ニュースのポイント
成長著しいアジアで日本の企業に「現地採用」される日本人が目立ってきています。日本と違って人口が増え、経済がぐんぐん成長しているので成果が上がりやすく、当事者は「やりがいがある」と言います。給料は日本より安いのですが、物価が安いから十分暮らせるそうです。現地採用という新しい働き方を選んだ先輩たちの話には、仕事の「やりがい」を考えるヒントがたくさん詰まっていますよ。
今日取り上げるのは、国際面(10面)の「働く アジアという生き方/現地採用@ジャカルタ/日本飛び出し やりがい発見/『成長途上にこそ、チャンスがある』アジアを旅して、未来が見えた。」です。
記事の内容は――神戸製鋼グループの商社「神鋼商事」のインドネシア現地法人(ジャカルタ)で働く武井宏幸さん(30)。マーケティングマネージャーとして日系の二輪車関連会社や建設会社などに鋼材を売り込む。現地法人は3年前にできたばかりで業務範囲は広く責任が重い。常に学び理解しなければならないが、「やりがいがある」と言う。英語に加えてインドネシア語も独学で勉強中。大学卒業後、日本でドラッグストアをチェーン展開する会社に就職。入社6年目で店長になったが、店長業務にもマニュアルがあり「この先、仕事が面白くはならない」と2011年に退職した。高齢化、人口減少、景気低迷の日本から気持ちは海外へ。フィリピンで英語を学んだあと、東南アジアを旅して求職し就職した。給料は少なくなったが、可処分所得は日本にいたときとほぼ同じだ。周りに現地採用組の25~35歳の日本人が10人ほどいて、商社、小売り、製造、サービスといろんな業種同士で情報交換。将来別の国で働くことも視野に「日本に帰るつもりは全くありません」と話す。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
仕事のやりがいは人それぞれですが、武井さんの場合、ドラッグチェーンの会社で「店長業務にもマニュアルがある」というのが一つのポイントでした。世の中にはマニュアルがあふれています。マニュアルがあれば効率的かもしれないし、その通りきちんとこなせばそれなりの結果を残せるでしょう。でも、武井さんはそれだけでは満足できませんでした。「すべてが経験」と話すように、武井さんの今の仕事に先例はなく自分で開拓していかなければなりません。その分大変ですが、武井さんは自分で考え、努力し、行動し、失敗しながら成長し、成果を上げることに、やりがいを見いだしたのです。
記事の後半では、アジアに進出する日本企業が増え、とくに東南・南アジアに住む日本人が10年でほぼ倍増したことなどを紹介しています。従来型の一時的な駐在員とは違う「現地採用」や「起業」が目立っており、日系企業は現地採用を増やしています。求められるのは、日本企業で働いた経験を生かした「即戦力」や現地社員と日本人社員をつなぐ「ブリッジ役」。企業にはコストを抑えられるメリットがあり、働く側も成長社会で成果を上げられ、やりがいが大きいといいます。
主に日本での就職をめざしているみなさんには、海外での日本企業の現地採用は、今は考えられないかもしれません。求められるのは「即戦力」ですから、日本の大学の新卒者を採用する企業もまだ少ないでしょう。でも、こんな働き方があることを知っておくと、就活するときの視野が広がりますし、「何のために仕事をするのか」を考えるきっかけにもなります。この記事は連載企画です。明日以降も注目してください。
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