青野社長は、イクメン指数ゼロの、やや“ダメ”寄りのパパを主役にしたポイントは「あまり働くママ視点に寄り添いすぎると、結局、パパたちが『どうせ俺らが悪いって話だろ』と拒絶反応をして見てくれなくなるから」と話していました。それも一理あるかもしれません。だれだって見て不快になる、居心地が悪くなる、とわかっているものを見たくはありませんから。
妻目線ではやや「なまぬるい」内容ですが、刃の切っ先が鋭くない刀で切られた傷のほうが、治りが遅いとよくいいます。このショートムービーにはそんな効果があるかもしれません。
このムービーのいいところは、一つの出来事を、複数の視点で表現している点です。子育てでなく、仕事のシーンでもその視点が生きています。
主人公はセキュリティ関係の技術系社員のようですが(当てずっぽう)、営業担当の同僚に泣きつかれ、仕方なく顧客のクレーム対応に同行します。クライアント企業の女性社員からは、なぜこんなに対応が遅いのか、と上から目線でガミガミ指摘されます。同僚である営業社員が平謝りするので、主人公は自分に非はないと感じていながら、仕方なく頭を下げます。その後、その女性社員が上司らしき人に、今回のトラブルを頭ごなしに注意され、懸命に謝っている姿を目撃します。そこで初めて、それぞれに立場があり、みんな大変なんだなあ、という事に気付くのです(遅いって!)。その後、営業担当からの依頼にも快く同行するようになります。クライアントの立場、営業の立場、そして、妻の大変さに、徐々に気付いていきます。その途中で、仕事人間だったせいで妻と子どもに愛想をつかされた先輩社員の自嘲にも出合います。