人事のホンネ

三菱UFJ信託銀行株式会社

2016シーズン 【第14回 三菱UFJ信託銀行】
専門性が身につく仕事 ウソをつかない人間性がベース

三菱UFJ信託銀行人事部採用グループ主任調査役 岸本博一(きしもと・ひろかず)さん

2015年05月15日

■採用実績
 ――2014年度と2015年度の新入社員数を教えてください。
 2014年度入社は、全国転勤型の「Gコース」が184人(女性39人)、地域限定型の「Bコース」が111人(全員女性)。2015年度入社はGコースが162人(女性19人)、Bコース109人でこちらも結果的に全員女性です。Gは「ジェネラル」、Bは「ビジネス」の意味で、両コースとも期待役割は同じですがGコースは勤務地域に制限がなく、Bコースは特定の地域内での勤務となります。
 大学院修了者は、2014年度は19人で、今年は12人でした。

 ――文系の学生が多いのでしょうね?
 いえ、理系も結構多く、ここ数年の採用人数に対する割合は1~2割ほどいます。企業から年金資産をお預かりして運用する仕事など理系の方が活躍する業務も多く、どんどん入ってもらいたい。理系の大学でのセミナーも積極的に行っています。年金や保険数理の専門家である「アクチュアリー」の資格を取れるような人にも入ってほしいですね。

 ――外国籍の学生も?
 Gコース、Bコースとも国籍を問わずに採用しており、毎年入社しています。法人のお客様の年金資産を預かって管理、運用する部門はグローバルに展開しているので、外国籍の方も一定数ほしい。ただ、何人採るという枠はありません。
 日本語でコミュニケーションをとれることを求めますが、それ以外は日本人と同じ観点で面接をします。

■信託銀行の仕事
 ――信託銀行は学生にはあまり身近とは言えませんよね。業務内容をわかりやすく教えてください。
 信託銀行は、信託業と銀行業という2本の柱で成り立っています。銀行業はいわゆる銀行の仕事です。
 信託業には幅広い仕事があります。銀行が扱わない個人向け商品でいうと「遺言信託」が代表的商品であり、法人・個人問わず不動産売買に関わる「不動産仲介」などがあります。
 法人向けでは、企業が従業員の退職金支払いのために積み立てたお金を運用し、年金受給対象になった従業員への支払いまで行う「年金信託」という業務や、経営者と株主の間に入って様々な業務を代行する「証券代行業務」などがあります。証券代行業務は、株主への配当金支払い、経営者に対しては年に1回の大イベントである株主総会のリハーサルやQ&Aの準備、当日のお手伝い、未上場企業であれば上場に関するコンサルティングなどを行います。

 ――普通銀行より業務の幅が広いんですね。
 そうですね。メガバンクはその名の通り行員数が数万人という大規模な組織ですが、私たちは約6800人の社員数(2014年3月末)。店舗数もメガバンクの何分の一という規模。それで幅広い仕事をやっているため、若いうちから責任が重い仕事を与えられるとよく言われます。

 ――業務はどのように分かれていますか。
 大きく分けて六つ。リテール(個人取引)、法人、市場国際、銀行にない信託銀行独自の業務として受託財産、不動産、証券代行があります。

 ――メインはどの業務ですか。
 利益ベースで見ると、銀行業務と信託業務が半々くらいですね。銀行業務は金利ビジネスであり景気の波や市場の動向に左右されやすいのですが、信託業務は手数料ビジネスであり、安定的な収益を期待できる。金利ビジネスと手数料ビジネス、この両輪でバランスをとり経営の安定を図っているということです。

 ――一般の銀行との違いはどこでしょうか。
 銀行の担当者も不動産売買や相続の相談までは乗ることができます。ただ実務まで取り扱えることができるのは信託銀行しかありません。

14の資格取得が必須 入社後もずっと勉強

■信託銀の魅力
 ――金融機関を目指す学生に、普通銀行との違いをどう説明していますか。
 私はまず、不動産の説明から入ります。学生に「不動産を買うときはどこに行きますか」と聞くと、みなさん不動産会社に行くと言う。「ぜひ、信託銀行に来てください。きちんと案内しますよ」と説明すると、「なんで銀行なのに不動産を扱っているんだろう?」と興味を持ってくれます。
 私は遺言業務を担当した経験があるのでその話もします。たとえばお客様がお亡くなりになったあとにご遺族にお集まりいただき遺言を開示し、読み上げ、相続人のAさんにいくらあげる……という仕事を多く担当してきたと説明すると、学生のみなさんは驚きます。法人業務ですとイメージが湧きにくいところがあるようで、個人が対象の仕事は身近に感じてもらえるようです。

