まあこの「あさがくナビ」に登録している人たちなら、複数とは言わずとも、せめて朝日新聞は精読していますよね?(笑)
笑顔のプレッシャーはさておき、忙しい中でも新聞を読むコツの一つに「見出し読者になる」というものがあります。朝刊だとだいたい40ページ、情報量にして新書2冊分とも言われる記事を全て読むには、どんなに速くても1時間以上かかります。
ところが見出しをチェックするだけなら、速くて10分、慣れないうちでも15~20分あれば全ページのチェックができる。実に有効な手段です。
ちなみに私は約3年間、新聞紙面レイアウトをしたり見出しをつける部署(以前は「整理部」、今は「編集センター」と言います)にいました。その経験をもとに、この「見出し」を就活に生かせないか。ちょっと考えてみました。
まず思いつくのがESです。
ESには普通、いくつかの質問項目があります。全て文章で書いても構いませんが、「見せ方」の一つとして文章の冒頭に「見出し」をつけるやり方があります。そこに新聞の技を応用してみましょう。
新聞の見出しにはいくつかルールがあります。その中でも一番大切なことに
「本文に書いていないことは見出しにしない」
(記事本文に出てくる言葉を使う。同じ意味の言い換えはOK)
というものがあります。ちなみにこのルールを守らない見出しを「幽霊見出し」と言います。実態がないから、ですね(笑)。
ESで見出しをつける時も一緒。本文に「積極性」を示すエピソードが無いのに見出しに「積極的」などを使ってはちんぷんかんぶんです。中身と整合性(前回のテーマですね)が取れているか、よく確認を。
次に意識して欲しいのは「文字数」です。普通新聞の見出しは原則として9~13字程度に収まっています。私が編集者として新人のころ、上司に厳しく言われたのが
「見出しを読ませるな。見せろ」
ということでした。忙しい「見出し読者」は、記事をじっくり読んでいる暇がないからこそ、見出しで情報を集めたいわけです。なのに「熟考しないと頭に入らない見出し」をつけていては本末転倒。少ない文字数に情報をギュッと詰めて、まるで画像のように「見るだけ」で意図を伝えなければならない、ということなんですね。
ESの見出しも一緒。人気企業には万単位のESが届きます。採用担当者がES1枚に目を通す時間は2~3分、短い人は1分程度といいます。それなのに「文章」のような見出しをつける人が割といます。例えば
「1カ月の短期語学留学で得た積極性。少ない時間を工夫でカバー」
のように(よく見るでしょう?)。体言止めは見出しらしくていいのですが、いかんせん長い。
これに似たもの、ESだけではなく学級通信やミニコミ紙なんかでもよく見ます。厳しいことを言わせてもらうと、我々「プロ」からすると「ダサい」。これなら見出しにしなくても、普通に地の文で書いてしまえばいいですよね。
私ならせめてこうします。
「短期留学で得た積極性」
「語学留学で得た積極性」
後半は要りません(もちろん本文にはその要素入れて下さい)。「1カ月」は「短期」とほぼ同じ意味。どちらかがあれば十分(こちらも本文でちゃんと「1カ月」のデータは落とさないこと)。
あなたの売り(積極性)が「期間」より「語学」で培われたのなら、「語学」の要素を生かしましょう。
ちなみにもし「語学」をアピールしたいなら、私なら
「仏語留学で~」(独語留学で~/英語留学で~)
とするかな。同じ文字数でも情報量が多くなるでしょう?
もっと言えば、上の二つですら重い。私ならこのくらい思い切ります。
「積極性 留学でゲット」
「一番言いたいことは前に持ってくる」というルールも見出しでは重要です。いわゆる「倒置」ですね。あと、「助詞はなるべく省く」(この場合「を」)。これでグッと見出しらしくなります。
「得た(獲得)」を「ゲット」とカタカナ言葉にしたのは、上記した「見せる」ことを重視した結果。漢字が続くと読みにくいのです。
もちろん、そのせいで「短期」「語学」の両要素が落ちたので功罪ともにあるとは思いますが……。
次回は具体的な例を使って、更に「見出し」らしくする技をお伝えしようと思います。