今日(と次回)は、ちょっと「ことば」そのものから離れて、ESによくある(そして面接でもしばしば聞かれる)「趣味・特技」について話したいと思います。
正直なところ……ESのあの欄って皆さんどう思っていますか? アピールしたい特技や趣味のある人ならいざ知らず、恐らく多くの人にとっては
「まあ無難に埋めとくか……。音楽鑑賞? 映画? 読書? ウォーキング?」
となるのが大半ではないでしょうか。実際「音楽鑑賞」と「読書」、山のように見ます(笑)。
皆さんにしてみれば、「あなたの長所を挙げて下さい」や「志望動機」「学生時代に努力したこと」などの「定番」欄ほどには力を入れる気にならない、というのが正直なところでしょう。
実際読む側としても、あの欄が選考基準の決定的要素だとは思っていません。
ただ、全く同じくらいの力量・実力をもった二人のうち、どちらかを通さねばならない(=どちらかを落とさねばならない)とき、この欄の中身の差で決定される、なんてことはあると思います。
今までも何度か書いてきました。なぜESや面接で「ふさわしい」言葉遣いをすべきなのか。「適切な」言葉を選ぶべきなのか。力量・実力が均等なのだとしたら、やはり「美しい日本語」を使える人を取りたいと思う。その考えは極めて自然ですよね(もちろん、力量・実力が一定水準をクリアしていることが前提ですけど)。
それほど難しい話ではありません。そもそも、ESにあの欄がある(面接で聞かれる)以上、趣味・特技も「自分をプレゼンする」要素なのです。だからこそ、そこで少しでも「自分」を見せた方が得じゃん、という事。
「だって特に資格も持ってないし、陶器作りとかしないし。だから読書とか音楽鑑賞って書くんだよ!」
というご不満の声が聞こえてきそうです。はいはい落ち着いて。以前書いたことを応用してみましょう。そう、絶対に外せないキーワード「具体的に」です。
音楽:「ジャンルは?」 → クラシック、J-pop、洋楽ロック、ヒップホップ、演歌、童謡……
音楽:「誰の?」 → 好きなグループ、アーティスト、演奏家、作曲家でもいい。
読書:「ジャンルは?」 → ノンフィクション、ファンタジー、恋愛もの、歴史書、日記、エッセー、SF……
読書:「誰の?」 → 作家名は必須!
映画:「誰の?」 → 監督、俳優はもちろん、好きな「プロデューサー」「カメラマン」なんてくくりも面白い
こういった情報をちりばめることで、味気ない「音楽鑑賞」「読書」に「あなた色」が加わります。マスコミや映画・音楽業界を希望する人でなくとも、人事担当者や面接官に「私はこういう趣味嗜好を持っています」ときちんと伝えることができるわけです。
趣味の世界というのは、やはり「人柄」が一番出ます。「共感」を得られたらなおのこと得です。例えば好きな映画に「小津安二郎監督の作品が好きです」と書いてあるイマドキの就活生がいたら、「ほう、若いのになかなか渋いねぇ」と好意的に思われること請け合いです(もちろん、映画業界やマスコミではダメですよ。小津作品くらい見てて当たり前ですから。笑)。
こう書くと
「じゃあもし面接官や人事担当者が大の小津嫌いだったらどうしてくれるんですか」
と聞いてくる人がいます。まあその不安も分からなくはない。私はそれでも「詳しく書く」べきだと考えます。仮に自分の趣味嗜好と正反対のことを書いてあるESがあったとして、「それを理由に」落とす人事担当者はいないからです(いるとしたら、そんな会社は入らなくていいです)。
むしろ私が人事担当者なら
「私は小津のこと大嫌いなんだけど、小津の良さを説明して説得してみて」
という風に「面接の」材料にしたいと考えます。これって絶対「おいしい」はずです。あなたの「得意な」フィールドで臨めるんですから。ここを「映画鑑賞」としか書いていなかったら、恐らく発生しないやり取りです。
ここで注意して欲しいのは、別に映画好き同士の会話ではなく、あくまで面接官と就活生であること。「小津が好きだ」ということをひたすら熱弁するだけではなく、あなたが「どんな風にプレゼンするか」を見られているんだ、ということはお忘れなく。
また「趣味・特技」というのはギャップ、すなわちインパクトを与えることで、人事担当者や面接官に「おっ?」という先制パンチを与える効果もあります(上記の小津監督もそうですね)。
次回は、この「意外性」を武器にして、グループアイドルの中で自己アピールに成功している二人を紹介します。皆さんの「趣味・特技」欄の参考になれば。