ちなみに往路は1日の夜に夜行バスで東京を出発したのですが、ニュースにもなった大雪のため、本来の予定(約9時間半)を大幅に超える18時間半もかかって関西に着きました。さすがにヘトヘトになりましたが、これも良い経験と思うあたりは新聞記者、そして「このネタでしばらくウケ取れるな……」とほくそ笑むあたりは関西人の性です(笑)。学生の皆さんも就活で長距離バスを使うことが多いと思いますが、くれぐれも天気予報(自分の住んでいる地域だけではダメですよ)には気をつけて、余裕を持ちすぎるくらいの気持ちで移動してくださいね!
さて、年明け一発目で久しぶりの更新ですから、ウォーミングアップをかねて皆さんの言葉力チェックといきましょう。
次の五つの文章のうち、本来の意味や言い方で使われていないものがいくつかあります。いくつあるでしょうか。
・紅白歌合戦で気になった歌のタイトルが思い出せない。イントロのさわりは分かるんだが。
・元旦の夜は故郷で高校時代の友人と会い、大いに語り合った。
・初夢は、あわや内定獲得という良いものだった。正夢になるように頑張るぞ。
・今年は年明け早々降ったりやんだり、いやな雨模様だったなあ。
・最終面接に向けてやれることはすべてやった。準備は万端だ。
正解は……なんとすべて誤用・俗用です。
*「さわり」は元々浄瑠璃の用語です。曲中一番の聴きどころを指します。そこから転じて「聞かせどころ・見どころ」の意味になりました。「導入・イントロ」の意味ではありません。
*元旦の「旦」は本来「朝・夜明け」の意味です。したがって「元旦」だけで「元日の朝」という意味です。「元旦の朝」ではダブりになりますし「元旦の夜」では意味不明ですね。しかし最近では「元旦」を「元日」の意味も含めて載せている辞書も増えてきました。
*「あわや」は「危うく……するところ」という意味で使う言葉です。良い事に使うのは適切ではありません。皆さんが内定したくないのなら構いませんが、そんなことはないですよね。
*「雨模様」は「雨が降りそうな様子」が本来の意味です。降ってしまっては使えません。
*「万端」は「ある物事についてのすべての事柄」。「準備万端」だけでは「準備が全て整った」意味にはなりません。「準備万端が整う」が正しいです。しかし「準備万全」なら構いません。「万全」は「全てに完全で手抜かりがないこと」の意味だからです。
いかがでしたか? 「え……全部間違って使っていた……(汗)」と年明け早々、不安な気持ちにさせたならすいません。
実際、1問目の「さわり」は、文化庁の「国語に関する世論調査」(2007年度)によれば、「話などの最初の部分のこと」と考える人が半数を超えています。年代別調査でも、なんと全ての年代で本来の意味ではない方を選んだ人が多いという結果が出ています。
<ご参考:文化庁月報 >
そうやって考えると、この「さわり」は今や本来の意味で使っても「伝わらない」可能性の方が高い、ということになってしまいますね。とは言え「なーんだ、みんなそうなら安心じゃん」と思うなかれ。「自分の思っていることをそのまま相手に過不足なく」伝えることは難しいんだ、という、ある意味「恐れ」を持ってほしいのです。
ほんの小さな「認識のズレ」が大きな誤解を生む。日常生活でもしばしば見受けます。誤解を解けるチャンスがあればよいですが、面接などの一発勝負でそれをやってしまっては取り返しがつきませんよね。過度に萎縮する必要はありませんが、就活においては常に、自分の言葉に「明確な意図と責任」を持つよう心がけて下さい。
最後にひとつ。今日のタイトルにもネタを仕込みました。「ことばマイスター」という肩書、私自身は正直重荷というか面はゆいのですが、「役不足」という言葉でその気持ちを言い表せているでしょうか? 正解は次回に。