「ジェンダー(gender)」という言葉があります。変えようのない生物学的な性差「セックス(sex)」とは違う、社会が作り上げた人為的な性差のことです。具体的に言うと、「男は(女は)こうあるべきだ」という役割分担のことです。
「男は外で働き、女は家で家事・育児・介護をする」。今どきこんな考え方だけではうまくいかないのはご承知の通りです。就活でも「男は総合職、女は一般職」という発想は今やナンセンスでしょう。もっともこの「総合職」「一般職」という言葉自体、男女雇用機会均等法の施行に伴う「逃げ」として生まれた背景があるのですが(この辺りはぜひ自分で調べてみて下さい)。
とはいえ、日本はまだまだ先進国に比べて「ジェンダーフリー」からほど遠いのも実情。「世界経済フォーラム」が出す男女平等度合いを示すランキングでは、世界142カ国中104位(2014年)。国会議員に占める女性の割合も10%に届かず、世界平均を下回るばかりか、先進国の中では最低です。
こういった「嘆かわしい」(とあえて言います)現状を変えるのは、一朝一夕にはいきません。そのためにまず考えてみたいのが「ことば」です。皆さんのような「未来ある」若い人たちにこそ、そこを強く意識して欲しいと思います。
怖いのは、あからさまな差別意識ではありません。例えばこんな表現を見て、どう思いますか?
・女性らしい気配り(きめ細やかさ)が感じられる商品
・試合には負けたが、男らしく堂々とした振る舞いで相手チームをたたえた
・バリバリの営業マンにもかかわらず、しっかりと育休を消化
一見、良いことしか書いていません。しかしいずれも「ジェンダー」のワナにはまっています。順に見ていきましょう。
一つめ。「気配り」や「きめ細やかさ」は女性特有のものでしょうか。男だって気配りができる方が良いに決まっています。そもそも気配りの有無は性格の問題。気配りの出来ない女性だっています(苦笑)。
二つめ。体育会系の部活やサークルをした人ならこれは分かるはず。確かにスポーツは、マッチョな思想(思考)が根強く残っている世界です。しかし、サッカー女子W杯で立派に勝ち進んだ「なでしこジャパン」を例に挙げるまでもなく、スポーツマンシップに男も女も無いですよね。「男らしく」は要りません。
三つめ。「家事や育児をする」男性は「特別な事」、もっと言えば「オプション」としてそれをするのでしょうか? 「~にもかかわらず」という言葉の背後に、「男の割に(男にしては)」良くやっている、という発想、そして「育児は女性のすべきもの」という思想が透けて見えるのです。
どうですか。「全然そこまで思い至らなかった……(汗)」という人は深く反省して下さい(笑)。ついでにいえば、「営業マン」「スポーツマン」といった言葉にも注意が必要です。「マン」は一般的には男性を指すので、「ビジネスマン」も最近は「ビジネスパーソン」と呼ぶことが多くなりつつあります。
奥村副編集長のコラムではありませんが、「女性がいきいきと働ける」エンジェル職場は、当然男性にとっても実力を発揮しやすい職場でもあるはず。その意味では、アベノミクスが「成長戦略」の柱のひとつとして
「女性が輝く社会」
を打ち出しているのは良いことではありますが、最終的に
「働く男女が輝く社会」
にならないといけません。これから社会に出ていく皆さんにこそ、それを作ってほしいと思います。