2021年12月24日

自動運転「レベル4」時代へ IT、エンタメ、保険…影響考えよう【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 朝起きて車に乗り、着替えて朝食をとりながら映画を見ているうちに会社に到着――そんな未来がすぐそこに見えてきました。警察庁が発表した改正道路交通法案の原案に、完全自動運転の一歩手前の「レベル4」実現に向けた内容が盛り込まれました。このレベルの自動運転が当たり前になれば、高齢者による悲惨な交通事故のニュースが減り、運転免許を返上したお年寄りも安心してどこへでも出かけられるようになります。車で移動中の過ごし方は大きく変わり、物流業界の人手不足は解消に向かうでしょう。モビリティーのあり方を根本的に変える自動運転ですが、関係するのは自動車や部品業界に限りません。IT、通信、エンタメ、保険など多様な業界が関わりますし、移動や輸送と無縁な会社はほとんどありません。新しいビジネスも生まれそうです。「自動運転」をキーワードに業界・企業研究をしてみましょう。(編集長・木之本敬介)

 就活ニュースペーパーは来週から年末年始のお休みに入ります。1月4日の「週間ニュースまとめ」から再開する予定です。SPI等の適性検査対策に取り組むなど、冬休みを有効に過ごしてくださいね。
●適性検査の大切さについては、「大東亜以下」のメール騒動…「学歴フィルター」はあるのか?【12月10日のイチ押しニュース】にも書きました。読んでみてください。

(写真は、ホンダが「レベル4」の実験に利用する自動運転の車両=ホンダ提供)

ホンダは世界初の「レベル3」発売→「レベル4」実験

 自動運転は5段階のレベルに分けられます(図参照)。2020年4月の法改正でレベル3の車が道路を走れるようになり、2021年3月にはホンダが世界で初めてレベル3の車を発売しました。レベル2まではシステムが人の運転を支援、レベル3ではシステムが自動運転しますが、緊急時には人が運転を代わる必要があります。今回盛り込まれたレベル4は、特定の条件のもとで車の操作をシステムがすべて担うもので、原案では遠隔監視装置を備えることや監視の主任者を置くこと、事故の際に人を派遣できる体制整備などの運行計画作成と都道府県公安委員会の許可を受けることを求めています。

 原案はレベル4のうち、バス型車両などで乗客を運ぶ無人自動運転移動サービスを想定したものです。政府は2022年度にサービスを始め、2025年度をめどに全国の40カ所以上で、2030年までに100カ所以上で実現する計画を策定。2025年にはトラックによる物流サービスや、自家用車の高速道路でのレベル4の走行の実現も目標にしています。世界ではドイツが2021年、レベル4を対象に法整備しました。

 ホンダはレベル3に続き、2020年代半ばの開始をめざすライドシェア(相乗り)サービス向けにレベル4の車両開発にも乗り出しています。まずは、自動運転に必要な高精度な地図をつくるための車両を一般道で走らせ、2021年からは自動運転の車両を使った実験を始める計画。実験は、ホンダの研究所のある栃木県芳賀町と宇都宮市で実施します。ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)と、同社傘下で自動運転を手がけるGMクルーズホールディングスの3社で自動運転車「クルーズ・オリジン」を共同開発中。4~6人乗りで、駅などから相乗りでそれぞれの目的地を回る利用などを想定しています。ホンダモビリティソリューションズの高見聡社長は「それぞれの地域にある、移動の困りごとを解決する役割を果たしていきたい」と強調しています。

ソニーもアップルも? トヨタは採用変える

 自動運転車の開発に取り組むのは自動車メーカーだけではありません。自動運転は電気自動車(EV)と相性が良く、「走るスマホ」とも呼ばれます。このため、電機メーカー、電子部品メーカー、IT企業が続々と参入。ソニーグループは人工知能(AI)や自動運転技術の開発に向けてEVの試作車をつくり、公道での実験を進めています。米国のアップルも「アップルカー」で参入するといわれています。

「ソニーの車」でどうなる? 自動車vs.電機・IT業界の未来【2021年5月28日のイチ押しニュース】も読んで見てください

 業界を超えた技術開発競争は、採用のあり方をも変え始めました。トヨタ自動車は、2022年卒採用で技術系に占めるソフトウェア系の人材の割合を、前年の約2倍に高めることを明らかにしました。技術系の採用ではこれまでエンジンや車体の開発を担う機械工学系の人材が多くを占め、2021年入社でも技術系約300人のうちソフトウェア系は約2割にとどまっていました。2022年卒ではこの割合を4~5割に引き上げる方針です。トヨタは、技術系の採用で長年続いてきた学校推薦制度も2022年卒から廃止し、ソフトウェア系など多様な人材が集まるようにすべて自由応募に切り替えました。応募職種を細かく分類し、学生の希望を聞いて採用する仕組みも整えています。

(写真は、高速道路で「手放し運転」ができるレベル2のトヨタ「ミライ」=2021年4月14日、東京都内)

志望業界は? 面接で語ろう

 完全自動運転が実現すると、世の中はどう変わるのでしょう。
◆人の不注意や居眠りなど人為的な事故はなくなり交通事故が劇的に減る
◆高速道のトンネルや坂道で発生する自然渋滞や事故渋滞が減り、車での移動が効率的になる
◆運転手の人件費がかからないため、タクシー料金が安くなる
◆長距離トラックが何台も連なって走る「隊列走行」などで輸送効率が良くなり、運送料が下がる。商品の値段が下がる可能性も
◆トラックの運転手不足が解消
◆高齢者や体が不自由な人が自由に移動できるようになる
◆公共交通機関を維持できない過疎地の移動手段を確保できる
◆移動中の車内が娯楽の場になり、車中でのエンターテインメントが盛んに

 事故が減れば、損害保険会社の主力商品である自動車保険のあり方も変わります。自分の関心のある業界・企業への影響を考えたり、新しいビジネスを思い描いたりしてみましょう。面接で語れますよ。

(写真は、無人で走る自動運転移動サービスの車両。遠隔監視室から周囲の状況を確認している=2021年11月28日、福井県永平寺町)

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