2014年10月14日

号外・「ノーベル平和賞にマララさん」で世界を考える

テーマ:国際

ニュースのポイント

 今年のノーベル平和賞は、パキスタンの女子学生マララ・ユスフザイさん(17)と、インドの児童労働問題の活動家カイラシュ・サティヤルティさん(60)の2人に贈られることが決まりました。2人の功績と、世界の子どもの教育や労働の実態、インド・パキスタン関係について考えます。

 今日は朝刊の発行がお休みのため、11日(土)の記事から1面トップの「マララさん 平和賞/すべての子に教育 奮闘/17歳、最年少ノーベル賞/インド活動家 サティヤルティ氏も」を取り上げます。
 記事の内容は――ノルウェーのノーベル賞委員会は、2人の授賞理由に「子どもや若者への抑圧と闘い、すべての子どもの教育を受ける権利のために奮闘している点」を挙げた。マララさんは2009年、女子教育を否定するイスラム過激派の武装勢力タリバーンにおびえながら登校する日々を英BBCの現地ブログに仮名でつづり始め、やがて本名を明かし国内外のメディアで発信。2012年10月9日、学校からバスで帰宅中にタリバーンに撃たれたが、移送された英国の病院で奇跡的に回復した。今もすべての女子や児童への教育実現を唱えている。17歳での受賞はノーベル賞各賞を通じて最年少。
 サティヤルティさんはインドのボランティア団体「児童労働に反対するグローバルマーチ」を設立し、不当に就労させられている子どもたちを解放する運動を続けてきた。奴隷のような状態で働かされている子どもたち8万人以上をそうした境遇から救い出しているという。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 「私は誰も憎んでいない。タリバーンの息子や娘たちに教育を受けさせたい。本とペンを手に取ろう。一人の子ども、先生、本とペンが世界を変える」

 昨年7月、国連での演説でマララさんが述べた忘れられない言葉です。暴力に言葉の力で立ち向かう姿は世界で称賛されました。国連によると、戦争、貧困、児童労働などが理由で初等教育を受けられない子どもは、2011年現在で5700万人いて、うち少女は3200万人に上ります。一方、サティヤルティさんが向き合う児童労働も深刻です。国際労働機関(ILO)によると、世界で労働に従事している児童(5~17歳)は2012年に1億6800万人。地域別では、アジア太平洋地域が最も多く、全体の9.3%にあたる7800万人が働いています。サハラ以南のアフリカでは2割以上の児童が働いています。

 マララさんとサティヤルティさんは受賞決定後、パキスタン、インド両国の首相を授賞式に招こうと電話で話したそうです。両国は1947年、植民地支配していた英国から分離して独立しましたが、北部のカシミール地方の領有をめぐって対立。3度の戦争をし、競うように核兵器を保有しました。両国とも核不拡散条約(NPT)には加盟していません。インドのモディ首相は5月の就任式に、史上初めてパキスタンの首相であるシャリフ氏を招き対話姿勢を見せましたが、その後、境界線付近での対立が続き、今月初めにも砲撃戦で21人が死亡しています。印パ両国の2人のノーベル平和賞の共同受賞が両国関係の改善につながることを願います。

 ノーベル平和賞は、世界の現状を知り、日本の平和をかみしめるよい機会でもあります。マララさんについては1年前に平和賞候補になったときにもこの欄で取り上げ、「『銃撃乗り越えたマララさん』で考える教育と平和」(2013年10月10日)と書きました。みなさんも、平和な日本で教育を受けてきた自らを振り返りながら、世界に思いを馳せてみてください。

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