2013年10月10日

「銃撃乗り越えたマララさん」で考える教育と平和

テーマ:教育

ニュースのポイント

 明日発表のノーベル平和賞は、パキスタンで「すべての子どもに教育を」と唱えて武装勢力に頭を撃たれたマララ・ユスフザイさん(16)が受賞するかどうか注目されています。そんなときに、日本の大人の能力が世界一という国際成人力調査の結果が報じられました。日本の義務教育の成果ですが、平和でなければ得られなかったことに改めて気づかされました。この機会に、教育と平和について考えてみてください。

 今日取り上げるのは、国際面(12面)の「マララさん銃撃から1年/襲撃予告 変わらぬ緊張」と1面の「天声人語」、教育面(34面)の「成人力 日本は得点差最小/国際調査で1位に」です。
 記事の内容は――
◆マララさん銃撃事件から1年。母国パキスタンではノーベル平和賞の候補者として関心が高まる一方、武装勢力は再び襲撃を予告するなど緊張が高まっている。
経済協力開発機構(OECD)が16~65歳を対象に、社会生活で求められる能力を調べた結果(国際成人力調査)、24カ国・地域のうち、日本は読解力と数的思考力で1位になった。義務教育で学んだ基礎はしっかり血肉になっているらしい。人間が最大の資源という国。結果が良いに越したことはない。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 パキスタンの反政府武装勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)は、イスラム教の聖典コーランを極端に解釈し、女性が教育を受けたり、外で働いたりすることは「イスラムの教えに反する」として、2007年ごろから女子学校を破壊したり、女子生徒を脅したりしています。パキスタンでは約4割の女の子が小学校に通っていません。TTPにおびえながら登校する日々をブログにつづっていたマララさんは昨年10月、下校中にTTPに襲われて頭を銃で撃たれましたが、英国の病院に搬送され奇跡的に回復。マララさん支援の輪が世界中に広がり、ノーベル平和賞の有力候補になっています。TTPは再襲撃を予告しており、現在は英バーミンガムの学校に通い、自伝本「私はマララ」を英国などで出版しました。

 マララさんは9月に英国でこう演説しました。「ペンと本がテロを打ち負かす武器だ。読書と知識と教育が世界平和を創出する唯一の方法だと心から信じている」。さらに、貧困や児童労働が原因で学校に行けない子どもが世界には大勢いるとして「彼らが本を読み、学校に行けるように声をあげ、行動しよう」と訴えました。

 一方の「成人力世界一」。文部科学省は「学校や職場など社会の教育機能の高さが反映されている」と分析しています。日本の成績は上位と下位の幅が小さくて、「みんながけっこういい成績」で、中学卒業者の読解力はOECD平均の高校卒業者と同程度という結果をみると、とくに、誰もが当たり前に受けられる義務教育の成果だと言えそうです。

 ただ、世界に目を転じれば、こうした基礎教育を受けられる環境は決して当たり前ではありません。身近な平和のありがたさを感じつつ、世界の現状にも目を凝らしてください。マララさんは英BBCの番組でノーベル賞について「もし受賞できたら大きなチャンス」と言う一方で「賞をもらえなくても重要なことではない。私の目標は、(世界が)平和になり、すべての子どもが教育を受けられるようになることだから」と話しました。いずれにせよ、マララさんは話題の人であり続けるでしょう。「成人力世界一」も、教育のあり方や日本人の特徴などに絡めて当面話題になりそうなテーマです。こうした報道で考えを深めておくと、面接で定番の「最近気になるニュースは?」という質問にもすぐに答えられますよ。

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