
■防災関連の新事業
──いまやってらっしゃるお仕事について教えてください。
朴 防災をテーマにした新規事業を担当しています。これまでは気候変動や、社会のDEI(Diversity, Equity & Inclusion)というテーマが多かったので、最初に「防災」と聞いたときに「あれ? 防災ってSDGs、サステナビリティだっけ?」と正直思いました。でもよくよく考えたら、これはすごく大事なテーマだと気づきました。防災をテーマに自治体などに向けた新規事業を検討し、事業化し、それをどう具体化していくかという仕事をしています。
──防災とビジネスを、具体的にどうつなげているのでしょうか。
朴 例えば、何か大きな災害が起きたときに避難する際、避難先の環境がよくなかったり、在宅避難をしたくても全然できなかったりします。そういう環境を個人が整えるには限界があり、自治体と組んで、いかに快適な環境で避難ができるか、どういう物資を提供するかという計画をつくることが私たちの仕事です。物資を販売するのならどんな物資をどうやって販売するか、何も災害がない今のうちに何か準備できることはないか、と考えて進めています。
──日本は海外にくらべて「避難所の環境が悪い」と言われることもありますが、そこを変えるということですか。
朴 そうですね。プロジェクトではいろんな自治体や都道府県の方にヒアリングする機会がありますが、能登半島地震のインパクトが大きかったようです。元旦に地震が起き、半島という地理的な特性もあって、なかなか環境を整えられなかったそうです。3.11の後なので、飲食や必要最低限のものは届けられたけれども、衛生面やその他の面は全くケアできていなかった。何とか改善しないといけないという声が上がってきて、取り組んでいる自治体が多いです。私は直接の担当ではないのですが、自治体の仕事では予算の限界があったり、決まったプロセスを通さないといけなかったりするので、そこを踏まえながらどうやって事業化をして、貢献できるかと考えています。
■インプットとアウトプット
──ヒアリングなどで情報をインプットすることと、アウトプットすることのバランスはどのような感じですか。
朴 実は今のプロジェクトがけっこう長く続いており、フェーズによってやることが全然違います。
最初のうちは何も決まっていない状態なので、とりあえずみんなで「どういうものがいいんだろうね」と絞り出すところからスタートします。似たような事例があるかどうか調べて、それをベースに本当に役職関係なくチームのみんなで集まって「こういうビジネスモデルはどうだろうか」「いや、ここはこうじゃないか」と話し合って、形にしていきます。それから基本的に一度まずヒアリングして課題を形にし、「でも、実際ここにお客さんのニーズがあるんだろうか」「私たちが立てた仮説は合っているのか」と考え、再度ヒアリングして検証します。仮説をつくって検証して、つくって、検証して、を繰り返すフェーズです。
──何度も繰り返すのですね。
それを何サイクルか繰り返して具体化しても、実際に世の中に事業として出すためには、すごく細かな課題がたくさん出てきます。例えば、契約はどうするのか、具体的な損害賠償をどうするかといったことをチームの中で再度話し合いながら、クライアントや知見のある方のところに行って、「こういうことをやろうとしているんだけど、どうでしょうか」と検証します。1回つくって、形にして出して、日々の仕事はヒアリングとアウトプットが半々だと思います。
コンサルと聞くとクライアントに一方的に話をする仕事なんだろうと思っていたのですが、実際にはむしろクライアントとも議論し、場合によってはその場で資料を修正したり、一緒につくったりというやり方で仕事をしています。
──出社する機会は多いですか。
朴 チームによります。例えば、大きなホワイトボードを使って、みんなでブレインストーミングをするときは出社します。クライアントともいろいろと話をしたほうが早いときはクライアントに直接うかがいます。