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新幹線「のぞみ」の台車に亀裂が見つかり、そのまま走っていればあわや大惨事という深刻な事態だったことがわかりました。首都圏の鉄道では架線が切れるなどのトラブルが相次いでいます。モノづくりの現場では、神戸製鋼所の検査データ改ざんや日産自動車の検査不正など、日本ブランドの信頼を揺るがす不祥事が続いています。人の命を預かる「安全」にかかわる仕事について考えます。(編集長・木之本敬介)
(写真は、台車に亀裂が見つかりJR名古屋駅に停車中の「のぞみ34号」=2017年12月15日撮影)
(写真は、台車に亀裂が見つかりJR名古屋駅に停車中の「のぞみ34号」=2017年12月15日撮影)
「あと3センチ」であわや大惨事
11日、博多発東京行きの「のぞみ34号」の車体と車軸を固定する台車に亀裂が入っていることがわかり名古屋駅で運行を取りやました。19日のJR西日本の記者会見では、亀裂は最長16センチに達し、あと3センチという破断寸前という「重大インシデント」でした。乗客は約1000人。もし高速で脱線していれば大惨事になっていたかもしれませんでした。半世紀前に新幹線が開業して以来、初の事態です。小倉駅を出たあと乗務員が異臭に気づきました。途中で乗り込んだ保守担当社員が異音を確認し、点検するよう提案しましたが、JR西日本の輸送指令の判断でそのまま走り続けました。新大阪駅で乗務員がJR東海に交代し、JR東海の輸送指令が「念のため」と確認を指示したところ、京都駅を過ぎたところで車掌が異臭を報告。名古屋駅で床下を点検し油漏れや亀裂が見つかりました。異変を察知してから約3時間走行後、名古屋駅で運行中止になり、乗客は後続列車に乗り換えました。
(図版は、のぞみ34号の台車のイメージ)
構造的な問題?
JR西日本は会見で「脱線など非常に大きな事故に至った可能性があった」との認識を示し、国土交通省の職員は「50年かけて築いてきた安全神話に傷がつかなければいいが」と語っています。JR東日本の京浜東北・根岸線では16日、架線が切れて列車が停止し約22万人に影響するなど鉄道を巡るトラブルが相次いでいます。国土交通省はJRや大手私鉄などの安全責任者を緊急に集め、安全意識を高める会議を開きました。石井啓一国交相は19日の会見で「背景には設備の老朽化・複雑化に加え、現場要員の高齢化や若手技術者の不足等の構造的な問題もあると考えられる」と述べました。
(写真は、JR京浜東北・根岸線で切れた架線=JR東日本提供)
日産、スバル、神戸製鋼、三菱マテリアル、東レ……
製造業では今年、不祥事が続きました。日産自動車やスバルで無資格者が完成車を検査していたことが発覚。さらに、神戸製鋼所、三菱マテリアルグループや東レ子会社で、出荷前の製品の検査データを改ざんしていたことが明らかになりました。製品は広く使われており、国内外の出荷先は安全性の確認などに追われています。「モノづくり大国」と呼ばれる日本の製造業は高い品質を誇り、その品質に支えられた新幹線は世界トップレベルの「安全神話」を築いてきました。メーカーも運送業も「安全・安心」がキーワードです。ところが今、メイド・イン・ジャパンの信頼を揺るがす事態が相次いでいるのです。何か共通の構造的な問題があるのかもしれません。
(写真は、東レ子会社のデータ改ざんについて記者団の取材に応じる経団連・榊原定征会長。東レ出身で現在は同社の相談役を務めている=2017年11月30日撮影)
「安全・安心」に共感求める
JR東海の採用担当者は「人事のホンネ」でこう語っています。「安全・安定」と「挑戦」は両方大事と言った後、「一番大事なのは安全・安定輸送であり、いくら挑戦しようが大きな事故を起こしてはいけません。愚直で地味な日々の仕事を繰り返して安全・安定輸送を守ることに共感できなければ全然ダメです」。志望者に「安全」への意識を求めています。
鉄道などの運送業や、それを支えるメーカーは「人の命」にもかかわる仕事です。志望する人は、ぜひ「安全・安心」について深く考えてみてください。
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