ESでも面接でも「具体的に」書く(話す)ように、とよく言われると思います。ある意味「耳にタコ」かもしれません。
私は現在の職場・教育総合本部に異動してきて2年弱になります。その間に就活生の皆さんのESや作文を合わせて1000通以上見てきました。また朝日新聞が就活生の皆さんを応援する「朝日学生キャリア塾」では、100人以上の模擬面接をしてきました。そこで感じるのはまだまだ皆さんの多くが「抽象的」だということ。
では「具体的」の対義語である「抽象的」とはそもそも何なのか。ESや面接で言うと、
・代わりがきく = 書き手(話し手)ではなくても、誰でも書ける/どこにでもある話
・追体験できない = 書き手(話し手)の体験した情景を他人が描けない
ことだと思います。
ESは「私小説」、面接はあなたの「ドキュメンタリー」です。それはどういうことか。就活生の皆さんが複数集まった時にいつも私が言うのが
「ESに書いた内容を手書きではなくテキスト形式で書き、無記名で全員分プリントアウトする」
「複数枚集まったそのESを、書き手以外のあなたの親友に見せて、あなた自身のESを当ててもらえないようなESはダメ」
ということです。つまり、名前という記号ではなく「書いている中身」そのものに「あなた自身」が透けて見えないとダメなのです。
では具体的には(キター!)どうすればいいのか。よく言われるのは「5W1H」を書くことですね。そのための手段を二つ教えます。そこを意識するだけでグッと中身が良くなります。
その1。修飾語ではなく数字で語れ(データ主義)
丁寧に書いているつもりで陥りがちなワナです。あなたは知っていても他の人には伝わりません。
・小さな頃から → *歳から/小学*年生から
・長年~ → *年間にわたり/*歳から始めて今まで
・大きく成長した → 英検のような資格なら「*級を取った」(TOEICなら「*点」。「元々※点だった」という成長度合いが分かると更に良い)/運動系なら記録(タイム、大会*位、段位……)/芸術系でもコンクールの結果など
「数詞」を常に念頭に置くのも大事です。
・私が部長になってから新入部員が大幅に増えた → 何人なの?(前年は何人だった?)
・映画好きで暇さえあれば見ている → 月何本?年間何本?
・自転車旅行が好きで、日本の都道府県はほぼ制覇しました → いくつ行った?(残りはいくつ?)
その2。詳細であればあるほど良い。最終的には固有名詞をめざせ
この話をするとき、いつもたとえに挙げるのが「ラーメン作文」です。「ラーメンを食べた」では伝わらない、ということ。
・いつ = 昨夜 → 昨日の午後11時ごろ
・どこで = ラーメン屋で → 「ラーメン太郎」で → 「ラーメン太郎」新宿歌舞伎町店で
・誰が(誰と)= サークルの友人と → 大学のテニスサークルでペアを組んでいる佐藤君と二人で
・何を = ラーメンを食べた → 豚骨ラーメンを食べた → お店イチオシの「野菜全部乗せチャーシュー5枚乗せニンニク増量」豚骨ラーメン(ギョーザ・半チャーハン付き)を食べた
・どうした = 満腹になった → 「15分完食で無料」キャンペーンに挑戦したが、残念ながら1分超過で果たせず。分量的には満足だった
ラーメンはあくまでたとえです。ES(や面接)に置き換えられます。例えば……
・語学留学の体験 → どこの国、どの街、ホストファミリーの家族構成は(もちろん1で書いたように数字=「期間」も忘れずに)
・リーダーシップがとれる → 3年次の学園祭で渉外部長を務め、お笑いタレント「****」さんを呼んだ。謝礼は相場の半額、**万円で済んだ
などなど。
結局のところ「あなた」しか体験していないことを書くことが「具体的」ということです。
冒頭3段落目の私の体験。もう一度よく読んでみて下さい。
最後に。これはあくまで「個人的な」意見ですが、就活は恋愛に通じるところがあると思っています。ESがラブレターなら、面接はデートでくどく場面。
そこで「誰でも言うような」事を書いても(言っても)心には届きません。「自分だけの」言葉、そして徹底したディテールが勝負のカギです。
これまた個人的な考え方かつ、いかにもオッサンやと笑われるかもしれませんが、私が女性を褒めるときに心がけているのが「パーツを大事にする」こと。
「どこが好き?」と聞かれて「全部」と言うようではアウト。髪形、アクセサリー、香水、バッグ……。それはすなわち「細部にまで関心を持っていますよ」という意思表示にもなるのです。
面接で「御社のチャレンジ精神に共感して!」なんて言っても相手に響きません。じゃあそのチャレンジとは何なのか。具体的な商品名、その特徴、他者と比較して優れているところ……。そういったことを挙げましょう。