せっかくユニークだったり説得力があったりするエピソードを持っていても、文章構成がとっちらかっているせいで、「とても読み通す気にならない」という文章、よく目にします。素材がいいのにまずい料理みたいなものです。処理・加工の仕方がよろしくない。就活のお手伝いをする私たちですらそうなのですから、その何倍、何十倍もの数をこなす大企業の人事担当者の苦労を察すると……恐ろしいですね(汗)。
よく「文章を書くときは起承転結を心がけよう」などと言われます。そもそも起承転結とは何なのか。辞書を引いてみました(参照:大辞林)。
(1)漢詩の絶句で、句の並べ方。起句でうたい起こし、承句でこれを承(う)け、転句で趣を転じ、結句で結ぶという形式。絶句では第一句を起句、第二句を承句、第三句を転句、第四句を結句という。起承転合。
(2)文章の構成や物事の順序。
漢文の授業で「五言絶句」「七言絶句」って習いませんでしたか? 4行からなる漢詩が絶句です(ちなみに倍の8行が律詩)。つまり、元々は漢詩の構成を示す言葉だったのです。それが転じて(2)のように広い意味になったわけです。
個人的には、ここが曲者だと思います。短い文字数の漢詩(五言絶句なら20字、七言絶句なら28文字)だからこそ、この「起承転結」が鮮やかに生きるのであって、長い文章にはふさわしくない、とさえ思います。そして日本の(なかでも小学校・中学校の)作文指導は「起承転結」にとらわれ過ぎているのではないでしょうか。とりわけ「読書感想文」にそれが顕著です。
あらすじを書く(起)→その中身を受けて思いをひとことふたこと(承)→登場人物に心動かされたり、驚かされたことを列挙(転)→自分がこの作品/登場人物から何を学んだり得たりしたか(結)
皆さんの大半が「あ、そんな感じで書いてきた!」と思うのではないでしょうか。確かにひとつの「様式」として否定はしません。ある種の見通しの良さがあるもの事実。そもそも文章がハチャメチャな人なら、起承転結をまず念頭に置いて推敲するのは「基本動作」としては必要です。
ただしこれは、「最後まで読んでもらえる」前提の文章だからこそ。夏休みの宿題に提出された読書感想文、最後まで読まない先生はいないでしょう?(いないはず……苦笑)。ところが、就活のESや作文(論文)はどうでしょうか。
「つまらなかったらポイ」
当然ですね。処理する数が違うんですから。そこで、あえてこう宣言したいと思います。
「就活で書く文章では、起承転結を……使うな!」
じゃあどうすればいいのか。提案したいのがコレ。
「“結”起承転(+結)」
実はこれ、同様のことをこれまでも伝えてきました。要は「まず結論から書け」ということ。例えばES。「あなたの長所は?」と聞かれているのに、
「私、テニスサークルで部長を務めました(=起)」
から書き出したらダメでしょう? 最低でも「粘り強さです」「ガッツがあることです」「多様な意見を一つにまとめられることです」と書き出す。そして次に、サークルの部長をしたこと、部員数や経験年数などのデータ(=承)、勝負エピソード(=転)と続くのが王道。最後の「+結」は余裕があれば、もう一度冒頭で述べた結論を述べればいい(もちろん、ただの繰り返しにならないよう、違った言い方や表現を心がける)。
言いたいことをズバリと伝えた上に、構成もきちんとしていますね。
これは文章だけではなく、面接やディスカッションなど「話す」場面でも有効。「結論を先に言う」は分かっていても、言い放った後迷走してしまう人が結構いますが、そこで「結」の後に「起承転」をくっつけることを意識してみましょう。
……さてここまで、「使うな」とは言いつつも「起承転結」を元にして話してきました。次回は更に踏み込んで、「起承転結」とは全く違う構成術について説明します。