にしっかりと応えているかどうか。言いっ放しでなく、起承転結が見たいですね。
空白が多いESは感心しません。もっと書きたいことはないのかなぁ、もっとアピールしたいことがあるのではないだろうか、と思います。あと誤字脱字は印象がよくないですね。
――面接ではどこを見ますか。
礼儀とか面接に臨む態度は基本だと思います。面接で見るポイントは、その人が本質を見抜ける人か、考える力を持っているか、しっかり説明できるか等です。日ごろから考えていないと、そういう説明はできないので。何かアンダーラインを引いて覚えてきても、その先を深く聞いてみると、残念ながら説明に窮してしまう人がいる。新聞などから知識はいくらでも取れますが、その知識を自分の考えに落とし込んで自分の言葉にしているか、その説明能力ですね。
もう一つ、人物を見るときの視点は、お客さんに可愛がられるか、自分の部下として一緒に働きたいかという点ですね。これは、どの会社も変わらないと思いますけど。
面接員研修はやっています。こういうポイントでみてください、こういう質問はしないでください、深掘りの仕方、例えばこういう例があります。そういう程度ですね。
――英語力についてはさきほどもうかがいましたが、英語ができなくて内定した学生もいるんですか。
英語は必要ですが、流暢に話せなくたって通じるものは通じるし、片言しか話せなくても「こいつと仕事がしたい。肩組みたい」と思わせる人間力ってあるじゃないですか。だからうちは英語だけでは落とさない。
実際、TOEICの得点が初級レベルとか、英語が苦手な人でも入社しています。入ってから大変ですが、入社後はみんな当社のボーダーラインをクリアするレベルに達しています。そういうことだと思うんですよ。いくらTOEICの得点が満点だろうが、どんなに履歴書がすばらしくても、それだけでは判断しない、ということです。
――印象に残った学生はいますか。
社内の売店でカルガモどら焼きを売っているんですが、「買って帰った方がいいですか?」っていう学生がいました(笑)。「どっちでも構いませんよ。美味しいと思いますので買っていかれたらいかがですか」と言いました。売店の売り上げには貢献してくれますが、選考には関係ありませんよね(笑)。OB・OG訪問について「何人会えば受かりますか」って、ちょっと本質とはずれた質問をした学生もいましたね。
それから、学生時代に力を注いだ経験を語ってくれる人もいます。別にコンビニのアルバイトで経験したことでも何でも良いと思いますが、経験の大きさや小ささという問題でもなく、その事にどれだけ興味をもって取り組み、そこから何を得たのか、が大切なんです。どうしても学生はやってきた経験の大きさばかりに意識がいくことが多いのかなと。
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2024/11/24 更新
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