 ――学生の反応は?
 信託銀行を知らない学生もいるし、合同企業説明会の会場だと三菱東京UFJ銀行さんと間違って入ってくる学生も多くいます。2005年に三菱信託銀行とUFJ信託銀行が合併して三菱UFJ信託銀行になりましたが、三菱東京UFJ銀行さんと会社のマークも色も同じなので間違うのでしょう。説明会で幅広い業務があることを知り、「専門家になりたい」と志望してくれる学生が結構います。
 それでも知名度は非常に低いので、3月まで大学内での業界研究セミナーにたくさん参加し、早めに認知度を上げるようにしています。大手企業は3月以降、合同企業説明会にあまり出ませんが私たちはかなりの回数参加します。

 ――信託銀行の魅力をどう伝えていますか。
 まずは業務の魅力を伝えます。いろいろな仕事ができて、何か専門性を身につけたいという人には、信託銀行が選択肢に入りますよと説明します。
 ただ、お客様に信頼される信託銀行員になるためには、専門性の前に人間性が大事です。たとえば、遺言を書くときには、まずお客様から財産内容、家族構成を全て教えてもらわないといけません。一つでも漏れるとまずいし、そもそも遺言を書く人は家族にもそういう話をできない人が多いので、まず全財産、全家族についてお話ししていただける関係を築くのがすごく大変です。そのあと初めて、こう分けたら税金がこうかかって、という専門的な話ができるんです。
だから、セミナーでは「いつも人間性と専門性を高めていくことが信託銀行員の目指す姿だよ」というメッセージで締めています。

 ――「専門性」という部分が学生に響くんでしょうか。
 そうですね。不安な時代なので、学生は何か専門性を持ちたいと思っているようで、そこにアピールできているのではないでしょうか。ある就職人気ランキングでなぜその会社を選んだかというアンケートがあり、他社は「一流だから」「規模が大きいから」といった項目が上位でしたが、弊社で最初に来るのは「専門性、プロフェッショナルになれる」という項目でした。他社とは選ばれる要因が違うと思っています。

 ――一般の銀行で身につけられる専門性とは違うんですか。
 不動産の売買や遺言など実務を経験したうえで相談に乗るのと、ただ教科書的知識だけで相談に乗るのは違うものと感じています。「教科書的にはこうだけど、あなたの場合はこちらのほうがいいかもしれませんよ」という具体的なアドバイスは、実務経験がないとなかなかできないと思います。そこが、学生に評価されているのかもしれませんね。

■資格
 ――信託の業務には資格がたくさん必要なのですか。
 たくさん必要です。入社すると、まず14個の資格を一定年数のうちに取得する必要があると説明しています。今後専門性を身につけていく上で必要な基本的なものです。

 ――14個も⁉ 社員はみなさん持っているんですか。
 基本、取得しなければなりません。中でも難しい資格は宅建(宅地建物取引士)です。不動産は個人でも法人でも財産の中に必ず入ってきますし、他の金融機関では取り扱えない差別化できる業務でもあり、信託銀行員ならどの仕事に就いても取得しておいてもらいたい資格です。

 ――勉強が大変そうですね。
 学生には厳しい話ですが、知らずに入社したら大変なので、「入社後もずっと勉強していかないといけないし、それが嫌だったら信託銀行員は無理だよ」とセミナーなどで伝えています。

 ――他はどんな資格ですか。
 銀行業務検定の財務3級、税務3級、法務3級、金融コンプライアンスオフィサー2級、証券外務員2種、1種、内部管理責任者、生損保の募集人資格などです。
 さらに上級資格もあります。私はリテール業務を担当していたので、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)の資格を保有しています。

 ――資格がないと仕事にならないんですね。
 資格がないと仕事にならないということではなく、信託銀行員としてまずは基本的な幅広い知識を習得するために資格をとってもらうのです。実際のお客様の相談は、資格をいくら持っていてもその知識だけでは何の役にも立たないくらい難しい。知識を持ち、お客様と何度も話をして経験値を積んでやっとお客様の相談に乗れる。時間がかかります。

 ――他の金融機関でも、こんなに資格が必要なんでしょうか。
 他の金融機関も投資信託や保険などを取り扱っており、それぞれに販売資格が必要なので、たくさんの資格はとっていると思います。ただ、他金融機関と比較し弊社は結構多いのではないかと思っています。
 リテール部門の社内資格に「トラストファイナンシャルプランナー」があります。これは宅建やFP1級を持っていることが前提で、かつ、お金を預かって運用する資産運用相談、住宅ローンの相談、アパート建築等にお金を貸す相談、不動産業務、相続・遺言業務というリテールの5業務をフルで扱える社員だけがそのように呼ばれます。この数を増やすことが重要だと考えています。
 このトラストファイナンシャルプランナーを取れるような社員を、なるべく早く多く育てたい。差別化するには「人」しかありませんから。

 ――それほど厳しいと、途中で脱落する人もいるのでは?
 厳しい人には職場で「この時期にこの資格を受けたほうがいい」「この勉強計画はどうか」といった細かいフォローをしています。