言葉マイスター ナカハラハラハラ 略歴

2014年10月15日

重ね重ねすいません

「馬から落ちて落馬して……」

 子どもの頃、父親にこんな言葉遊びを教えてもらいました。聞いたことありますか?

 「いにしえの昔、どこかの武士の侍が、ある山の中の山中で、馬から落ちて落馬して、女の婦人に笑われて、真っ赤になって赤面し、家に帰って帰宅して、仏の前の仏前で、小さな刀の小刀で、腹かき切って切腹し、お墓の墓地に埋められた」

 いわゆる「重言(重ね言葉)」の滑稽さを笑うものですね。みなさんもよく会話やメールなんかで

 「マジ頭痛が痛いんだけどーw」

 なんて言うことありませんか?

 「わざと」使っている分には大丈夫です。「きちんとした」言い方が分かっているのですから。
 でも、これはどうですか?

 ・私はまだ未完成の存在だ。
 ・なんとなく違和感を感じる。
 ・あらかじめ予告する。
 ・現状を楽観視している。

 「あ、私普段言ってる(書いてる)」と思ったもの、一つくらいあったのでは?
 お察しの通り、いずれも重言です。

 ・私はまだ未完成の存在だ。 → 「まだ(いまだ)」と「未」がダブり。「まだ」を抜くか、「まだ完成していない」とする。
 ・なんとなく違和感を感じる。 → 「感」がダブり。「違和感がある」とする。
 ・あらかじめ予告する。 → 「あらかじめ」を漢字で書くと「予め」。「予告する」とする。
 ・現状を楽観視している。 → 「観」と「視」は同じ意味。「楽観する」とする。

 「別にたかが一文字くらいに目くじら立てなくてもいいじゃん。意味通じるし」
 という意見があるかもしれません。

 実際そうだと思います。例えば、面接で思わず「SNSに依存しすぎな若者には違和感を感じます」と口にしたからって、それだけで落とされることはまずないでしょう。

 しかし、仮にマスコミや広告業界など「ことば」を扱う仕事に就きたいと思うなら、こういったことには敏感であって欲しいと思います。
 文化庁の国語世論調査を取り上げた「今日の朝刊」(9月25日)でも、木之本編集長がこう書いています。
 「(選考が進むと)面接ではお父さん、お母さん世代の社員や役員です。言葉の誤用には敏感な人もいます」

 そして重言は、なにより「もったいない」のです。
 皆さんはこれから、たくさんESを書きます。最初は何を書いていいか分からなかったESも、回数を重ねるうち「あれもこれも」盛り込みたくなってくる。
 なるべくたくさんの情報を、いかにシンプルに書くか。
 そんな中で「一文字でも短く」することの重みがいずれ分かってきます。ダブりに貴重な文字数取られるのなんて、もったいなくないですか?

 文章を「シンプルにする」コツは他にもあります。
 またお話しする機会もあるかと思います。

今週のおまけ

【おまけ1】
 以下の文章も重言があります。ちょっと上級編。どこが良くないのか考えてみて下さい。答えは次回に。

 ・今日は入社第1日目。緊張の朝だ。
 ・私は製造メーカーに内定をもらって、満面の笑顔を浮かべた。
 ・私のいたサークルでは、従来から先輩のしごきがひどかった。

【おまけ2】
 私が好きなアイドルグループ(のひとつ……笑)に「Negicco」という、新潟のローカルアイドル3人組がいます。

 彼女たちの曲タイトルには、なぜか重言が多いんですね。
 「愛のタワー・オブ・ラヴ」「あなたとPop With You!」
 身勝手なもんで、全く気になりません(笑)。むしろ心地よい。

 ちなみにこのNegicco、いずれこのコラムに登場予定です。
 乞うご期待(してる人いるのかしら?)。

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