「馬から落ちて落馬して……」
「いにしえの昔、どこかの武士の侍が、ある山の中の山中で、馬から落ちて落馬して、女の婦人に笑われて、真っ赤になって赤面し、家に帰って帰宅して、仏の前の仏前で、小さな刀の小刀で、腹かき切って切腹し、お墓の墓地に埋められた」
いわゆる「重言(重ね言葉)」の滑稽さを笑うものですね。みなさんもよく会話やメールなんかで
「マジ頭痛が痛いんだけどーw」
なんて言うことありませんか?
「わざと」使っている分には大丈夫です。「きちんとした」言い方が分かっているのですから。
でも、これはどうですか?
・私はまだ未完成の存在だ。
・なんとなく違和感を感じる。
・あらかじめ予告する。
・現状を楽観視している。
「あ、私普段言ってる(書いてる)」と思ったもの、一つくらいあったのでは?
お察しの通り、いずれも重言です。
・私はまだ未完成の存在だ。 → 「まだ(いまだ)」と「未」がダブり。「まだ」を抜くか、「まだ完成していない」とする。
・なんとなく違和感を感じる。 → 「感」がダブり。「違和感がある」とする。
・あらかじめ予告する。 → 「あらかじめ」を漢字で書くと「予め」。「予告する」とする。
・現状を楽観視している。 → 「観」と「視」は同じ意味。「楽観する」とする。
「別にたかが一文字くらいに目くじら立てなくてもいいじゃん。意味通じるし」
という意見があるかもしれません。
実際そうだと思います。例えば、面接で思わず「SNSに依存しすぎな若者には違和感を感じます」と口にしたからって、それだけで落とされることはまずないでしょう。
しかし、仮にマスコミや広告業界など「ことば」を扱う仕事に就きたいと思うなら、こういったことには敏感であって欲しいと思います。
文化庁の国語世論調査を取り上げた「今日の朝刊」(9月25日)でも、木之本編集長がこう書いています。
「(選考が進むと)面接ではお父さん、お母さん世代の社員や役員です。言葉の誤用には敏感な人もいます」
そして重言は、なにより「もったいない」のです。
皆さんはこれから、たくさんESを書きます。最初は何を書いていいか分からなかったESも、回数を重ねるうち「あれもこれも」盛り込みたくなってくる。
なるべくたくさんの情報を、いかにシンプルに書くか。
そんな中で「一文字でも短く」することの重みがいずれ分かってきます。ダブりに貴重な文字数取られるのなんて、もったいなくないですか?
文章を「シンプルにする」コツは他にもあります。
またお話しする機会もあるかと思います。