2016年01月13日

JALピンチ? ANAの攻勢どこまで続く?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 日本の航空業界は長らく3番手の座を守ってきたスカイマークが2015年に経営破綻し、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)の2強体制がますます強まっています。特に目立っているのがANAの攻勢です。スカイマークへの支援に続き、まだ公式発表はないものの、2階建て構造で500席以上を持つ世界最大の航空機で、「空飛ぶホテル」と言われるエアバス製の「A380」を3機購入するとの報道も出ています。注目されていた次の一手は、航空市場が急成長しているベトナムの航空会社との提携でした。矢継ぎ早とも思える攻めの姿勢にはもちろん理由がありました。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、11面(経済面)の「海外展開 ANA攻勢/ベトナム航空に出資へ/今秋にも共同運航/ベトナム 国営企業改革 後押し」です。
 記事の内容は――ANAホールディングスがベトナム航空に約130億円出資し、共同運航やパイロットの訓練など幅広い協力を進めることになった。経済成長で急増する訪日客を取り込みたいANAと、国営企業改革の「モデル」にしたいベトナム側との思惑が一致した。夏までに出資し、早ければ10月下旬から共同運航を始める。ANAは韓国のアシアナ航空との間でわずかな株式を持ち合っているが、本格的な海外航空会社への出資は初めて。出資比率は8.8%になる。特に業務的な結びつきが強い国際航空連合(アライアンス)が異なる航空会社への出資は世界でも例が少ない。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 海外旅行をしようと思いたち、できれば日系の航空会社で行きたいと思って探し始めると、意外なくらい路線や便数が少なくて驚くことがあります。一般的に航空会社の規模を示す指標に有償旅客キロメートル(有償で搭乗した旅客数に飛行距離をかけた値)がありますが、2013年の数字ですが、ANAが23位、JAL29位と、世界のトップ20にも入っていません。「人事のホンネ」でANAの採用担当者も「(当社が)航空事業において更なる成長を図るカギは、日本マーケットを基盤としつつ、いかに海外マーケットの成長を取り込んでいけるか」「海外マーケットでのブランディングを強化し販路を確立することが重要」と力説していました。
 しかも、ライバルのJALは、経営破綻から再生する過程で、多額の債権放棄や、企業再生支援機構による出資、法人税の減免などを受けている事情もあり、「公平な競争環境を守る」(国土交通省幹部)ことを理由に2016年度末まで新たな投資が認められていません。2017年3月までのあと1年と2カ月ちょっとがANAにとっての最大の「攻め時」なのです。
 
 中でもベトナムの航空市場は急成長しています。訪日客だけに限っても約20万人(15年)と、4年前の5倍以上に増えています。ベトナムで航空シェアの半分を占めるベトナム航空は長年、JALと提携してきました。ベトナム3都市から成田、羽田、中部、関西、福岡へ、計週66便を運航していますが、そのうち8割近い50便がJALとの共同運航便です。ANAは独自にベトナムに就航していますがその数は14便と、大きく差をつけられていました。しかし、今回の提携で、JALとの提携は解消される見込みです。ANAが大逆転に成功したといえるかもしれません。
 
 一方のJALも、経営破綻を機に不採算路線などを整理したことで身軽になり、高い営業利益率を維持しています。2017年春に向けて、体力を蓄え、新たな戦略を練っているはずです。
 
 今回の提携にも不安要素はあります。このところ、ベトナム航空は民間LCCなどの攻勢を受けて、シェアを落としており、遅延率が高い、乗員による物品の「密輸」が発覚するなど、課題もあります。それでも、いま攻めるしかないのです。

 航空業界に限らず、積極的に買収や提携を進める企業には必ず「意図」があります。少子高齢化による国内市場の縮小など、国内企業の多くが関係するような背景もありますし、今回の提携のように、その業界ならではの背景もあります。志望業界で買収や提携など、大きなニュースが出たら、その内容だけでなく、背景を想像したり、関連記事を探したりする習慣がつくと、業界研究はより深まりますよ。

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