なおこの就活道場 略歴

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2016年08月24日

玉砕・M-1グランプリ予選 大切なのは「練習」と「素」だ!(番頭フッキーの「就活イヤァオ!」最終回)

 まいど! 「なおこの就活道場」番頭のフッキーです。毎回、就活生の陥りがちな悩みを「イヤァオ!」と一刀両断する言葉をお届けいたします。

 2017年卒の就活はまだまだ続いていますが、「インターンシップ」という形で大学3年生(2018年卒生)の就職活動も実質的にスタートしています。来年の就活に関しては今年と同じ「3月情報解禁、6月面接開始」のスケジュールで進みそうですが、今年以上にインターンシップと就活との連動が(建前はともかくとして)さらに進む予感がしています。なにごとも早期のスタートが肝心。「悩むまえにまず行動!」を心がけてください。一方で、焦りも禁物です。まだ4年生の就活も続いているくらいですから人がほしい会社はたくさんあると考えて、この就活を自分の人生をしっかり考えるきっかけにしてほしいものです。

 私こと番頭フッキーもこれまでこのコラムや朝日新聞の就活セミナー「朝日学生キャリア塾」で大学生のみなさんにいろいろ偉そうなことを書いたり言ったりしてきました。しかし、自分で実行できないことを人にやれやれと言っても伝わるはずはありません! 大切なのはまず実行、ということで私もさる8月上旬、漫才の日本一を決定するグランプリ「M-1グランプリ2016」の予選に参加してまいりました。

就活も漫才も一緒だ!

 一体なにがどう就活と関係するのかと思われるかもしれませんが、人前でおおいに恥をかき、何らかの審査をしてもらうという経験は就職活動に重なるところがあります。以前「あさがくナビ」のキャンペーンキャラクターを務めていただいた女優の高畑充希さんは、就職活動について「オーディションは毎回就活を経験しているようなもの」というお話をされていました。よかった、うまいこと理屈がつきました。

 漫才は1人ではできません。会社の後輩を誘いまして、まずはネタ作りから。これはいうなれば「エントリーシート作り」に相当する作業です。仕事が終わってからこっそりと2人で某所に集まり、ぼそぼそとアイデアをいいあいます。

 「やっぱり、ニュースネタがいいかな」
 「今年は謝罪会見が続いたから、ヘンな謝罪会見をするとかどうですかね」
 「SMAPはなくなるけどSTAPはあります、とか」

 エントリーシートはできるかぎり提出前に人に見せて、フィードバックをしてもらわないといけません。我々も思いついたボケを並べて台本をつくり、知人に一度見てもらいました。背中にかいたことのない種類の汗が流れるのを感じる瞬間です。

 「うーん、途中のボケがわかりにくくない?」
 「あと、すごい早口だね。焦りが伝わってくる」
 「もっとシンプルなネタにしたほうがいいよ、余計なボケを挟まずに」

 いろいろ容赦のないアドバイスをもらい、かなりネタを書き直すことに。結局、都知事選をいじるネタに切り替えて台本が完成したのが出場の一週間前でした。それからは仕事終わりに30分と時間をきめて集合し、制限時間2分におさまるようスマホのストップウオッチを見ながら「それにしても都知事選盛り上がりましたね」「でも、たぶん僕が選挙でたほうがよかったですよ」といった具合に2人でネタを繰り返します。本番は緊張するに決まっているので、仮に意識が飛んでもセリフだけは口から出てくるようにしておかないといけないのです。
 就活の面接ではここまで台本通りにしゃべると逆に「素が見えない」と思われてしまうのですが、志望動機や自己PR、大学時代がんばったことといった定番の質問についてはあまり考えずに口から出てくる程度には練習しておくと本番の緊張を乗り越えられる、と思います。

唯一受けたのが……

 当日はスタート3時間前、東京・新宿の予選会場近くにあるカラオケボックスに集合。1曲も歌わずにネタを何度もリピートし、この欄でも重要だと繰り返してきた「発声練習」もマイクを使ってやりきりました。「寝言でもネタが言える気がするわ~」「1回戦突破したら会社に言わんといけませんね」と意気揚々と会場に入り、舞台袖にスタンバイ。前のコンビのネタが聞こえてきます。

 「いやー、それにしても都知事選盛り上がりましたね~」
 「でも、あんな都知事だったら僕がやったほうがましだよ」

 おや、我々の漫才台本がいつのまにか盗まれたのかな? と思うほど完璧にネタがかぶっています。もちろん細部は違うとはいえ、この日117組もの参加者がいる中でよりによって都知事ネタが前後でかぶるとはどういうことでしょう。ふと振動に気づいて下を見ると、比喩ではなく手が震えていました。

 私は登場早々、「大変すみません、都知事ネタがかぶりました!」と宣言してみました。なんということでしょう、その瞬間かなりの笑い声があがったのです。そして後に振り返れば、この時が私たちが舞台上で笑い声を聞いた最後となりました。繰り出すボケに寂(せき)として声ひとつあがらない舞台の上で次第に頭の中は白くなってゆき、あれだけ豪語していたにもかかわらずネタを途中で忘れる始末。ネタ後半からの記憶はほとんどなく、気づけば新宿駅南口に2人で呆然と立っていました。結果? 聞きますかそれ?

 しかし、こんな無謀なチャレンジでも得るものはありました。練習と平常心、そして最後には素を出すことが大切であること。みなさんもこれから集団面接で、「先に答えたやつが自分のネタとかぶった!」という経験をたくさんするでしょう。そういう時は、思い切って自分の素をぶつけるしかありません。
 それにしても、これまではずいぶん上から目線で指導してきましたが、自分でやってしみじみ「就活生は大変だ!」と実感しました。アマチュアでもしっかりネタを作り、1回戦を突破しているコンビはいます。やってやれないことはない。自分の結果を棚にあげてそんなことを思う今日このごろです。

悩まず前進を!

 さて、1年半近く番頭をつとめさせていただきました私フッキーですが、8月いっぱいをもってお役ご免となることになりました。みなさんのお力になれたかは甚だ疑問ではありますが、ご愛読いただき本当にありがとうございました。みなさんが悩まず前進することでよりよい就活生活を送り、社会を変革する人材として羽ばたいていくよう祈念いたしまして、最終回の言葉と代えさせていただきます。それでは最後に皆様ご唱和いただけますでしょうか。就活に悩んだら、答えはこうだ、イヤァオ!

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