あきのエンジェルルーム 略歴

2016年02月04日

「出産で6割離職」より衝撃の数字があった!? ♡Vol.63

 いつも心にエンジェルを。

 先日とある女子大で就活生向けのセミナーをしてきました。依頼をくださった大学の職員のかたからは、「うちはほとんど総合職で就職しますので、一般職に関する話は要りません」と説明がありました。最近は、男女不問の職種、職場がどんどん増えてきていますが、いまだにコース別採用をしている企業もあります。転居を伴う異動の有無などの条件をつけて、総合職のなかに複数のコースを設けている企業もあります。
 そもそも一般職と総合職はどう違うのでしょうか? 簡単にいうと、総合職は企画、営業、専門など、定型でないさまざまな業務を担当する社員、一般職は比較的、業務範囲の決まった作業をルーティンに近い形で担当する社員、といわれています。一般職の8割以上が女性で、給与や昇進プロセスで総合職と差をつけられているケースがほとんどです。
 
 私は男女共学の四年制大学を卒業していますが、女子の友人のうち総合職で就職したのは意外と少なくて驚いたのを覚えています。また、新卒時には総合職で就職しても、現在はすでに離職しているという同級生もけっこういます。

 厚生労働省の調査によると、コース別採用をしている企業の、2014年度の総合職採用者に占める女性の割合は22.2%です。ずいぶん増えてはきましたが、応募した女性のうち採用されたのは、まだ2.3%(43倍)です。まさに狭き門ですね。
 男性だって広き門というわけではありませんが、3.3%(30倍)ですから、少しはマシと言えるかもしれません。この結果からわかることは、男性と同条件の総合職で就職できるのは、相変わらず一握りの企業、一握りの女子学生だけ、という現実です。その立場を得られる女性は少数派ということです。
 この連載では何度も紹介していますが、いまだに、仕事をもつ女性の約6割が子育てを理由に退職しています。産休、育休などの制度をフルに使って、なんとか共働きできている家庭でも、1日当たりの炊事、掃除、洗濯などの家事に費やす時間(月曜から日曜までの合計を7で割ったもの)は、男性の場合、子どもの有無にかかわらず十数分。一方、女性は子どもがいない場合で150分、子どもがいる場合は207分。実に20倍近いギャップがあります(出典:総務省統計局「平成23年社会生活基本調査」)。妻が仕事を辞めたくなるのもよくわかりますね。
 我が家の夫も、料理はまったくしませんし、家事と言えば、たまに掃除機をかける程度です。しかも、掃除機をかけるときに、私にわざわざ「ねえ、掃除機かけてもいい?」と聞いてきます。家事は妻である私の仕事で、自分は「縄張りを侵してはいけない」とでも思っているんでしょうか。結婚当初、「夫の仕事」と決めたはずの風呂掃除ですら、やったりやらなかったり……。それでも、時間があるときは学童保育に娘を迎えに行ったり、娘のテニスや縄跳びにつきあったりしているので、自分としては「イクメン」のつもりでいるようです。

 それはともかく、そんな風になんとか辞めなかった残りの4割として「サバイブ」した私にとって、さらに衝撃的な数字がありました。
 
 厚生労働省が2015年10月に、1995(平成7)年4月に総合職として新卒採用された男女の20年後、2014年4月時点の役職等を調べた結果を公表しました。役職に男女差があるのは、予想通りですが、そうやって狭き門をくぐり抜け、さらに「6割」の壁もなんとか乗り越えたはずの女性社員は20年後、どうなっていたのか? 

 ガーン! 実に85.8%が離職していました。女性の同期が20人いたとして、20年後には3人しか残っていないわけです。男性は20年後に離職していたのは36.6%です。もちろん、家庭の事情だけでなく、よりよい環境を求めて転職した人もいるでしょうし、一概に悲観的に考える必要はないかもしれませんが、それは男性だって同じこと。なのにこれだけの差がつくというのはやはりショックです。

 私は1991年入社ですが、同期女性も半数以上は会社に残っていますから、そういう意味では恵まれた環境といえるのかもしれません。
 そんなわけで、みなさんに入社したら(気が早い?)、ぜひ意識的にしてほしいことがあります。それが同期を含めた女性社員同士のネットワーク作りです。女性社員は一部の業界を除けば、おそらく少数派です。会社の規模にもよりますが、同期がいても同じ部署に配置される可能性は低いでしょう。そのときは、先輩の女性社員でもいいので、積極的につながりをもってほしいのです。もちろん気が合わない人は深追いしなくていいですよ。忙しくなっても、異動があっても、細々とでもいいので、連絡を取りあいましょう。

 そして、出産といった自分にとって大きなライフイベントがあったら、福利厚生や支援制度について、女性社員同士のネットワークで、しっかり情報収集しましょう。このエンジェルルームに登場するような企業は、自主的に情報収集しなくても「こういう制度がありますよ」と手厚く案内してくれるかもしれませんが、制度は整っていても、社員が「使いやすく」するところまで至っていない企業もまだまだあります。女性上司がいても、結婚、出産したのがずいぶん前だったりしたら、知識としては役に立ちませんし、ましてや男性上司、男性の同僚などが、そういった制度を十分理解していることはあまりないでしょう(写真は東山動物園のイクメンゴリラ、シャバーニ)。
 でも、年齢の近い女性社員同士でつながりがあれば、こういったときに、最新の情報を共有できます。私自身も、育休の効率のよい取り方、保育園の探し方、オススメのシッター会社、シッター料金の補助制度、地域の社会福祉協議会が運営しているファミリーサポートの依頼方法、そのほとんどが社内ママ友からの情報です。もちろん、情報を「もらう側」ばかりでいてはいけないので、その情報を「還元」することも忘れてはいけません。SNSなどで、働くママたちのネットワークを利用することもできますが、全国的な制度、普遍的なシステムについては共有できても、各社ごとに違う部分については期待できません。
 
 結婚、出産しなかったとしても親の介護などで働き方を見直さなければいけない場合はあります。そういうときにもネットワークが役立ちます。仕事を続けていくと、他にもいろんな壁にぶつかることがあります。そんなときにも、超党派ならぬ、部署の枠組みを離れた仲間の存在はきっと力になりますよ。

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