(正確には前二つは「古語」と言うべきで方言とは言い切れないのですが、まあ関西で使われることが多いので)
一方、自分では使いませんが意味の分かる関西弁、というのもあります。「煮抜き」がその代表格。おそらく関東の人は全く分からないでしょう。これは「ゆで卵」のことです。
「煮抜き」はおいしいのですが、「い抜き」は困る。今日はその話から始めたいと思います(おまけだけじゃなくて前置きも長くなってきたな……苦笑)。
「このテニスサークルでのつらい経験が、今の私を作ってるのだと思います」
「未来の日本の行く末について、真剣に考えてる先輩を見習いたい」
「1日5冊本を読んでます。もう5年続けてる日課です」
いずれも会話で出てくる分には、違和感なく口にしたり耳にしたりしますね。でも文字で見るとどうでしょう? ちょっと落ち着かない感じがしませんか。これが「い抜き言葉」です。以前お話しした「ら抜き」ほどポピュラーではありませんが、これもいわゆる「話し言葉」の典型です。
書き言葉としては、それぞれ「作っている」「考えている」「読んでいます/続けている」とした方が良いですね。
また、話し言葉では使いがちな身近な人への敬称や丁寧過ぎる言葉使いも、公的な文書や発言にはそぐいません。
「お父さん、お母さん」→「父、母」(おじいちゃん、おばあちゃん→祖父母、おじさん、おばさん→叔父叔母・伯父伯母も同様)
「お昼ご飯」→「昼食」
話し言葉だと意識しないでつい書いてしまう例は他にもあります。以下の文章はどうですか?
「就活を頑張っているみたいだけど、そんなことは問題じゃない」
「そのくらいで何とかなるんだったら、すごいうまくいっているはずだ」
ずいぶん上から目線の物言いですね。こんなこと言われたらMK5(前回参照。笑)ですね……なんて冗談はさておき。
「~みたい」は話し言葉。「~のようだ」としましょう。「~だけど」は「~だが」や「~だけれど」に。
「そんな(こんな)」は「そういう(こういう)」とする。「~じゃない」は「~ではない」に。
「~だったら」は「~であれば(~ならば)」。「すごい」は「すごく」でもいいですが、「とても」や「非常に」の方が書き言葉らしくてより良いです。
改めて書き直しましょう。
「就活を頑張っているようだが、そういうことは問題ではない」。
「そのくらいで何とかなるのならば、非常にうまくいっているはずだ」
どうですか。ずいぶん印象がきちっとしましたよね?
就活は「オトナ」の一歩を踏み出すための側面も持っています。当たり前ですが、会社は「オトナ」が働く場所だからです。「コドモ」気分の話し言葉を使っているような人は必要とされません。初回に話したように、「身についていない」言葉はかえって見苦しいものですが、やはりドレスコードは必要なのです。
少し意識を研ぎ澄まして、「オトナの」装いが出来るように努力しましょう。