(写真・国の財政をつかさどる財務省=東京都)
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(写真・国の財政をつかさどる財務省=東京都)
消費税率アップで税収もあがる
「税金」は、国と地方自治体(都道府県、市区町村)があつめています。国があつめる税金で金額が大きいのは「消費税」、「所得税」、「法人税」の3つです。消費税はものを買うときにかかる税金、所得税は個人の所得(おおまかにいえば、稼いだお金から必要経費を引いたお金)にかかる税金、法人税は企業などの「法人」の所得にかかる税金です。会社につとめて賃金をもらう人は多くが「源泉徴収」という形で所得税を賃金から天引きされているため、一番意識する税金は普段の買い物にほぼかならずついてくる消費税でしょう。
この「消費税」は、ご存じのとおり2019年度の途中に一部商品を除いて8%から10%にあがりました。このため、2020年度に消費税が所得税を抜いて、国の税収のなかでトップとなりました。景気が悪くても生活必需品の需要が急に減ることはないため、消費税は「景気に左右されない税金」と言われています。コロナ禍で景気が悪くなっても、消費税率があがったことできっちり消費税収はアップしたというわけです。昨年は円安や資源高の影響で記録的な物価高がすすみ、これも消費税収の増加に拍車をかけました。国が税収を増やした背景には、物価高によって国民の生活が圧迫されたという現実があることを押さえておきましょう。
円安や資源価格高騰で企業業績も伸び
消費税のほか、法人税も伸びています。円安や資源価格の高騰で商社では過去最高益の更新が相次ぎ、また運送業などの非製造業もコロナ禍からの復活をうけ業績が回復。法人税の伸びにつながっています。コロナ禍をもちこたえられなかった中小企業も多くあったはずですが、そういう企業はもともと赤字で法人税を納めていないため、税収への影響は小さいと言われています。法人税が伸びれば、株主への配当も増えるため、所得税の伸びにもつながっています。
従業員には恩恵ある?
3月の週間ニュースまとめでも触れていますが(続く大幅賃上げ、背景に激しい人材獲得競争【週間ニュースまとめ3月13日~19日】)今年の春闘では5月現在、平均の賃上げ率で30年ぶりの高水準が実現しています。物価高、企業業績の好転、そして人手不足が賃上げへの圧力につながりました。ただ、物価の上昇に賃金の上昇が追いつかなければ、実質的には賃金が下がっていることと同じになります。物価の変動を加味した賃金のことを「実質賃金」といいますが、現時点で賃金上昇は物価上昇に追いついておらず、実質賃金は当面、前年割れが続きそうだといいます。つまり、従業員にはまだ十分に恩恵は行き渡っていないのです。
また、大企業では景気のいい話が続いていますが、労働者の7割が働く中小企業の賃上げは「二極化」が指摘されています。連合の集計では、平均的な中小労働組合の賃上げ率は3.35%と近年にない高水準ですが、余力がないとして賃上げに消極的な企業も多いといいます。大企業より立場が弱く、原材料が値上がったからといってすぐに製品の価格を上げるわけにいかない企業が多いことも、賃上げ抑制につながっています。
今後さらに負担増の可能性も
まとめますと、過去最高の税収の背景には消費税収の増加=国民全体の負担の増加があり、企業業績も好転しているが、物価高を考えれば従業員が恩恵を受けられるには至っていません。また、予算規模を考えれば税収が伸びていても今後負担がさらに増える可能性も否定できません。就活や今後のライフプランを考えるうえで、自分が稼げるお金は負担の増加に耐えられるくらいになるのかについて、思いを巡らせてみてもいいかもしれません。
そして就職する企業を選ぶにあたっては、円安や物価高がその企業の業績にどういう影響を及ぼしているのか、従業員の賃金についてどのようにその企業が考えているのか、よく見極めることが大切です。何十年かぶりに賃上げのムードが高まっているなかで従業員の賃金を抑えようとしている企業には、何か理由があると考えていいでしょう。企業選びのひとつの要素にはなるはずです。
(写真・参院本会議で防衛費財源確保法が成立し、一礼する鈴木俊一財務相=2023年6月16日)
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