言葉マイスター ナカハラハラハラ 略歴

2014年10月22日

上げるの?下げるの?~敬語の話その1

 今回は敬語の話を致します。まずは、大事なことばが二つ。「尊敬語」と「謙譲語」の違いはご存じでしょうか。

 ……はい。あえてきちんと書いてみました(笑)。
 面接・ESに敬語表現が必須……というのは皆さん理解しているでしょう。そしてその先に待つ社会人生活でも、ふさわしい敬語を使えることはある意味「基本」だと言えます。

 「若者の言葉の乱れ」なんて、よく言われます。しかし文化庁の国語世論調査(2013年度)によると、「敬語を必要だと思う」割合が20代以下はなんと100%。個人的にはちょっと意外ですが、うれしくもあります。敬語表現は日本語の美徳の一つだと思うので……。

 しかし敬語を「必要だ」と思っていても、適切に使えなければ台無しどころか、逆効果にさえなります。就活はもちろんのこと、接客のアルバイトをされている方にとっても役に立つと思います。

 前置きが長くなりました。冒頭の一文。

 ・致します = 「する」の謙譲語
 ・ご存じ(です)= 「知る」の尊敬語

 です。

 尊敬語は「相手を高める」、謙譲語は「自分を下げる」ことで敬意を示すのがポイントです。これを混同して、逆に使ってしまうことがよくあります。敬意どころか、失礼になりますよね。
 前回同様、いくつか例文を挙げるのでどこがおかしいか考えてみましょう。
当店ではクーポンがご利用できます

 「ん?合ってるじゃん!」と思った人多いのでは? 問題なのは「ご利用できます」の部分。このような「ご~する」という形の言葉は謙譲語で、相手(この場合はお客さん)に使ってはアウト。ここは「ご利用になれます」と尊敬語を使うのが適切。
 
お連れさまがお待ちしています

 一見するとこれも丁寧な表現に見えますが……「お待ちして」いるのも別の「お客さん」。「お~する」は謙譲語だからこれまたアウト。「お待ちになっています」と尊敬語を使いましょう。逆に店員が「またのお越しをお待ちしています」と言うのは謙譲語として適切。「お待ちです」と「お」をつけるだけでも敬意は伝わります。

部長、お客様が参りました

 部長は目上の人だけど、お客様は自分よりも部長よりも立てるべき存在。「参る」は「行く/来る」の謙譲語(「お参り」が神様のところに「行かせてもらう」言葉だと考えたら分かりやすい)ですから、ここは「いらっしゃいました/おいでになりました」などを使いましょう。

食事をご用意しました。どうぞ頂いて下さい

 「いただく」は「食べる/飲む/もらう」の謙譲語です。ご飯を食べる時、「頂きます」とあいさつしますよね。それに対し作った人は何と返すか。「どうぞ召し上がれ」。そうです。ここは「お召し上がり下さい」という尊敬語にしましょう。

 次回も敬語の話を続けます。テーマは過剰敬語です。

今週のおまけ

 前回の「宿題」。重言の答えです。

 ・今日は入社第1日目。緊張の朝だ。
→ 「第」と「目」がダブり。「1日目」か「第1日」に。

 ・私は製造メーカーに内定をもらって、満面の笑顔を浮かべた。
→ 「メーカー」は「Maker」。「つくる」ですよね。ここは「製造会社」か「メーカー」だけでOK。
→ 後半にもひとつ。「満面の笑顔」。「面」と「顔」がダブり。ここは「満面の笑み」ですね。よく似たものに「満天の星空」があります。「満天の星」で十分。

 ・私のいたサークルでは、従来から先輩のしごきがひどかった。
→ これは難しかったかな? 「従来から」がダブりです。「従来」で「以前から今まで」の意味なので、「~から」は不要です。「古来から」も同じ。

 全問わかった方は、ぜひ就活ニュースペーパーまでお便りを!