以下の文章を見てみましょう。
1:A国では景気が悪化したのに伴い、政府が弱体化した。
2:相互経済協力をめざし、二国間で交渉を行うことになった。
3:五輪を開催するため、意見を交換した委員会が終了した。
いずれもカチッとした文章です。しかし、いずれも更に「やさしく」そして短くすることが出来ます。
1:A国では景気が悪くなり、政府の力が弱くなった。
「~化する」。つい使ってしまいがちですが、結局は「~(な状態)になる」だけのこと。「悪化」や「激化」くらいならともかく、「深化する」などは「深まる」で十分ではないですか? 更に「深化」は「進化」と同音異義語なので、面接では相手に一瞬どちらなのか考える時間を取らせてしまいます。意思疎通、という観点からすればそのタイムラグは不利ですよね。
2:相互経済協力をめざし、二国間で交渉することになった。
「~を行う」。恥ずかしながら、新聞記者が大好きな言葉の一つです。しかしながら、その大半が無意味です。「行う」を外しても全く問題ありません。
会談を行う → 会談する
作業を行う → 作業する
支援を行う → 支援する
3:五輪を開くため、意見を交わした委員会が終わった。
2の発展形とも言えるかもしれません。「漢語+する」を和語にしました。「漢語+する」で動詞をつくるのは日本語の便利な機能ですが(それゆえに変な動詞も時々耳にします)、実際のところ「~する」と全く変わらないことが多いものです。何となく文字面の重々しさにつられて(要は格好をつけるためだけに)使いがち。
完了する → 終わる
拒否する → 拒む
削減する → 減らす
実施する → する
始動する → 始める
設置する → 設ける
売却する → 売る
販売する → 売る
表明する → 言う
要求する → 求める
例をあげたらきりがない。「いくらでもリストにでき」ますね(前回のおまけ参照。笑)。
何度もこのコラムで言ってきましたが、自分をより良いものに「しよう」とするための背伸びは大切です。ここで皆さんにお話ししている「若者言葉を使わない」などはまさにそれに該当する……おっと「当てはまり」ますね。ただ、良いものに「見せよう」とするのは無意味どころか危険でしかありません。着慣れない服を無理して着ても滑稽なのと同じ。漢語を使って「格好良く」見せる程度の格好良さなんて、しょせん底の浅いものです。
それだったら使い勝手の良い平易な言葉で、内容の詰まったことを書き(話し)ましょう。
「やさしく」書く(言う)ことは、以上のような「心構え」の側面だけではなく、実利的でもあります。上の例を見てもらえれば分かりますが、ほぼ字数が減っています。減った字数の分、データをより充実させるのに使えます。またESを長く書いて削っていく際、この方法はきっと役立つはずです。
そうやって書いたESは間違いなく、読み手にとって「優しい=読みたくなる」ものになっているはずです。