あきのエンジェルルーム 略歴

2015年09月10日

ワインに学ぶ 「社畜」にならないコツ ♡Vol.51

 いつも心にエンジェルを。

 このところ、経済誌や週刊誌、テレビ番組などで「社畜」という単語をよく目にします。日経ビジネス(8月3日号)のタイトルは「社畜卒業宣言」、「AERA」(8月31日号)には、20代後半男性の「社会のヒエラルキーの最底辺にいるのは、精神が摩耗した社員、つまり社畜」という刺激的なコメントがありました。
 就活中のみなさんのなかには、社員を「社畜化」するような、たとえばブラック企業などをどうやって見分けたらいいのか、悩んでいる人もいるのではないでしょうか? 

 ある程度、共通した定義はあるにしろ、ブラック企業の判断基準は人それぞれ違います。Aさんにとっては休みも十分もらえず死ぬほどつらい会社が、Bさんにとっては忙しいけど働きがいのある会社かもしれません。だからこそ入社前にはなかなか判別しにくいのです。でも、入社後、自分の職場がブラックかどうか、その基準に悩む必要はありません。最終的には自分が決めていいのです。
 「死ぬほどつらい」と思ったなら、その会社はあなたにとってブラックなのです。
 ここでも何度か引用しているように、私は短歌を読む(文字通り読むだけ)のが好きなのですが、働く女性(男性も!)の悲哀を自虐的に描く秀逸な短歌を詠む(作るほう)人がいます。
 鯨井可菜子さんという31歳の歌人です。デザイン会社での会社員生活を経て、今はフリーの編集者をされているそうです。2013年に書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)という、福岡の出版社から新鋭短歌シリーズとして「タンジブル」という第一歌集を刊行しました。その中から、いくつか作品を紹介したいと思います。
ほがらかに「社畜!」と囃(はや)す友といて 口角少し持ち上げている

 気の置けない友人に、「最近つきあい悪いんだから」「働き過ぎじゃないの!?」とからかい半分で言われたのでしょうか。反論できない自分がいて、小さくショックを受けている。「傷ついてないもん!」と懸命に笑顔で受け流そうという気持ちが「口角」の力み具合によく表れています(勝手な解釈ですが)。私自身、友人から「社畜!」と言われたことはないですが、忙しい日が続くと、「もっと自分の時間を大切にしないといかん」とこの短歌を思い出して反省しています。
 「タンジブル」には他にもクスッと笑えて、じわーっと身につまされる作品がいろいろあります。

くらやみに浮かぶ画面よ千件の未読メールがわたしを責める
 もはや解説はいりませんね。ちなみに私個人の最高記録は週明けの683件でした。

 会社に都合よく使われても忠誠を誓い、使い捨てられて初めて自分が「社畜」だったと気付くような切ない社会人には、だれだってなりたくない。でも一方で、入社してせめて2、3年はその企業での適応能力を高めるために、がむしゃらに働けという「社畜のススメ」もよく耳にします。確かに現実的に考えると、スキルなしに上司や同僚に反発してばかりの新入社員に向けられるまなざしは厳しいものかもしれません。
 だからこそ、就活では「この学生は精神的に打たれ強いか」「期間限定であれば多少の無理が利くか」など、いろんなところで企業は自社への適性を判断しています。しかし、社員側の視点で考えると、我慢しているうちに、「いったい自分はどこまでがOKで、どこからがNGなのか」、感覚が麻痺してしまうかもしれません。それが一番危険です。
 私が実践している社畜予防のポイントとしては、

①言われたことをやるだけの社員にならない (単調な仕事にも自分なりの創意工夫を)
②会社の外での交流を大事にする(自分の会社だけでしか通用しない価値観に染まらない)
③自分の気持ちをリセットできる(フラットにする)魔法のツールを持つ――の3つです。

 いずれも人生に複数の選択肢と判断基準をもつために必要なことですが、もっとも私が大切にしているのが③です。忙しいという漢字は「心を亡くす」と書きますよね? 目の前の仕事を片付けることに集中しすぎて思考停止してしまいそうなとき、会社の上司の言動が理不尽な気がするのに「まあいっか」と思ってしまったとき、つまり自分の心や感覚がいろんな意味で麻痺してきたなと思ったとき(職場の名誉のために言うと、めったにこういう瞬間はありませんが)、「正気」を取り戻すための魔法のツールをもつことです。就活中にも役立ちますので「これだ!」というものを確保しておきましょう。
 もちろん一つである必要はありません。ペットの写真、家族の声、なんでもいいのです。できれば、偉い人の格言よりは、「本能」「五感」に訴えるものがいいですね。
 考えたけど自分には何もないなあ、と思った人もいるでしょうし、「心の悲鳴」を感じたとき、あいにく手元には何もなかった、ということもあるでしょう。

 そんなときにワイン好きの私からのアドバイスがあります。いろんなワインの香りを続けて嗅ぐと、どんな人でも次第に嗅覚が利かなくなってしまいます。そんなときにワインのプロはどうするのか。自分の肌(手の甲や腕など)のにおいを一回嗅いで鼻をリセットするのです。不思議なほど、次のワインの香りをクリアに受け止められるようになります。
 家に帰るとホッとするように、自分の匂いは心を落ち着かせます。自分の体臭なんて、と思う人は、お気に入りの香水を見つけて、それを自分の匂いとして脳みそにすりこませればいいだけです。感覚の麻痺だけでなく、悲しみや怒りなど感情がだだ漏れしそうな時にも有効です。

 だまされたと思ってぜひ試してみてください。