あきのエンジェルルーム 略歴

2016年04月01日

「保育園落ちた」で泣かないために… ♡Vol.67

 いつも心にエンジェルを。

 「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログをきっかけに、待機児童が政治問題化しています。大きなニュースになったのでみなさんも知っていると思いますが、改めて紹介します。

 保育園落ちた日本死ね!!!
 何なんだよ日本。
 一億総活躍社会じゃねーのかよ。
 昨日見事に保育園落ちたわ。
 どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。
 子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言っているのに日本は何が不満なんだ?
 何が少子化だクソ。
 子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのはほぼ無理だからって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。(中略)
 まじいい加減にしろ日本。
 表現の強烈さもあり、反発を覚える人もいるかもしれません。先日、都内のある大学の女子学生を対象にした講演でこの話を取り上げましたが、専業主婦家庭で育った人が多かったのか、そもそも「小さい子供を預けて母親が働く」ことをネガティブに受け止める学生も少なくなく、今一つ、共感は得られなかったような気がします。しかし、右肩上がりの経済が期待できないこれからは、夫の収入だけに頼って生活するのはリスキーだといえるでしょう(右写真は保護者らによる国会前での抗議活動)。

 政府はいま、待機児童対策として、保育士の配置や部屋の施設面積の基準などを緩和することで、受け入れられる子供の数を増やそうとしています。しかし、保育士の人数などを増やさずに預かる子どもの人数だけを増やすという対策では、保育士の負担は増えるばかり。一般企業に比べ、給与が安く、「命を預かる」という大きな責任に見合わない待遇だからと、資格を持っていても離職する人が少なくない現状をみれば、まったく逆効果と言わざるを得ません。
 厚生労働省によると、民間保育所の保育士の給与の平均月額は21万9000円です。全職種の平均月額に比べて約11万円も低い金額です。資格を持っているのに保育士としての就職を希望しない人を対象に、同省が複数回答で理由を聞いたところ、半数の人が「賃金が希望と合わない」と回答しています(2013年、有効回答958人)。実際、保育士が足りず、施設はあるのに子供の受け入れを制限せざるを得ない保育所も増えています。野党が共同で「保育士の賃金を1人あたり月5万円引き上げる」ための議員立法を衆院に提出していますが、財源の問題もあり、実現するかどうか先行きは不透明です(右写真は保育士の待遇改善を求める緊急集会)。

 待機児童問題と聞いて、保育所に入れないのがそんなに大変なの? 幼稚園じゃダメなの? 祖父母に助けてもらえばいいじゃん!などと言う人が私の周囲にもまだまだいます。しかし、現実はそんな生やさしい話ではありません。
 産休明けに子供を保育所に預けることができなければ、仕事を失うという人がたくさんいます。積み上げてきたキャリアを出産で途絶えさせることは、それだけで生涯所得が億単位で減額されることにつながります。本人に落ち度はまったくないにもかかわらず、です。

 本人の努力がある程度、結果に反映される入試や就活などとそこが違うところです。しかも入試なら落ちた場合に、浪人するとか「滑り止め」に入学するという選択肢があります。就活でも、第1志望の企業に落ちても、よほどの氷河期でなければどこかしら入社できる企業はあるでしょう。しかし「保活」こと保育所探しは違います。立地、費用、保育環境など条件をどんなにゆるくしても、子供を預けるところが見つからなければ、母親の職場復帰はかないません。とはいえ子供の命がかかっていますから安易に「どこでもいい」とは言えません。保育所が決まるまでエンドレスに復帰を待ってくれる企業があるでしょうか。実際、第1子出産後も出産前の仕事を継続できている女性は約3割ですので、大半の家庭は結果的に経済的打撃を被っているわけです。
 私自身も娘が0歳児の後半から保育所探しを始めました。案の定、自治体の認可保育所は66人待ち――。運良く協力企業の事業所内保育所の枠に抽選で当たり、そこに2年間預けながら、認可保育所に空きが出るのを待ちました。私も夫もフルタイム勤務でしかも勤務が不規則なマスコミ業界、その上、夫は地方に単身赴任中。そんな条件でも66人待ちなのですから、待機児童問題の深刻さを痛感しました(左写真はトヨタ紡織の工場内にオープンした事業所内保育所)。
 友人の中には、妊娠がわかった段階で「保活」を始め、保育所の充実した地域に家族で転居する人もいました。
 私の場合、ようやく空きが出て通えることになった認可保育所は自宅から地下鉄で4駅。インフルエンザなどが流行っている時期は怖くて満員電車に乗せられず、タクシーで送り迎えをすることもありました。ベビーシッターさんの手も借りました。経済的に可能だったからできたことで、一つ歯車がずれれば破綻しかねない綱渡りの子育て環境でした。

 先日、保育所時代のママ友とたまたま待機児童の話題になりました。その友人は住んでいた地域の認可保育所が130人待ちで、空きが出るまで自宅から電車で片道1時間近くかかる認可外保育所に子供を預け、またそこから30分以上かけて職場に出社していたそうです。 
 乳児を抱いた母親が毎朝、満員電車に1時間近く乗っている姿を想像してください。「子供が日に日に衰弱しています」「このままでは私も子供も死にます」――。何度も自治体に掛け合い、窮状を訴える手紙を送り続け、ようやく入れた保育所で私たちは出会ったのです。ちなみに私たちの子供は一度も待機児童としてはカウントされていません。
 何が言いたいのか。いま待機児童として公表されている数はリアルな数ではないということです。認可保育施設に入れずやむなく親が育休を延長した人、保育所に入れず求職活動をやめた人、自治体が通えると判断した認可保育施設に入らず、「特定の施設を希望」した人は待機児童としてカウントされません。私たちのようにやむなく認可外保育所に子供を預けた場合も待機児童扱いにはなりません。厚労省によると、こういった「隠れ待機児童」は2015年4月時点で5万9383人いて、自治体が待機児童と認定した2万3167人の2.6倍に上ります。

 みなさんに、「子育てをしながら働くってやっぱり大変なのね」と思わせたいのではありません。その立場になって急に慌てるのではなく、情報収集して、いまからできる対策を考えておいてほしいのです。
 このコラムでも紹介しましたが、待機児童になったときなど緊急避難的に子どもを預けられる事業所内保育所を設置している企業もあります。さがしてみましょう。事業所内保育所の運営は、企業からすれば“持ち出し”です。それでも保育所を維持している企業は、かなりエンジェル度が高いといえるでしょう。志望企業の制度では、保活がうまくいかなかったとき育休をどこまで延ばせるのかも調べましょう。また、待機児童が少ないエリアはどこなのか、自治体ごとに公表していますから、チェックしてみましょう。リアルな数字ではないですが傾向は多少わかります。いろんなシミュレーションをしてみてください。もちろん状況は刻一刻と変化しますが、おさえるべき情報を探すコツをつかんでおいて損はありません。

 そして最も大きなセーフティーネットがパートナー選びです。保育所が見つかるまで、自分と交代で育休を取ってくれるような男性かどうか。遠方の保育所しか入れなかったとき、「自分のほうが体力があるから」と赤ちゃんを抱っこして送り迎えしてくれるような男性かどうか。そもそも、妻が働き続けることに最大限の協力を惜しまない男性かどうか。子供のために転居することなどを面倒くさがらない男性かどうか。もしあなたが働き続けたいと思っているなら、よーくチェックしておきましょう。

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