ニュースのポイント
同じシューカツでも、就活ならぬ「終活」という言葉を知っていますか? 高齢者が、元気なうちに自分の葬儀や墓、遺言、遺産相続の準備をすることで、この数年ブームとなっています。みなさん自身にとってはまだ縁遠い話ですが、高齢化がさらに進むなか、終活をお手伝いするビジネスの市場もこれから大きくなりそうです。終活の知識は、みなさんの就活にも役に立ちそうです。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、総合面(2面)の「いちからわかる! 信託銀行に預ける遺言書があるのか?/作成を手伝い保管。資産活用につなげてもらう狙いも」です。
記事の内容は――遺言を書く人が増えている。信託協会によると、信託銀行が預かる遺言書は1年で9000件以上増え、2014年度末までに9万7709件に。今年1月の相続税法の改正で相続税支払いの対象が広がり、多くの人が自分の資産をどう相続させるか関心を持つようになった。遺言信託と呼ばれるサービスは、信託銀行に頼むと、「公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)」をつくる手伝いをし、保管してくれる。少なくとも150万円ほど手数料がかかるが、死後は財産を相続人に分ける手続きも代わりにしてくれる。信託銀行以外にも扱う銀行は増えている。遺言信託をきっかけに、投資信託の販売など家族に取引を広げたいという金融機関側の思惑もある。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「終活」は、週刊朝日(朝日新聞出版)が2009年の連載で使ったのが最初といわれ、2012年には新語・流行語大賞のトップテンに選ばれました。相続など死ぬ前の様々な準備にとどまらず、人生の締めくくりの心穏やかな過ごし方などいかに生きるかを考えたり、介護や医療について学んだりすることも含まれます。「終活本」と呼ばれる書籍がたくさん出版され、「エンディングセミナー」と呼ばれるイベントも人気です。
この「終活ブーム」の火付け役の一つに「エンディングノート」があります。信託銀行が顧客に配る営業ツールで、財産処分の仕方などの希望を書いておくものです。「実際に書いてもらうことが相続対策を考える入り口となる」(三井住友信託銀行)と言います。各行が工夫をこらしており、三菱UFJ信託銀行のノートは、「子どもの頃の思い出」「相続する資産」などテーマごとに1枚の紙に書き、営業担当者のアドバイスを受けながら時間をかけて独自のノートを作ります。みずほグループのノートは、残った人生での夢や資産運用を書き込む欄を設けました。具体的に書き出してもらうことで、投資信託やローンなど新たな取引につながるとのねらいがあるそうです。多くは無料ですが、野村グループは介護保険や相続にかかわる基礎知識を集めた別冊をセットにして2400円で販売しています。
老いや死をビジネスに結ぶ付けることに抵抗をもつ人がいるかもしれませんが、三菱UFJ信託銀行の岸本博一さんは「人事のホンネ」で遺言業務のやりがいについて話しています。岸本さんによると、遺言を書いたお客様が亡くなると遺族の前で銀行の担当者が遺言を読むのですが、家族への感謝の言葉を読みながら泣いてしまうこともあったそうです。「遺言の総仕上げとして、信託銀行員も公証役場に行って証人としてサインします。名前が数十年残り、それを作った軌跡が残る」と、責任の重さについても語ってくれました。
背景にあるのは、もちろん高齢化です。日本の65歳以上の高齢者人口は3000万人を上回り、4人に1人を占めます。いま127万人ほどの年間死亡者数は2025年に150万人を超すとみられ、豊かなシニア生活を過ごしたいというお年寄りもさらに多くなります。信託銀行以外にも、医療、介護、食、宅配……など、よりよき終活をお手伝いする仕事はたくさんあります。自分の志望業界と終活の結びつきを考えてみましょう。
信託銀行の仕事については、業界トピックス「信託銀行って何? 実は意外に身近な存在」(2015年4月28日)でも書いています。読んでみてください。
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