言葉マイスター ナカハラハラハラ 略歴

2016年01月26日

ESの文章構成を考える ~序破急で行ってみよう

 前回は「起承転結」をそのまま使うのではなく、結論を前に持ってくる、言わば「“結”起承転(+結)」というやり方についてお話ししました。今回皆さんにぜひ試してもらいたい文

章構成術は……「序破急」です。

 序破急(じょはきゅう)。ご存じでしょうか。起承転結ほどは耳にしないかもしれません。少し長くなりますが、今回も辞書を引いてみましょう(参照:大辞林)。

(1)日本の音楽・舞踊・演劇などで、楽曲構成・演出・速度などに関して三部分または三段階を想定する理論用語。(ア) を原義とし、各種の芸能に採用され、多様な意味・用法がある。

(ア)
雅楽の管絃・舞楽の曲で典型的構成とされる、序と破と急の三つの楽章。曲名に付して「五常楽の急」「太平楽の急」などと呼ぶ。序(冒頭楽章)は緩徐かつ非拍節的。破(中間楽章)

は緩徐ながら拍節的。急(終楽章)は急速で拍節的。
(イ)
演奏速度の三段階。序・破・急の順に速度を増し、拍節的性格が強まる。「序の舞」「急の位」など、主に能で用いられる。
(ウ)
楽曲構成・番組編成・演出などの理念上の三区分。上演の時間経過に伴う趣向変化の典型を想定したもので,序・破・急は導入・展開・終結とみなせる。能・浄瑠璃の脚本構成、能の五

番立の番組などがこの理念による例である。
(エ)
楽曲中の速度の緩急,技巧の繁簡,表情の静動などの変化を包括的にさしていう語。三味線楽・箏曲などの近世邦楽や講談などの話芸で用いられ,三区分不明確な一語として「序破急」

ということもある。

(2)物事の構成。はじめと中間とおわり。

 前回の「起承転結」が漢詩由来だったのに対し、「序破急」は日本雅楽(舞楽)由来。特に大事なのは(1)の(ウ)。要は「3部構成」なんですね。

 「起承転結」は、前回もお話しした通り文章構成の基本というか「骨格」としては便利です。しかし、(漢詩よりは)長いESや作文にはやや不向きな面も。そこでいっそ、3部構成でシ

ンプルに!という提案です。普通に考えると

・序=イントロ 破=本文 急=結論

 なのですが、これも前回を応用して「“急”序破(+急)」で行きましょう。「主張をきっぱり(急)」→「前提条件を説明(序)」→「エピソード(破)」といったイメー

ジですね。エピソードが複数あって、それぞれが同じようなことの並列ではなく、お互いを補強し合うような「強い」ものであれば「起承転結」の「転」として生きますが、多くの場合

、なかなかそうはいかないでしょう。どちらかと言えば、「とっておき」のエピソード「一つ」をしっかり語った方が良いもの。その点からも「序破急」はオススメです。

 実は「序破急」には、「3部構成」以外にもう一つ就活のヒントになる提案が隠されています。(1)の(ア)を見て下さい。

・序=緩徐かつ非拍節的 破=緩徐ながら拍節的 急=急速で拍節的

 そう。「テンポ」です。ものすごくざっくりとまとめると……序は「ゆっくり」、破も「ゆっくり、ただし序よりはリズムを持って」、急は「急速でリズミカル」。文章ではこれを表

すことはなかなか難しいですが、面接ならどうでしょうか? そうです。結論(急)はやや早口に力強く(もちろん聞き取れるレベルで。笑)で言ってみる。それを受けたイントロは少し抑

えた感じで。エピソードに入ったら、気持ちテンポを上げて。

 話す方としてもメリハリがつきますし、何より聞き手(=人事担当者)があなたの話す内容への「準備・予想」をもって臨むことができます。演技過多になる必要はありませんが、平板

な話し方になりがちな人は、少し意識してみましょう。

 これも「3部構成」だからできる技。4段階にテンポを変えるのは、ちょっと難しいですからね(笑)。

今週のおまけ ~日本が誇るあのアニメも「序破急」~

 「序破急、聞いたことあるよ!」という人、いるかもしれませんね。特にアニメが好きな人なら。

 庵野秀明監督の名作「新世紀エヴァンゲリオン」。それを自ら映画としてリメイクした「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」。2007年の1作目が「序」、09年の2作目は「破」、12年の3作

目は「Q」というタイトルで公開されました。「急」を「Q」とひとひねりしているのがいかにも庵野監督らしいです(笑)。物語も、比較的テレビ版に依拠していた序・破と異なり、「

Q」では大展開を見せました。

 なお「序破急」をタイトルに冠していますが、物語はあと一作を残しています。公開日は未定で、ファンはやきもきしています……(私もです。笑)。

おことわり ~質問大募集!~

 このコーナー。今回でちょうど50回となりました。だから……というわけではありませんが、以降は不定期更新となります。あしからずご了承下さい。

 なお、ぜひ皆さまからの質問・疑問をお待ちしています。就活に関する「ことば」で悩んだり不思議に思ったり困ったりすることがあれば、どんなささいなことでもいいので

agnavi@asahi.comの「ナカハラ」宛にお寄せ下さい。

 それでは、次回更新まで、しばしさようなら。皆さんのご愛読(?)に感謝!