あきのエンジェルルーム 略歴

2014年09月25日

電車の中で、おっぱい出せますか? ♡Vol.4

 いつも心にエンジェルを。

 人生設計は人それぞれですが、就活のその先、結婚や出産、子育てと仕事の両立について、いまから不安を感じている人もいると思います。今日はそんなみなさんに、授乳期のママにやさしい「エンジェル企業」を紹介したいと思います。
 
 会社の名前は「モーハウス」。外出中に授乳するときに、周りの人におっぱいが見えないようにデザインされた授乳服を作っています。
(写真:PIXTA)
 この会社を作った社長の光畑由佳さんには強烈な体験があります。

 1997年夏のことです。光畑さんは3歳の長女と0歳の次女を連れて、友人に会うため、自分が住んでいる茨城県つくば市から、東京に出てきました。移動の電車内で次女がお腹を空かして泣き始め、どうしても泣きやみません。やむを得ず男性も周りにいる状況で、おっぱいを出して授乳したそうです。
 「そのときの恥ずかしさは忘れられません。みんなが自分を見ているようで、車内にいる人に一生分の話のネタを提供したと思いました」と光畑さん。

 当時も、服を全部脱がなくてもホックなどを外せばおっぱいを出せる授乳服はありました。でも、自宅や授乳室といった、男性の目線がない場所で使うことが前提の、胸が見えてしまうデザインがほとんどです。

 光畑さんがすごいのは、「授乳中も胸が見えない、どんな場所でもためらわずに授乳できるデザインの服がほしい。ないなら、自分で作っちゃおう!」と思った点です。(写真左は人気商品「モーブラ」と光畑由佳社長)

 大学卒業後、パルコに入社。結婚を機につくば市へ引っ越し、次女が生まれた当時は建築関係のフリーの編集者として、ゆったりしたペースで働いていた光畑さん。授乳期の「不便さ」を実感した経験から一念発起、大学で被服学科を専攻した経験も生かし、授乳服の試作品を作っては改良を重ね、起業しました。 
 それが“車内授乳事件”からたった2カ月後というから、驚きます。

 とはいえ、いきなり大評判、というわけではなく、当初は「授乳中のママがわざわざ外出しなくてもいいでしょ」という冷めた反応が多く、そんなに売れなかったそうです。時代を感じますね。

 いまでは年間約8万5000着も売れる授乳服、授乳インナーのトップ企業に成長しました。 
 私の場合も母乳育児でしたので、産休・育休中は「おっぱいマシーン」と化していました。

 この時期のママと赤ちゃんは一心同体。子連れで新幹線に乗るときは必ず授乳室に隣接する指定席を取り、在来線であれば、赤ちゃんが泣くといったん下車して、駅の「だれでもトイレ」(大きめの個室)に入り、替えのオムツやら、泣きやませグッズやらをパンパンに詰め込んだマザーズバッグをおむつ替えの台に置き、身軽になってから胸をはだけて授乳していました。何着もの授乳服にお世話になりました。(写真右は”胸が見えない”モーハウスの授乳服)

 でも、職場復帰すると、企業内託児所を設置している企業は別ですが、ほとんどの場合、母子は引き離されます。

誰(た)がために働くわれかしろしろと 冷える陶器に乳流しおり
 天道なおという女流歌人の短歌(第一歌集『NR』)です。仕事中におっぱいが張って痛くなると、トイレの個室で絞って、流していました。「誰がために……」という気持ちでいっぱいでした。彼女の歌にはこんなものもあります。
 
手洗いの個室で再び母となり 乳房を搾るわれどんな顔

 職業人としての自分にはきっと代わりはいる、でも子の母親は私しかいない、なのにどうして私はここにいるんだろう。そして、娘が「美味しい」と飲んでくれるおっぱいを捨てているんだろう。

 働くママの葛藤はとーっても深いです。
 でも、モーハウスは違います。顧客の育児を使い勝手のいい授乳服で応援するだけでなく、働くママ社員にとって「エンジェル」な点がいろいろあります。
 
 「子連れ出勤」ができます。在宅勤務も短時間勤務も選べます。社内に託児所があるわけでも、シッターを常時雇っているわけでもありませんが、フロアはカーペット敷き、赤ちゃんを寝かしつけられるように隅っこには布団もあります。

 先日、東京・青山にリニューアルオープンしたばかりの店舗にお邪魔しましたが、店内にはカーテンで仕切れる簡易ベッドが2台置いてあり、ソファや赤ちゃんベッド代わりに活用されていましたよ。
 ショップ内にある、「おっぱいガチャポン」(写真上)をガチャガチャすると、「母乳流菩薩」のお守りと「母乳の出具合を気にして さわがぬがよし。」など、ありがた~いお言葉がついた、おみくじも出てきて、クスッと笑えます。

 残念ながら「モーハウス」の今年度の求人は締め切ってしまったそうですが、みなさんの地元にも、在宅勤務や子連れ出勤が可能な企業があるかもしれません。気になる人は一度、情報収集してみてはいかがでしょうか。

 もちろん、子連れで仕事なんて……、という人もいるでしょうし、職業観は十人十色でいいのです。

 「エンジェル企業」は私が独自の基準で紹介していますが、就活する前に、ぜひ自分の視点で、人生の優先順位をじっくり考え、あなたにとっての「エンジェル企業」をさがしてみてくださいね。