2015年07月15日

「イラン核合意」日本への影響、やさしく解説

テーマ:国際

ニュースのポイント

 イランの核開発問題で、関係国が最終合意しました。世界に核兵器を広げないようにするための「歴史的な合意」と評価されています。遠い中東の話ですが、政治的にも経済的にも日本に大きな影響が及びます。わかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面トップの「イラン核協議 最終合意/開発制限・査察を容認/制裁解除へ」です。総合面(2面)の「時時刻刻・核疑惑13年 外交決着」「いちからわかる!」、国際面(11面)の「イラン核 残る不信」、オピニオン面(16面)の社説も関連記事です。
 記事の内容は――イラン核問題をめぐって米英独仏中ロ6カ国とイランは14日、問題解決のための「包括的共同行動計画」で最終合意に達した。イランは今後10年以上にわたり核開発を大幅に制限し、軍事施設への査察も条件付きで受け入れる。核不拡散条約(NPT)体制のもと、外交交渉で新たな核兵器保有国ができるのを防ぐ歴史的な合意だ。米欧や国連は原油禁輸や金融取引制限などの制裁を解除していく。世界有数の産油国イランと日本が取引を正常化させるきっかけにつながり、ホルムズ海峡が焦点となってきた安全保障法制論議にも影響を及ぼしそうだ。イランのロハニ大統領は「核兵器をつくることは決してない」と演説。イランが核武装すれば周辺国に「核のドミノ」が広がる恐れもあったが、米欧側もNPT体制の国際秩序を保てると判断したとみられる。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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 イランは中東の大国で大産油国ですから、今回の合意は世界の情勢に大きな影響を与えます。ただ、とても複雑なので、問題を整理して説明します。

◆イラン核開発問題とは
 2002年にイランで核施設の建設が進んでいることがわかった。イランは原発や研究目的で利用すると言ったが、国際社会は核兵器をつくろうとしていると疑った。2003年から英独仏とウラン濃縮の一時停止で合意したが、2005年に強硬派の大統領が就任し、2006年から濃縮を再開。国連安全保障理事会の制裁決議を無視して「民生用」を口実に核開発を続けた。2013年に穏健派のロハニ大統領が就任すると融和路線に転じ、米英独仏中ロ6カ国と協議を続けていた。

◆イランってどんな国?
 旧ペルシャ。世界のイスラム教徒の中では少数派のシーア派が多数を占める。1979年に王制を倒すイスラム革命が起き、シーア派の指導者が実権を握る。以来、アメリカと敵対関係が続く。液化天然ガス(LPG)の確認埋蔵量は世界1位、原油の確認埋蔵量は4位の大資源国で、国家収入の7割以上を原油に頼る。中東では、米国の支援を受けるイスラエルや、スンニ派の大国サウジアラビアなどと対立。シリアやイエメンでの紛争では、シーア派のテロ組織を支援しているといわれる。人口は8000万人近い。

◆日本との関係は?
 かつて日本はイラン最大の原油輸出先で、1970年代には日本の原油輸入量の3割をイランが占めたほど。イスラム革命後にアメリカと国交断絶した後も、日本は友好関係を続けてきた。ただ、核疑惑に対する経済制裁で輸入量は減り、この10年では4分の1になり全輸入量の5%を切った。

◆日本の政治への影響
 安倍政権が成立を急ぐ安全保障関連法案の根拠にも影響しそう。イランはかつて、欧米の経済制裁に反発してホルムズ海峡の「封鎖」を示唆したことがある。海峡はアラブ産油国につながるペルシャ湾の入り口にある。安倍首相は法案が必要な根拠の一つに、ホルムズ海峡が機雷で封鎖される場合を想定。「日本の石油の8割が通る」として、機雷除去を目的に集団的自衛権行使を可能にする重要性を訴えてきた。今回の合意で、ホルムズ海峡封鎖の可能性はさらに低くなったといわれる。

◆日本の経済への影響
 イランは経済制裁が解除されれば、数カ月から1年ほどで日量70万~80万バレル程度輸出を増やすとみられている。世界の原油市場は供給過剰が続き、国際的な指標となる「米国産WTI原油」の先物価格は1バレル=50ドル台前半で、1年前の半分ほどの水準。イランが輸出を増やせばさらに原油価格は下がり、日本経済にとっては基本的にプラス。原油の安定的な調達にもつながる。長期的には、人口8000万人近い市場は日本企業にとっても魅力的だ。

 制裁解除がビジネスに直結するのはエネルギー関連の企業や商社などですが、原油価格が下がれば多くの企業が恩恵を受けることになります。志望業界、企業への影響を考えてみてください。

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