あきのエンジェルルーム 略歴

2015年08月20日

ブラックな働き方に喝! 勤務間インターバルって何? ♡Vol.48

 いつも心にエンジェルを。

 深夜残業したら、翌日は遅出で――。働く人にとって、うれしい制度が少しずつ広がっています。私自身、記者、編集者職が長かったので、20代、30代は会社で夜明けを迎え、シャワーと着替えのためだけに帰宅し、1、2時間仮眠して再び出社ということも日常茶飯事だったのですが、さすがにそんな働き方はもうできません(体力的にも精神的にも)。
 今回紹介するのは、前の終業から次の始業までの間に一定の休息を取らせる「勤務間インターバル」についてです。今年7月、前回このコラムで紹介した通信大手のKDDIでも「8時間以上の休息確保ルール」がスタートしました。管理職を除く社員約8000人(契約社員含む)が対象です。

 前回もお話ししたように、通信事業は24時間365日、ネットワークを維持することが求められます。部署によって、急な呼び出しや深夜労働も必要になります。同社では設備担当の社員などには2012年から休息ルールを適用していましたが、その対象を今年から広げました。
 午前1時以降の勤務は原則禁止、始業時刻の午前9時までに最低でも8時間以上の休息がとれるようにします。もし1時以降も働いたら、次の出勤をその分ずらします。たとえば2時退社なら翌朝の出社は午前10時以降になります。
 といっても8時間では、通勤や食事の時間を除くと十分な休息時間が取れない可能性もあります。そのため、「健康的に働くための指標」として、管理職も含め、約1万2000人の社員を対象に、「11時間以上のインターバル」を推奨しています。インタ-バルが8時間ギリギリの日が続かないよう、休息が11時間を下回った日が1カ月に11日以上あったら、健康状態の確認のために本人面談をしたうえで指導、上司にも注意を促します。部署単位で残業が目立つ場合は是正勧告をします。
 
 システム開発など、インフラにかかわるIT企業は「キツイ、厳しい、帰れない」の新3K職場と表現されることもままあるだけに、KDDIとしては「長時間労働をなくす」という会社の姿勢を強く打ち出したかったといいます。
 長時間労働により過労死、メンタルヘルスなど、社員の健康を損なうリスクが高いことは企業もよくわかっています。一時的に企業の負担が増えても、社員の健康管理、優秀な人材確保のための最優先課題だと考える企業が増えつつあります。
 そもそも勤務間インターバルについては欧州連合(EU)が「11時間以上の確保」を企業に義務づけています。法律に基づいた規制なので、定時以降に出社した場合、終業時間を延長するのではなく、その遅く出社した分の時間は勤務免除になります。その分の賃金もカットされません。EUではこの「勤務間インターバル規制」に加え、1週間の総労働時間は原則として時間外労働も含めて「48時間」とする量的上限規制もあります。イギリスでは労働者が了承すればその上限を超過できる「オプトアウト」という制度を設けていますが、それでも11時間以上のインターバル確保は必須です。
 残念ながら日本ではまだそこまでは進んでいませんし、今回のKDDIの「勤務間インターバル」にも罰則規定はありませんが、極端な働きすぎを防止するには一定の効果がありそうです。労働政策に関する重要事項について、有識者、使用者代表、労働者代表の各10人で審議する厚生労働省の労働政策審議会でも、この「勤務間インターバル」制度はたびたび議題になっています。成り行きにぜひ注目してください。

 そんなわけで、KDDI以外にも「休息確保」「勤務間インターバル」制度を導入している企業がないか、さがしてみました。こういった制度を導入するということは、放っておくと長時間労働になりやすい業界である、という負の側面もありますが、問題意識は解決の早道。ぜひ参考にしてください。

◆ファミリーレストランジョイフル:店長を含む従業員に「11時間以上の休息」制度を導入

◆三菱重工業:「最低7時間以上の休息」を労使の努力義務に

◆シャープ:「最低10時間以上の休息」を確保

◆安川電機:午後9時以降の勤務を原則禁止

◆西日本鉄道:バス運転手に「9時間以上の休息」を確保

◆NEC:午後11時以降まで働いたら次の出勤を遅らせる

◆サントリー:午後10時以降の勤務を原則禁止

◆立山科学グループ:「最低8時間以上の休息」で労使妥結

◆サガミチェーン:「最低9時間以上の休息」で労使妥結
 ちなみに厚生労働省の通達による「過労死ライン」は時間外労働時間数が1カ月あたり80時間以上です。定時退社時間が18時で、もし22時までの残業(4時間)を20日間以上(平日ほぼ毎日)したら、たとえ週休2日が確保できていても、その働き方は過労死ラインを超えてしまいます(あくまでも目安です)。
 社会に出るみなさんにとっても、自分の心身の健康を守るための大事なものさしです。頭の片隅に入れておきましょう。