私事ではありますが、実は私も今日から「新しく」なりました。2年間席を置いた教育総合本部から、古巣である編成局校閲センターに戻ったのです。(残念ながらエイプリルフールではありません……)
「それに伴いこのコラムも終了」と思ったのですが、さすがに掲載開始から1年も経っていないのに終わるのはいかがなものかという使命感(!)と、私が「もう少し書きたい!」というワガママを押し通したことも合わせ、もう少し続けることになりました。これまでの毎週更新から原則隔週になりますが、改めてよろしくお願いします。
新聞製作の「現場」に戻るのは2年ぶりです。今まで通り「ことば」で皆さんの就活を支える方向性は変わりませんが、せっかく「動いている」職場に戻るのですから、日々の仕事で気になった「時事用語」など、ニュースの側面からも「ことば」を取り上げるのも面白いかな、などと考えています(編集長とダブらないようにしないと……ですね。笑)。
最近ちょっとご無沙汰の「アイドルから学ぶ」就活も、もちろん時々挟んでいきますので乞うご期待!
ちょっと前置きが長くなりました。というわけで今回は私が10年以上にわたって携わってきた「校閲」の話をしようと思います。
そもそも皆さん「校閲」という言葉を知っていますか? 新聞社(や出版)志望の方はさすがに知っているかもしれませんが、他業種志望の方にはちょっとピンと来ないかもしれませんね。
辞書を引くとこう書いてあります。
*しらべ見ること。他の人の文章・原稿などに目をとおして正誤・適否を確かめること。(広辞苑)
*印刷物や原稿を読み,内容の誤りを正し,不足な点を補ったりすること。(大辞林)
*文書や原稿などの誤りや不備な点を調べ、検討し、訂正したり校正したりすること。(デジタル大辞泉)
一番下に注目。恐らく多くの方が知っている「校正」とは少し違うのです。
ものすごく大ざっぱに説明すると
・校正 = 元原稿と照らし合わせて「文字」の誤り・食い違いをただす(制作上起きたミスを直す)
・校閲 = 原稿を読んで「文字」「内容」の誤りを正す(事実関係の誤りも直す)
という違いがあります。
分かりやすい例として、ノンフィクション作家・石井光太さんが新潮社の校閲を絶賛した約2年前のツイートを引用します。
新潮社の校閲は、あいかわらず凄い。 小説の描写でただ「まぶしいほどの月光」と書いただけで、校正の際に「OK 現実の2012、6/9も満月と下弦の間」とメモがくる。 このプロ意識! だからここと仕事をしたいと思うんだよなー。
https://twitter.com/kotaism/status/330588815582433281/photo/1
小説内の日付に該当する夜空の月の状態を(当然当夜の天気も)調べた上でOKを出しているわけです。素晴らしい!
皆さんが書くES(あるいは大学で書くリポートや論文)は「筆者」が自分自身なので、正確には「校閲」することは出来ません(当然ですが、筆者以外の他人が見るからこそ意味があるのです)。しかし、誤字・脱字、あるいは思い込みから来るミスを防ぐために、「校閲の技」を応用することは可能です。また、我々校閲者が長年の蓄積で身につけた「書き手が陥りやすいワナ」を知ることで、更にそのミスを減らすことができます。
何度も書いたと思いますが、どんなに良い主張や熱い思いがあふれるESを書いても、誤字・脱字や事実誤認があると評価はガタ落ちです。そんなもったいないことが起こらないよう、次回は具体的なテクニックなどを話したいと思います。