よく知られた「注意喚起の貼り紙」というものがあります。
・ここではきものをぬいでください
この文章、読点を打つ場所で意味がガラリと変わります。
☆ここでは、きものをぬいでください
☆ここで、はきものをぬいでください
真っ裸になるのと靴を脱ぐのとでは大違いですね。
「いぬがねこをうんだ」なども同様ですね。
「いぬがね、こをうんだ」
「いぬが、ねこをうんだ」。後者なら大ニュースです(笑)。
もっともこれらの文は、読点がなくても漢字で書けばその誤読を避けられます。
☆ここでは着物をぬいでください
☆ここで履物をぬいでください
☆犬がね子を生んだ
☆犬が猫を生んだ
しかしこれはどうでしょう。
・今日は雨が降る天気ではない
結局雨なのか雨ではないのか。どちらにも読める文章です。
☆今日は、雨が降る天気ではない(=晴れか曇り)
☆今日は雨が降る、天気ではない(=雨が降る)
正反対ですね。読点おそるべし。
読点の効果は大事ですが、皆さんのESや作文を拝見すると「そこは使わなくても……」という例によく出会います。要は多用し過ぎる傾向がある。読点の多い文章は読んでいてリズムが断ち切られ、非常にストレスを感じます。せっかくの中身が良くても評価を下げたくなります。
読点を別の表現で置き換えられる例を二つ挙げます。
・私はこの半年の語学留学を経て、まだまだ発展途上、日々勉強だな、ということを痛感しました。
中身は悪くない。ただこの短い文に読点が三つ。こうしたらどうでしょうか。
☆私はこの半年の語学留学を経て「まだまだ発展途上、日々勉強だな」ということを痛感しました。
思ったことや感じた事をカギ括弧(「 」)でくくる。ずいぶん見た目がスッキリしました。カギ括弧自体も、多用するとうっとうしいのですが(特に短い単語に使いすぎると暑苦しい)、ここは良い置き換えでしょう。
・私はとにかく球技が大好きです。親が熱心に通わせてくれたこともあり、幼稚園から今までに野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボールと、一通りのものは体験してきました。
たくさんの事柄を並列する。もちろんこれも読点の役目です。ただ二つくらいならまだしも、これはちょっと多い。こんな時は、
☆私はとにかく球技が大好きです。親が熱心に通わせてくれたこともあり、幼稚園から今までに野球・サッカー・バスケットボール・バレーボール・ハンドボールと、一通りのものは体験してきました。
どうでしょう。中黒(・)にするだけで、ずいぶん印象が変わりませんか。これは覚えておいて損はないテクニックです。
2回続けて読点について書いてきました。これだけではなかなか「うまい使い方」を身につけるのは難しいかもしれません。そんな時は書いた文をそっと声に出して読んでみて下さい(黙読でも構いません)。自分が間を置かないところに入っている読点は、おおむね不要なことが多いです。少し意識してみましょう。