言葉マイスター ナカハラハラハラ 略歴

2015年03月25日

主張、シンプルに ~見出しについて・その2

 前回に続き、「見出し」の話をします。そもそも新聞や雑誌において、「見出しを付けること」にはどんな意味があるのでしょうか。いくつかありますが、

 ・長い文章(本文)を要約する
 ・読者の興味や関心を引く
 ・一番大切なこと(主張したいこと)を抜き出す

 などが代表として挙げられます。まさにES(あるいは論文など)でも応用がきくのがよく分かると思います。その上で、「見出しらしく」するための技をいくつかお伝えします。

 (1)助詞を省く(「は」「が」「の」「に」「へ」「を」など)

 ・「10年続けている水泳で忍耐力がついた」 → 「10年続けた水泳、忍耐力生む」
 ・「語学留学でアメリカに半年滞在」 → 「語学留学 半年アメリカ滞在」
 ・「サッカーや野球や陸上で育んだ精神力」 → 「サッカー・野球・陸上 精神力育てた」
 
 主格を表す助詞「が」「は」を省くために、読点(、)で代用するのも効果的です。一番上がその例。一番下のように、並列を中黒(・)で表すのも、ひとかたまりになって分かりやすくなります。
 ただし字数を減らすことに力を注ぎ過ぎると、漢字が増える(平仮名である助詞が減るから当たり前)結果、文が硬くなりがち。そこは十分注意しましょう。

 (2)体言止めを活用する

 ・「秘書検定1級合格に照準を合わせる」 → 「秘書検定1級 合格に照準」(動詞を省く)
 ・「秘書検定1級に合格した」 → 「秘書検定1級に合格」(動詞の活用語尾を省く)
 ・「秘書検定1級合格が確定的になった」 → 「秘書検定1級合格 確定的」(形容動詞の活用語尾を省く)

 特に2番目は「見出し感」が強く出ますね。以前とりあげた「漢語+する」(文章ではなるべく避けよう、と書いたやつです)のパターンから「する」を抜けば、このスタイルの一丁上がり。

 (3)アルファベットやカタカナをうまく使う

 ・「サークルのホームページを独学で構築」 → 「サークルのHP 独学で構築」
 ・「合唱コンクールでメンバーをまとめ優勝」 → 「合唱コン メンバーまとめV」
 ・「サッカーワールドカップは毎回現地で観戦」 → 「サッカーW杯 毎回現地観戦」

 こちらも使いすぎは禁物。特殊な略語だとそもそも読み手に通じませんし、以前も書いたと思いますが、「本文は正式名称」が大原則です(「バイト」は良くないという話、以前しましたよね)。

 (4)大事なことを前に出す(倒置にする)

 ・「登山サークルで磨いた忍耐力」 → 「忍耐力 登山サークルで磨く」
 ・「学園祭会計として前年より大幅に支出を抑えた」 → 「学園祭支出 会計として大幅削減」
 ・「飲食店アルバイトで鍛えられた会話力が武器」 → 「武器は会話力 飲食店アルバイトで鍛錬」

 これはそもそも「見出し」以前にESや面接の基本中の基本。まずは「言いたい(伝えたい)こと」を前に出す。聞かれたことの「答え」をとにかく最初に言ってしまう、にも通じます。

 どうですか? 以上四つは比較的「応用しやすい」技です。ぜひ参考にして下さい。
 ちなみに「そもそも見出しとはなんぞや?」という問いに対して私は

 <見出しは「和文和訳」である>

 と考えています。結局、記事にせよESにせよ、書かれたものの「中身」がしっかり頭に入っていないと見出しをつけることは出来ないのです。その大前提は忘れないようにして下さいね。

今週のおまけ ~強い印象を与えるんです。倒置法は。~

 (4)で書いた「倒置法」は見出しに限らず、インパクトを与える効果的な手段としてキャッチコピーやタイトルでもよく使われます。

 私は家ではずっとMacを使っているのですが、アップルコンピュータ(日本法人)のキャッチコピーの「あおり」のうまさにはいつも関心します。倒置法のうまい使い方の好例ですね。

 「青なら進め。どこまでも」(iMessageの速さをアピール)
 「すべてを変えていきます。もう一度。」(iPhone 4が発表された時)
 「大胆に編集しよう。元に戻せるので。」(音楽作製・編集アプリLogic Pro)

 小説だと、川上弘美さんの「光ってみえるもの、あれは」が印象に残っています。
 歌なら「飾りじゃないのよ涙は」(中森明菜)、「見上げてごらん夜の星を」(坂本九)、「帰れソレントへ」(ナポリ民謡)などなど。

 タイトルではなく歌詞の中となると、これはもう無数にあります。特に「メロ先」(メロディーを先に作ってからそこに歌詞を当てていく方法)で作られることが増えてきた昨今ではなおさらです。

 ♪会いたかった 会いたかった
 ♪会いたかった Yes!
 ♪会いたかった 会いたかった
 ♪会いたかった Yes!
 ♪君に…

 ご存じ、AKB48の「会いたかった」。「会いたかった 君に」とサビの最後になって“だれ”が分かる仕組みになっています。