最近、学生のみなさんやファミレスの店員さんと話していると、過剰な敬語が多用されているように感じます。身に覚え、ありませんか。
代表格が「二重敬語」。尊敬語のマシマシです(笑)。古典文法では「より高い敬意を表す」ために使われていましたが、現在の口語文法では適切ではないとされています。まさに「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」ですね。
☆先生、私の論文をご覧になられましたか?
こんな言葉の使い方、している人はいませんか? 「ご~なる」だけで尊敬語。そこに尊敬の助動詞「れる」がついている二重敬語。ここは「ご覧になりましたか」で十分。
☆部長はたった今お帰りになられました
これも「お~なる」で尊敬語。そちらを生かすなら「お帰りになりました」。尊敬の助動詞を生かすなら「帰られました」。どちらかにしましょう。
「おっしゃられる」「おいでになられる」なども同様。「おっしゃる/言われる」か「おいでになる/来られる」でOK。
以前話した「ら抜き言葉」ほどメジャーではありませんが、おかしな敬語に「さ入れ言葉」というものがあります。
☆先生の論文を、読まさせていただきました
第1回の「させていただく」が登場。まあこれは使ってもよい場面でしょう。
しかし「~させてもらう」の謙譲語「~せていただく」に「さ」が入ったのは良くない。使役の助動詞「せる/させる」は動詞によって使い分けがあります。五段活用の動詞とサ変動詞「する」の未然形には「せる」、それ以外は「させる」がつきます。
「読む」は五段活用なので、未然形につくのは「せる」。誤って「させる」を使ったため、「さ」が入った「さ入れ言葉」になってしまいました。
敬語をうまく使いこなすのはなかなか難しいと思います。特に誤った表現に慣れてしまっていると、つい口頭でも文字でも使ってしまいがち。それを改めるために、前回と今回のコラムが、「気づき」の助けになれば幸いです。