あきのエンジェルルーム 略歴

2016年02月18日

イクメン宣言議員の辞職で考える“人を見る目”の不確かさ ♡Vol.64

 いつも心にエンジェルを。

 男性の国会議員として初めて育休取得に意欲を見せていた宮崎謙介前議員(2月16日辞職)の不倫が発覚し、大きな騒動になっています。これまで国会議員で不倫スキャンダルが発覚した人は男女ともに少なくありませんが、議員辞職に至ったケースは極めて珍しいことです。
 どうして、今回はここまで大きな騒動になったかというと、彼が強くアピールしていた「妻子を大切にする夫」という姿と、実際の行動との「つじつまが合わない」(本人談)、つまり落差があまりにも激しかったせいでしょう。
 
 だれからみても間違いなく「ゲス」な行動でなくても、人に不快感や嫌悪感、不信感を与える言動は多々あります。


 たとえば10年以上前の話ですが、ある日、後輩記者が、私の紹介した著名人との取材のアポに遅刻したことがありました。地下鉄が遅れたなどの理由があったそうですが、車内にいたことや、少しの遅刻で済むと思ったこともあり、事前に連絡はしなかったそうです。20分ほどの遅刻で先方と会え、取材が終わり、私に報告の電話がありました。

「ちょっと遅刻しちゃったんですけど、話は聞けたし、大丈夫でしたー」
「はあー?」

 実は、先方から私にすでにクレームの連絡が入っていました。なぜ遅刻したのかの十分な説明もなく、矢継ぎ早に取材を始めようとする彼の姿勢に「本人に言っても伝わらないと思った」んだそうです。
 彼の「大丈夫でした」は「自分が怒られなくてよかった」「とりあえず取材できたからよかった」という、自分目線の「大丈夫」でしかありません。本当は、彼の行動によって、所属する組織が培ってきた信用や、遅刻していなかったらもっといい話が聞けたかもしれない可能性、いろんなものを失ったのです。

 こういった人には、二度と大切な仕事を任せようとは思いません。遅刻そのものは事情もあるでしょうし、常習でなければそれほど問題にするつもりはありませんが、彼の場合、“罪悪感”がみじんもないことが一番の問題です。そして、相手の気持ちに対する“想像力”がないことも記者としては致命的でしょう。実際、その後も周囲から、遅刻、当日のドタキャンなど、彼の不誠実な態度についての情報が次々と入ってきました。
 おそらく宮崎前議員も不倫をしていた当時、罪悪感はなかったのでしょう。妻にバレなきゃいいと思っていたのか、バレても相手が妻だけなら言い逃れできると思っていたのか。心の中まではわかりませんが、とにかく、国会議員どころか、人間としていかがなものか、と思いますよね。

 しかし、有権者は彼を二度も国会議員に選び、そして弊社の採用担当者は彼(後輩)を新聞記者として採用したわけです。私自身、宮崎前議員と会ったことがありますが、ここまで不誠実な人間だとは全く気づけませんでした。後輩に対しても、遅刻の一件までは、特に不信感はありませんでした。

 何が言いたいのか。要するに就活でも選挙でも、選ぶ側は神様でも何でもないただの人間だということです。選挙活動中、あるいは就職活動中に相手から示されるわずかな情報で、人の本質を見抜くことなど到底できないのです(右写真は選挙キャラ「めいすいくん」)。
 だから、みなさんがもし志望企業の選考に落ちたとしても、その企業がみなさんより優秀な人を選んだとは限りません。単に見る目のない面接官だったのかもしれませんし、あなたの持つさまざまな人間性のうち、たまたま選考で見せた、ある一面が気に入らなかった、ということかもしれません。逆にあなたが優秀すぎて、どうせ他社に逃げられるだろうと内定を出さなかったということも考えられます。つまり、あなたという人間の裏も表もわかった上で、合否を判断しているわけではないのです。だから、あまり思い悩みすぎないことです。

 しかし、それを逆手にとって、就活なんて短期決戦だし、自分の一部しか見せなくていいのだから多少のハッタリやごまかしが利くだろう、という発想は考えものです。宮崎前議員の例を見てもわかるように、言行不一致というのは、通常の短所や落ち度、失敗以上に大きなマイナス要因となります。
 たとえば海外留学経験を熱心にアピールしていた学生が、「じゃ、うちの外国籍社員と○○の問題について英語で話し合ってみて」と言われたとたん、しどろもどろになったとしたら、どうでしょう。イメージ悪いですよね。アピールしていなかったら、たどたどしい英語でも一生懸命取り組むことで好感を持たれていたかもしれません。

 就活は謙虚で得することはないので、自分の長所を1割増しくらいでアピールするのはいいとしても、すぐ化けの皮がはがれるような見えを張るのは百害あって一利なしです。自分の強みのどの部分なら深掘りされても大丈夫なのか、よく見極めてからアピールしましょう。