ニュースのポイント
日本銀行の調査で大手メーカーを中心に景気が改善している状況がわかりました。海外の経済が良くなり、米大統領に就任するトランプ氏(写真)の政策への期待が先行する「トランプ相場」などで円安が進んでいるほか、原油の減産合意による価格上昇といった要因も絡んでいます。ほんとに景気は良くなっているのでしょうか? 最新の経済状況を読み解きます。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「景況感 海外が後押し/6期ぶり改善も先行き慎重/日銀短観」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
「日銀短観」って?
今日の記事に出てくる日銀の調査は「全国企業短期経済観測調査」。舌をかみそうな名称ですが、「日銀短観」と略されます。日銀が景気動向を判断するために年4回行う企業へのアンケートで、約1万社に景気に対する見方などを質問します。回収率が100%近く、経営者の最新の判断が反映されることから、経済指標の中でも注目度が高い調査です。
景況感上げた3要因
今回は、大企業の製造業(メーカー)が前回9月調査よりも景況感がよくなりました。記事はその要因を分析しています。主に以下の三つの要因が挙げられています。
①好調な海外経済
中国などの新興国でiphone7などの部品需要が増えています。三菱電機は電子機器などの加工装置の販売台数が過去最高になる見込み。北米の自動車販売が好調で、カーナビを生産するクラリオンも販売を伸ばしています。
②石油輸出国機構(OPEC)の減産合意
11月末にOPECが原油の減産に合意したため原油価格が上昇しました。この2年間、原油価格が大幅に値下がりし、産油国が多い新興国の経済が悪化していましたが、これで不安が弱まりました。石油元売り大手3社(JXホールディングス、出光興産、コスモエネルギーホールディングス)は、9月中間決算で前年同期の赤字から黒字に転換。資源関連では、中国経済の回復で銅価格が上昇し住友金属鉱山の同精錬所ではフル生産が続いています。
②トランプ相場
トランプ次期米大統領が、減税や規制緩和、公共事業拡大策を掲げているため、米国の景気が拡大するとの期待が高まり、米国の株価が上がり金利も上昇しました。日本では、日銀が長期金利を低く抑えています(9月23日の「日銀が金融緩和を『量から質』に変更!やさしく解説」参照)。金利が高い米国のドルが買われて円安・ドル高に。
約1年ぶりの円安・株高
3要因を受けて、日本でも円安・株高が進んでいます。
日経平均株価は、今週に入って約1年ぶりに1万9000円台に乗り、円相場も1ドル=115円前後になりました。
トランプ氏の当選が決まった直後の今日の朝刊では
「トランプ大統領で『就活氷河期』来る!?」(11月10日)では、「円高・株安」「円安・株高」のどちらに向かうか注目してと書きましたが、今のところ「円安・株高」が進んでいます。何度も書いていますが、日本にはどちらかというと輸出でもうける企業が多いため、円安になると輸出企業の業績が上がって株価も上昇、全体的にも景気が良くなる傾向があります。
志望業界への影響を調べよう
では、これから景気はどんどんよくなるのでしょうか? 今日の記事によると、国内の消費は低迷していて、大企業・非製造業の景況感は停滞しています(グラフを見ると、製造業は上向き、非製造業は横ばいです)。全国百貨店売上高は8カ月連続で前年割れ。衣料品の売上高は12カ月連続で前年を下回りました。トランプ新大統領が就任後に実際にどんな政策を打ち出すかによっても、世界の経済は大きく左右されます。経済の専門家にも「市場の期待が行き過ぎている面もある」との声があります。
自分の志望する業界が今どんな状況にあり、「円安・株高」「円高・株安」でどんな影響を受けるのかをぜひ調べてみてください。
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