まずはちょっとしたお遊び。人はいかに間違いに気づかないか。ためしに次の文章を読んでみて下さい。
こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
「んん?」と感じた人も多いでしょうが、恐らく大半の人はこう「自然に」読めてしまったはず。
こんにちは 皆さんお元気ですか? 私は元気です。
人間は文字を認識する時 その最初と最後の文字さえ合っていれば
順番はめちゃくちゃでもちゃんと読めるという研究に基づいて
わざと 文字の順番を入れ替えてあります。
もちろんこれは極端な例というか、まさにお遊びで、実際はいくら何でもこんな誤字だらけの文章を書く人はいないと思います。(タイトルの意味も分かっていただけましたでしょうか)しかし子どもの頃、「エレベーター」を「エベレーター」と思っていた人、いませんか? 子どもならともかく、大人でもネットや口頭で「雰囲気(ふんいき)」のことを「ふいんき」と書く(言う)人はよくいます。思わず書いたり言ったりならまだしも、本当に「ふいんき」だと信じている人もかなりいて驚かされます(そこのあなた、大丈夫ですか?)
「延々と~する」の「えんえん」を「永遠」と勘違いしている例もよくネットで見かけます。まあニュアンスとしては当たらずといえども遠からずですから、意味は通じるのですが……。
「ふいんき」の場合、たちが悪いのは最近の辞書ソフトが「ふいんき」と打っても「雰囲気」と変換してしまう(してくれる?)こと。ちなみに今この原稿を打っているパソコンに入っている辞書ソフトは「ふいんき」と打って返還すると「雰囲気<「ふんいき」の誤り>」と、一応警告を出した上で変換しました。しかし手元のスマートフォンでやってみると、何の警告もなく変換してしまいました。これでは「誤り」だと気づかないまま成長してしまうのでは……と個人的にはヤキモキします。
以上の例とよく似た「間違い」のパターンに「同音異義語」があります。ある意味これは日本語の特徴でもあるのですが、それだけに最新の……もとい「細心の」の注意が必要です。私がこれまで見てきた新聞記事でも、
・火事の原稿で「消化器」/暴力団同士の抗争で「発泡」
がそれぞれ一箇所だけ出てきてギョッとしたことがあります(もちろん前者は「消火器」で後者は「発砲」が正解)前者はさておき、後者は漢字の旁(つくり)、すなわち音を表す部分が一緒なだけに、漫然と見ていると見逃してしまいます(そして恥をかきます)。
展覧会の「日時」をお知らせする記事で「会場時間は午前10時から午後4時まで」てのもありました。正しくは「開場」。これなんて、展覧会の記事だけに「会場」という言葉に違和感が無いから危険度大です。
「さすがにこれは分かったよ~。それにこんな言葉、ESで使わねーし!」「変換ミスなんてパソコンだからでしょ? WEBエントリーならまだしも、手書きなら大丈夫!」なんてうそぶいているあなた。ではこれはどうですか?
・「以外/意外」の使い分け
・「務める/努める(勉める・力めるとも)/勤める」の使い分け
・「追及/追求/追究」の使い分け
・「更生(甦生とも)/更正/厚生」の使い分け。更に「後生/後世」の使い分け
これらは手書きでも悩む人が多いのでは? 全部正しくできたら大したもんです。ぜひ弊社校閲センターを受けてみて下さい。ん、答え? 辞書を引け!(笑)
以前も(というか何度も)書いたと思いますが、就活において「適切な」日本語を使うことは大前提です。就活が「ビジネス」の世界、要は「オトナ」の世界に入門するための入り口である以上、そこで使われる言葉は最大公約数的な「共通言語」でなくてはならないのです。敬語もそうですし、「正しい」文法を使うこともそう。そして誤字脱字をしないことも。
では実際、どうやればそういった「ミス」を救うことができるのか。まさにそのための「校閲作業のテクニック」を次回にお話ししようと思います。